下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「約三十の嘘」

 映画約三十の嘘大谷健太郎監督)を見る。
 土田英生の舞台作品を「アベック モン マリ」の大谷健太郎監督が映画化。舞台初演時にその年のベストアクトに挙げたようにもともと好きな芝居の映画化でもあり、それに加えて今回のキャスト(椎名桔平 中谷美紀 妻夫木聡 田辺誠一 八嶋智人 伴杏里)もよかったため、見る前の期待が大きく、それだけに見ての感想はかなりがっかり。土田英生が全面的に脚本づくりに参加できなかったせいか、面白かった舞台版の「約三十の嘘」とは物語の筋立てだけは一応踏襲しているものの、似ても似つかぬものになってしまっていた。この原作に恋愛沙汰を持ち込むのはやはりミスマッチ感がありありで失敗だったのではないかと思う。これだけのキャストを集めながらも皆あまりパッとせずキャラ立ちがしてないのはなぜなんだろうと考え込んでしまった。
 もう少しそれぞれの微妙な関係性を暗示する前半部分を退屈に思われるかもしれないが、丁寧に見せていくべきだったのではないだろうか。この部分があっけなく終わり、すぐに後半になってしまうために原作の持つ行き帰りでそれぞれの関係性が変化しているという微妙な面白さが失われてしまっているし、事件が起こってからもすぐに犯人が分かってしまい、腹の探り合いの面白さがないのももの足りない。