下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アイホール+小原延之「hunter」@アイホール

アイホール+小原延之「hunter」アイホール)を観劇。

作・演出 小原延之
出演 平林之英(sunday)、後藤七重、藤島淳一(劇団アルファー)、長沼久美子、小笠原聡、橋本達也、樋上真郁(桃園会)、村井千恵、韓寿恵(劇団●太陽族)、山口晶子、国木田かっぱ

 アイホールのプロデュースによる小原延之作品。この週末はいろいろ公演が重なり苦しかったのだが、前回作品の「NINE」を見逃してしまっただけにこの作品がぜひ見ておきたかった。見終わった後、咀嚼するのにやや時間がかかった。刺激的で舞台の強い力を感じさせる舞台ではあったけれども、その一方、この芝居にはいくつか大きな欠点があってそれが気になってしまったからだ。
 小原延之は出世作となった「丈夫な教室―彼女はいかにしてハサミ男からランドセルを奪い返すことができるか―」が附属池田小事件、AI・HALLハイスクールプロデュース「鉄橋の上のエチュード」が尼崎JR脱線事故を主題としていたように実際に起こった事故・事件を基にして作品を創作することが多い。そういう意味では東京では山崎哲坂手洋二、鐘下辰夫、関西では岩崎正裕、大竹野正典といった先人たちと同様に社会派の作家と位置づけられるかもしれない。
 ただ、「丈夫な教室」が幼少のころ池田小事件(を思わせる事件)に遭遇した小学生が大人になってからの物語であったように坂手などと比べると実際に起こった事件をそのまま舞台に載せるというよりは周辺の出来事を拾い上げることで、事件の本質に迫ろうとするというようなところがある。
 実は小原本人からだいぶ以前に「津山事件を芝居にできないか考えている」というのを聞いていたのだけれど、この芝居を実際に見ていても最後の最後にそうかと思った程度ではっきりそうと分かるようなものではなかった。