下北沢通信

木ノ下歌舞伎「勧進帳」@アトリエ劇研

監修・補綴|木ノ下裕一
演出・美術|杉原邦生

出演|亀島一徳[ロロ]
   重岡漠[青年団
   清水久美子
   福原冠[国道五十八号戦線]
   John de Perczel[空(UTSUBO)]


 木ノ下歌舞伎「勧進帳」観劇。面白かった。歌舞伎ファンもそうでない人も楽しめる公演。弁慶、義経のキャスティングに妙。今までのなかではベストかも。

 まずはこの映像を見てほしい。今回のキャストが歌舞伎の「勧進帳」をコピーしたバージョンなのだが、本番の木ノ下歌舞伎はこれをそのままやったわけではなくて、それぞれの場面についていろんなアイデアを盛り込み、杉原邦生の演出でそれを現代演劇に移し替えたものを上演した。ただ、まずこの歌舞伎版のコピーをやったということは興味深かった。というのは、木ノ下歌舞伎は旗揚げ以来首尾一貫して歌舞伎の「現代化」を手掛けてきた。これまではどちらかというと歌舞伎特有のテキストを重視して、どのようにそれを演じるのかというところの部分はアイデア次第の部分があり、そこに不満がなくもなかった。
 これまでの演目(「四谷怪談」「寺子屋」「摂州合邦辻」「三番叟・娘道成寺」)も簡単なことはないが、まだ「四谷怪談」「寺子屋」ような世話物なら現代化というのができなくもないけれど、「勧進帳」というのはどう考えても難物である。しかも、上演するのがク・ナウカ山の手事情社のような「語りの演劇」についての独自のスキルを持った劇団であればなんとか「歌舞伎ではないなんらかの様式」をでっちあげることができそうだが、今回は京都×横浜プロジェクト2010*1ということで首都圏在住の俳優たちをオーディションで選び、横浜で現地制作するという形で製作している。そういうなかでまず歌舞伎上演のコピーから立ち上げて、そこから独自のものへ作り変えていくという今回の作業手順は方法論として興味深かった。今後もその手が使えるかどうかというのは分らないけれど、登場人物が弁慶以外は現代の若者の格好で登場して、しかも下座音楽の代わりにヒップホップ系の音楽を多用した今回の杉原演出が軽薄なものとならなかったのはやはり本番ではそのまま上演されたわけではないにしても、歌舞伎の上演をすっかり真似た稽古を準備段階で繰り返したことで習うより慣れろではないけれども出演者全員が「勧進帳」という舞台の勘所のようなものを共有していたからではないかと思った。