実は単行本で一度読んでいて今回は再読のはずなのだが、すっかり内容を失念していた。劇作家・演出家、
宮沢章夫による
チェーホフの四大戯曲の読解だが実に面白い。特に面白かったのは表題である「
チェーホフの戦争」という「三人姉妹」を戦争を糸口にして読解していく部分だが、第三幕の火事の場面から第四幕のトューゼンバフの決闘を戦争のメタファーとして読み取る解釈の巧みさである。実は一見はそういう風に見えない戦争劇として
チェーホフの例から思い出したのは
チェルフィッチュの「三月の5日間」だったのだが、遠景としての現実の戦争を描くために近景を戦争のメタファーとして描き出すという手法に相似形を感じた。以前書いた
チェルフィッチュ「三月の5日間」論ではこの場合、戦争=セックスだった
*1のだけれど。それにしても戦争=ナターシャというのは慧眼といえる。