下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「風刺花伝 山本太郎展」@高島屋京都店6階美術画廊

「風刺花伝 山本太郎*1展」高島屋京都店6階美術画廊)を見る。

山本太郎の百貨店での初めての個展である。この日は京都展の最終日。 山本太郎日本画ならぬ「ニッポン画*2」を提唱するアーティスト。

「ニッポン画」とは
一、今現在の日本の状況を端的に表現する絵画ナリ
一、ニッポン独自の「笑い」である諧謔を持った絵画ナリ
一、ニッポンに昔から伝わる絵画技法によって描く絵画ナリ

 簡単に言えば日本画の伝統的な技法によって描かれた画面の中に現代を象徴するような意匠、モチーフが時にそれとなく、時に大胆に描きこまれたもので、必ずしも「笑い」だけを狙いとしているパロディではないのだが、その組み合わせのおかしさに思わずくすりと笑ってしまうことが多いというのが特徴だ。例えば紅白の幕のこちら側に松があしらってある上のフライヤーの絵はおそらく、もう少し大きな絵の一部だが、全体を見ると実はこちらの屏風絵*3のようになっていて、紅白の幕に見えていたのが実はアメリカ国旗の一部だということが分かる仕掛け。今回の個展は高島屋美術画廊での開催とあって、すべて新作とはいうものの、ある意味これまでの山本作品の総集編のような要素も強い。モチーフとしては過去にどこかですでに見たことがある作品のリミックスというか、別エディションのような作品が多く、また過去の作品の中ではややおとなしいめの作品が多いため、これまでずっと彼の作品の追っかけのようなことをして注目してきた身にとってはやや物足りない面もなくはなかった。
 ただ、これまでは大きな展覧会に数点を出したとか、小さなギャラリーなどでの展示も多かったので、こういうけっこう広い空間で、大作の屏風絵数点を含め、部屋いっぱいに展示された数十点の作品を一度に目のあたりにできた機会ははじめてでもあり、そういう意味では壮観。日本画の技法を応用した現代美術といえばすぐに思いつくのは村上隆。ほかには会田誠山口晃も思い浮かぶが、山本のニッポン画はそれともまた違う個性を持っている。
この後、新宿高島屋で東京展が予定されている。まだ、この作家を見たことのない東京の美術ファンは必見である。

新宿高島屋10階美術画廊
6月18日(水)〜7月1日(火)
6月22日(日)14時よりトークショー