下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

音楽座ミュージカル「ラブ・レター」@新宿文化センター

美羽あさひ(客演)、広田勇二、宮崎祥子、高野菜々、益山武明(賢プロダクション所属)、新木啓介、新木りえ、安中淳也、井田安寿、五十嵐進、清田和美、藤田将範、浜崎真美、佐藤伸行、富永友紀、上田亮、堀川亜矢、小林啓也、安島萌、渡辺修也、齋藤睦、中村詞文、ほか
作曲
脚本
演出
料金


サイト http://www.ongakuza-musical.com/ ※正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。


説明 本作品は、直木賞作家・浅田次郎氏の短編小説『ラブ・レター』を原作に、日本はもちろん、今や世界中から様々な事情を抱えた人たちが集まる街となった東京の新都心・新宿と、主人公の故郷である東北地方の海辺の街を舞台にした、「死者が生者を励ます物語」です。

普段私たちは、多くの死者たちによって生かされていることになかなか気づかないまま生きています。何も見えない空間に、実はたくさんの亡くなった人たちの思いが濃密に存在していることを知らずに、日常を過ごしています。 しかし、時に思いもしなかった状況でそのことを教えてくれる出来事と出会い、その事実に直面したとき、生きているこの日々の大切さに改めて気づかされる…2011年の東日本大震災は、まさにその最たるものではなかったでしょうか。

一瞬にして2万人以上の同胞を飲み込んだ津波は、被災地にいなかった私たちの心にも大きな空洞を穿っていきました。そして、今その空洞を埋めないまま、あの未曾有の天災が日常の中に埋没されていっているのも現実です。

大震災から二年を経た今、この世界で私たち音楽座ミュージカルはいったい何が出来るのか。 それが、この「死者が生者を励ます物語」を、「どんな人の心にもある小さな善意を呼び覚ます物語」を創作する意図となりました。私たち音楽座ミュージカルは、今、本作品をお届けすることこそ、自分たちの使命であると考えております。


トーリー

ある年の夏、東日本大震災津波によって流された墓所を訪れたサトシは、かつて新宿歌舞伎町の食堂で働いていた女性・ナオミと再会する。長い歳月を経た偶然の再会を喜ぶサトシ。やがて二人の会話は、サトシが大事に所持していた古びた一通の手紙のことから過去の出来事へと遡っていく。

新宿歌舞伎町で汚れた仕事を請け負いながら暮らしている男・高野吾郎は、知り合いのヤクザ・佐竹に偽装結婚の話を持ちかけられた。さして断る理由もなかった吾郎は、小金欲しさに戸籍を売ることにする。偽装結婚の相手は、中国人女性の白蘭(パイラン)。彼女は日本の国籍を得て働いた金で、中国に暮らす家族を養おうとしていたのだ。

白蘭に会うこともなく、報酬としてもらった金もあっという間に使い切り、一年ほど経ったある日、吾郎のもとへ一通の「死亡通知書」が届く。死んだのは、妻・高野白蘭。偽装結婚したことさえ忘れかけていた吾郎は、戸籍を売った佐竹の事務所に相談に駆け込むが、逆に遺体を引き取りに行くよう命じられ、白蘭の残した手紙を差し出される。

会ったこともない、顔も知らない女の遺体を、どうして自分が引き取りに行かなければならないのか。腹をたてながらも、吾郎は佐竹の事務所にいたチンピラのサトシと一緒に、白蘭の遺体が収容されている千葉の千倉へと赴くことになった。しかし、白蘭の手紙を読み、日本での彼女の軌跡をたどる中で、吾郎はこの見知らぬ妻と、あらためて出会っていくことになる。そしてそんな吾郎の心の変化は、ともに行動していたサトシをも変えていくのだった。

 音楽座「ラブ・レター」@新宿文化センターを観劇。浅田次郎の原作のこの舞台は震災劇ではない。人間の死と生にかかわるもっと普遍的な物語だ。ただ、舞台、レ・ミゼラブルの誕生が旧ソ連崩壊に始まる当時の政治的な状況と無関係ではないようにポスト3・11の空気を反映しているのは確かだ。