下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

トイガーデン「ユビュ王」*2@ウイングフィールド


ウイングフィールドのりうち企画その60
ウイングフィールド若手劇団応援シリーズ特別編「ウイングカップ2010」
第2回むりやり堺筋線演劇祭参加
作品名 「ユビュ王」*「ユビュ王」にちょっと詳しくなれる説明つき
作 アルフレッド・ジャリ
構成・演出 安武剛
日時 4(月)7:30
5(火)7:30
6(水)7:00
団体名 トイガーデン
料金 1,500 円(前売・当日共)
学生1,200円(前売・当日共)

 トイガーデンを見るのはFRANCE PANとの合同公演による安部公房「奴隷狩り」に次いで2度目なのだが、この時はToy_panというユニット名での舞台だったから、実際にはこれが初めてだった。ただトイガーデン自体は寡作な集団であり、今回の「『ユビュ王』*『ユビュ王』にちょっと詳しくなれる説明つき」はトイガーデン#4というから劇団としてはまだ4回目の公演である。
 旗揚げがやはり「ユビュ王」で次がダダイストトリスタン・ツァラ「ハンカチ、雲の」(日本初演)、3回目がルイジ・ピランデルロ「作者を探す六人の登場人物」をもとにした「作者を探す66億人の登場人物」。いずれも前衛的な作風と発表当時された古典作品に取り組んできた。
 特に「ユビュ王」に関してはこのほかにも学生演劇のコンペティションである学劇王に参加して*1上演しているからよほどこだわりがあるのだろうと思う。
トイガーデン「ユビュ王」について観劇した次の日にツイッターにツイートしたことを下に転載しておいたのだが、この時書いたことで後から構成・演出 安武剛とトイガーデンについて調べたことと呼応してきたことがあって興味深い。それはその日書いた最後のつぶやきに「例えばユビュ王が国民に高い税金をかける場面では「税制改革」のプラカードが出てくるなど現代社会に対する揶揄がなされたりするが、もちろん政治風刺が目的というわけではなくてそれはニコニコ動画の書き込みのようなものなのだ」と書いたのだけれど、その時点では知らないで書いていたのだが、その後分かったのはトイガーデンの安武剛という人は演劇活動のかたわら、ニコニコ動画の熱心な投稿者でもあるらしくて、先に書いたツイートはどちらかというと比喩的な意味合いで「ニコニコ動画」を出したのだけれど、今回の「ユビュ王」をニコニコ動画になぞらえたくなったことはどうも実際にも的を得ているようにその後で思われてきたのだ。
1分42秒で分かる「ゴドーを待ちながら」 
 
 これが安武剛がニコニコ動画に投稿した(と思われる)「ゴドーを待ちながら」の短縮版なのだが、なかなかよくできていてセンスを感じさせるものとなっている。これは編集した動画だからそれほど「だめ度」というのは全面に出ていないし、むしろそれなりの編集技術を感じさせたりするのだけれど、これがトイガーデンの演劇となるとこの動画で見せたような批評的なくすぐりを維持しながらも、ものすごくへたれに見えるようなテイストを強めていくのはどうしてなのだろう。
 そのひとつの回答としてはやはりツイッターに書いたのだけれど「トイガーデンの演劇はその『へたれであること』や『だめさ加減』がいまのおたくな若者やだめな若者のありようを絶妙にリアルに写しているというところがきわめて「今そのもの」と思わせる面白さがある」と書いたのだが、今回の舞台を見て最初になにか感じが似ていると感じたのが最近現代美術系の文脈で注目されている「カオス*ラウンジ」(特に「破滅ラウンジ」)との類縁性である。
 こう書いてもこのサイトを見に来ると思われるほとんどの読者は現代美術のコンテクストにあまりなじみがないと思われるが「カオス*ラウンジ」は昨年ぐらいから村上隆東浩紀らが好意的な紹介をしたことで話題になった一連のアートイベント・企画展示。詳しいことはこちらのサイト*2に詳しいので興味のある人はそれを参照してほしいのだが、あくまでこれは「カオス*ラウンジが大阪で企画した「はめつら」*3と今回のトイガーデン「ユビュ王」の印象の比較でしかないけれど、そのかもしだす雰囲気にどことなく強い共通点を感じたのである。

