下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団「北限の猿」@アイホール

青年団「北限の猿」@アイホール

『北限の猿』
島田曜蔵 工藤倫子 田原礼子 村井まどか 山本雅幸 河村竜也 後藤麻美 小林亮子 長野 海 二反田幸平 堀 夏子 山本裕子 海津 忠 佐山和泉 中村真生

スタッフ 舞台美術:濱崎賢二
舞台美術監修:杉山 至
照明:岩城 保
演出助手:相馬加奈子
宣伝美術:工藤規雄+村上和子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:木元太郎

 平田オリザのサル学3部作の第2作目。今回は第1作の「カガクするココロ」とこの「北限の猿」を2本立てで連続上演した。この後に登場する第三部がセミネールでも取り上げた「バルカン動物園」*1である。この3部作が面白いのは作中で進められている「ネアンデルタール作戦」(サルを人為的に進化させてしまおうという研究)さながらにこの3作品の間に平田の「関係性の演劇」がより複雑でシリアスな関係性をとらえられるツールへと進化していくさまが手をとるように見てとれることである。
 今回の2作品を比較してみてもそこで描かれていく「関係」の様相はかなり異なることがうかがえて興味深い。サル学三部作においてはさまざまな研究分野の研究者が集まり、学際的に共同でサル学を研究している研究室という舞台設定がまず巧みだ。当然、登場人物らがかわす会話の内容はサルに関するさまざまな最新の知見なのだが、これには当時、立花隆の「サル学の現在」が話題になって、この「北限のサル」という芝居も当時の最新の研究成果を分かりやすく紹介するという理科系演劇の要素がある。
 もちろんそれだけにはとどまらない。ここでなによりサル学の研究室が選ばれたのはサルを研究するというのは人間に一番近い動物であるサルの生態を研究することで「人間についてのより深い知見を得たい」との目的があってやられている側面もある。「サル学」は実は「人間学」でもあるからだ。