島田荘司「奇想、天を動かす」(光文社文庫)ISBN:4334716628。
島田荘司は「占星術殺人事件」を読んでその文章の下手さに閉口させられて以降ちょっと苦手な作家の部類に入るので読み残しているものが多いのだが、突然これを読み出したのは光文社文庫の装丁に黒田武志*1のオブジェが使われているということが分かって、本を買いたくなったからである。
それで作品についてどう思ったかというと確かに表題通りに「奇想」といえば確かに「奇想」で面白いところがないではないのだけれど、失礼かもしれないがあまりの大風呂敷ぶりに思わず笑ってしまう。このトリックを使って馬鹿ミスをかけば大傑作になったかもしれないのに。それにしても初期の作品しか読んでなかったので、島田荘司が本格ミステリーと社会派ミステリーの融合なんてことを本気で考えていたなんてことを今はじめて知って仰天させられた。それが不幸にもこんなものになってるということが笑えるといえば笑えるのだけれど、うーん、真面目すぎるんだろうなこの人は‥‥‥。
逆にほかの作品も読んでどんな悲惨なことになってるのか知りたくなってきたけれど。しかし、ネットで調べてみて、この作品を「本格推理と社会派推理とを見事に融合させた傑作」などとマジに評価してる人がいると知って首をかしげざるをえなかった。できれば方便であってほしいのだけれど実際の冤罪事件を取り上げたノンフィクション作品まで書いているからたぶん本気なんだろうなあ、この人は。