 もっとも誤解をされないようにあらかじめ言っておくと、私はトイガーデンが美術界でのカオス*ラウンジがそうであるように革新的で素晴らしいなどと謂う気はさらさらない。むしろカオス*ラウンジの「はめつら」を大阪で見た印象ではこれはひどい、ごみ溜めみたいだし、きたない(動画の最後に東京での「破滅ラウンジ」の様子あり)。確かに現代美術のなかには一般人の目にごみのように映るものもある(例えば淀川テクニックとか、具体美術協会の作品)のだけれど、それと比べても明らかにこれはアートの文脈で評価すべきものなのかについては大きな疑問符がついて、そのことについて村上、東の両氏に問いただしたい気分でいっぱいなのだ。
 

例えばユビュ王が国民に高い税金をかける場面では「税制改革」のプラカードが出てくるなど現代社会に対する揶揄がなされたりするが、もちろん政治風刺が目的というわけではなくてそれはニコニコ動画の書き込みのようなものなのだ。
約9時間前 webから
削除 本編はあらすじで説明されたストーリーに沿って展開されていく。ユビュによるポーランドの王位簒奪とそれに続く出鱈目な悪政、国民の反抗、殺された王の遺児の帰還などをいささかナンセンスな筆致も加えて描いた原作はそれぞれの場面が日本の現代を象徴FRANCE約9時間前 webから
削除 . そのあらすじからしてアンパンマンのお面をかぶった役者が棒読みのようなセリフでストーリーを演じていくという翻訳劇の上演とは思えない意図的に安手のペラペラの四コマ漫画のようなものとなっている。
約10時間前 webから
削除 . そのそも「ユビュ王」一応そのままやってみせはするのだが、本編はセリフも聞こえなかったりしてだらしなさすぎてそれだけだとストーリーも分からないために本編の前に「えんしゅつあいさつ」「げんさくしょうかい」と称して作者とあらすじの紹介をまずしてしまう。
約10時間前 webから
削除 . それと比べるとトイガーデンは技術的な裏付けというのはほとんどなくて、本当にだらしない、下手、杜撰な状なのだが、それをリアルに舞台にそのままあげてしまいサンプリング、リミックス、コラージュしてみせるところには作者の意図が明確に感じられる。
約10時間前 webから
削除 . チェルフィッチュが登場した時にも同じようなことが言われた(そういえば見てないけど彼らも「ユビュ王」をやったんじゃなかったか?)のだけれど、よくも悪くもトイガーデンと比べるとチェルフィッチュの場合はだらしなさや若者のだめさ加減を精緻に構築して見せていた。
約10時間前 webから
削除 . つまり、トイガーデンの演劇はその「へたれであること」や「だめさ加減」が「いまのおたくな若者やだめな若者のありようを絶妙にリアルに写している」というところがきわめて「今そのもの」と思わせる面白さがあるわけです。
約10時間前 webから
削除 . だめ=否定ではないのは分かってほしいが、だからといってだれにでもお薦めしたいというものではないのも確かだ。特に普通の演劇ファンにはあまりお薦めできない。だらしないし、せりふ聞こえないし、汚いしな。
約10時間前 webから
削除 . トイガーデン「ユビュ王」面白かったが、私が見た演劇のなかでも超ド級のだらしなさ。だめだめ演劇だった。どのぐらいだめだめかというとこれまで見た演劇のなかで「だめ度」が高いのがオハヨウのムスメや野鳩としてそれがウェルメードに見えてしまう程度といってもほとんどの人が分からないか。
約10時間前 webから

*1:これでグランプリを受賞している

*2:http://hidari-zingaro.jp/2010/05/chaoslounge/

*3:http://us-it.org/?p=121