下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

エビス堂大交響楽団「戦国スティング」

 エビス堂大交響楽団「戦国スティング」HEP HALL)を観劇。
 泉鏡花の「天守物語」*1を下敷きにして歴史冒険活劇に仕立てあげた作品。最初から「天守物語」自体をやる気はないのだろうから、こういうことを言っても詮無いことは分かってはいるのだけれど、「天守物語」はク・ナウカの上演*2をはじめとして何度も見ていて結構思い入れのある作品ということもあって、こういう風に使うのはちょっと安易じゃないかと思ってしまった。
 最初に気になったのは登場人物のうち原作の鷹匠・姫川図書之助<ずしょのすけ>にあたる人物が図書ノ介<としょのすけ>と呼ばれていたこと。最初は読み違えたのかなと思っていたのだが、いくらなんでもと思い、キャスト表を確認してみると綴りも微妙に違うし、泉鏡花の原作では富姫である天守の姫もここでは豊姫とされているので、これは意図的なものなんだろうなと一応は納得したのだけれど、朱の盤坊、亀姫は原作通りの名前だし、どうしてこんな中途半端に変更する必要があるのだろうかと<としょのすけ>が連発されるたびに気になって仕方がなかったのである。
 話自体は「天守物語」の枠組みを借りたといってもむしろ高橋留美子の「犬夜叉」とか夢枕獏の「陰陽師」、京極夏彦の時代ものの作品などのテイストのミクスチャーという雰囲気だろうか。この表題からすると最初は京極夏彦の「巷説百物語」のようなコンゲーム的な物語として構想していたのが、結果としてはそうはならなかったようなのだが、それもあってか主人公が詐欺師であるという設定がいまひとつうまく作品に生かされていないのでどうも物語の焦点がぼけてしまっている印象なのである。
 過去のいくつかの作品を見る限りはオカモト國ヒコはSF作品に代表される趣向としてのアイデアストーリーテリングの才能はある人だと思うのだが、この舞台ではそれが十分に煮詰められないままに作品になってしまったという感じが否めないのが残念であった。

*1:天守物語」のあらすじは次のサイト参照http://datapot.com/free/kabukidb/syousai.php?tourokuNo=4

*2:小倉公演のレポートhttp://member.nifty.ne.jp/simokitazawa/report1-1.html