下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ダンスについて考えてみる(構成・振付・演出とは2)

 「構成・振付・演出とは」*1という表題で文章を書いて半月ぐらい経過したが、前回は主題が興味をひかなかったせいだろうか。コメントひとつつかなくて残念。ついたらそこから再び議論を展開してみたかったのに。あれから、少し実際にダンスの振付家の何人かに聞いてみた。その結果分かったことと再び疑問に思ったことがある。興味深かったのはある振付家から指摘されたのだが、「構成・振付・演出」という言い方は海外ではあまりしないということだった。これまであまり真剣にそのことについて考えてみたことがなかったんだが、そういう風に言われるとそうかもしれない。
 ちなみにと思ってエジンバラ演劇祭で見たAURORA NOVA FESTIVALのサイト*2で確認してみると多くはDirection & ChoreographyとかChoreography & Artistic DirectionとかCreated & performed by××とかそういう言い方になっている。さらにいえばダンスの場合は振付家がひとりで振付・演出を兼ねる場合はChoreographyとだけクレジットされている場合も多く、ということは暗黙の前提としてChoreographyという言葉が演出的なことも含むというニュアンスがそこにはあるように思われた。
 今回この問題についてヒアリングをしてみたなかでMonochrome Circusの坂本公成はこれはあくまでも一般的にそうだというよりも個人的な意見との前置き付きではあるが「僕にとってはこれからある作品について考えていこうとする場合、ダンサーとしてだれを、すなわちどんなダンサーを選択するかということまでがすでにChoreographyに含まれている」という考え方さえあった。これはさすがに極端な考え方とは思ったが、こういう考えもなくはないようで
坂本によればバニョレ振付賞などは当初から「Creationに伴うすべての要素がChoreographyである」という立場を打ち出していたらしく*3、それを考えるとあれが振付賞といいながら、発条トの映像中心の作品が選ばれたりと選択の基準は作品賞に見えたということの理由に納得がいく。
 しかし、もしそうだとするとここで大きな疑問が出てくるわけだが、日本で一般になっている表記の「構成・振付・演出」の「構成」というのは一体全体どこから出てきたのであろう。自信はないけれどなんとなく、ショービジネス系の舞台で使いはじめたのが最初かなと思うのだけれど……。
 辞書的な意味だと次のようになるのだけれど

こうせい 構成
composition; construction; organization.
・〜する compose; construct (a theory); organize.
・…で〜されている consist [be composed] of (six people).
構成員 a member.
構成要素 a component; a constituent; an element.

こと舞台に関していえばcompositionというのはちょっと意味が違うような気がするがどうなのか*4

*1:http://d.hatena.ne.jp/simokitazawa/20060831

*2:http://www.auroranova.org/phloxAntigram/programm.php?picChg=1&Kategorie=2006

*3:確認して確かめたわけではないのでそこのところは考慮してほしい

*4:ひょっとしたら言葉を弄んでいるだけのように見えるかもしれないが、この文章は「振付」とはなにかを考えていくうえでの助走にならならないかと考えて書いている。それは一見自明のこととして皆が使っている「振付」という概念が実はそれほど自明なものというわけではなく、それを問い直すことが、すなわちダンスとは何かを問い直すことにつながると考えるからである