下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

青年団若手公演+こまばアゴラ演劇学校「無隣館」「S高原から」(Bチーム)@こまばアゴラ劇場

出演
Aチーム
渡辺香奈 齋藤晴香 中村真生 伊藤 毅 星野拓也 (以上 青年団) 朝比奈竜生 石川彰子 植浦菜保子 川面千晶 坂倉夏奈 佐藤 滋 多賀麻美 田山幹雄 前原瑞樹 横地 梢 李そじん (以上 無隣館)

Bチーム
富田真喜 星野拓也 本田けい 由かほる(以上 青年団) 朝比奈竜生 石川彰子 植浦菜保子 川面千晶 串尾一輝 坂倉夏奈 坂倉奈津子 佐藤 滋 田山幹雄 藤松祥子 前原瑞樹 李そじん (以上 無隣館)

Cチーム
小林亮子 立蔵葉子 長野 海 村田牧子 石松太一 伊藤 毅 折原アキラ 富田真喜 水野 拓 緑川史絵 由かほる (以上 青年団) 串尾一輝 黒木絵美花 坂倉奈津子 田中孝史 藤松祥子 (以上 無隣館)
スタッフ
舞台美術:青年団美術部
照明:西本 彩
衣装監修:正金 彩
舞台監督:清野草太
演出助手:無隣館演出部
フライヤーデザイン:京(kyo.designworks)
制作:金澤 昭 赤刎千久子 有上麻衣 垣谷文夫 舩田紀子 水谷円香

 青年団「S高原から」(こまばアゴラ劇場)を観劇。改めて調べてみると2005年に上演されて以来の再演であるようだ。もう少し最近に感じるのは南河内万歳一座のよる上演を観劇したのとセミネールのレクチャーの準備段階で何度も映像収録された「S高原から」を見直したからかもしれない。それにしても驚くべきことはこの舞台はABC3つのチームによって上演されるのだけれど、まだ未見であるCチームも含めてキャスト表を眺めても名前を知っている俳優が渡辺香奈、中村真生、立蔵葉子の3人しかいないということだ。
 もちろん、「無隣館」の俳優は分からないのが当たり前だし、この枠組みは若手公演だから以前からそれは変わらないといえなくもないのだが、A・B両チームだけでも8人出ているわけだからそのうち2人しか分からないというのはショックである。
 しかも入団前の「転校生」出演時から知っている渡辺香奈を別にすれば立蔵葉子は青年団だから知っているというよりは五反田団などに出演しているから知っているのであり、例えば2005年の前回上演時もそれ以前の1994年の上演と比較すれば志賀廣太郎を除くすべてのキャストが入れ替わっていたのだが、そういう印象はあまりないので、今回のことには新しい役者の顔を覚える能力の衰えかと感じたこともショックの一因かもしれない。

                    再演    再々演
                    1994本公演 2005本公演

 西岡 隆・・・・入院患者・絵描き   足立誠   奥田洋平
 上野 雅美・・・面会人        山村崇子  辻美奈子

 前島 明子・・・入院患者・絵のモデル 和田江理子 能島瑞穂

 村井 康則・・・半年の入院患者    山内健司  古屋隆太
 大竹 良子・・・面会人        志摩真実  井上三奈子
 佐々木 久恵・・大竹良子の友達    安部聡子  田原礼子

 福島 和夫・・・4年目の入院患者   増井太郎  大竹直

 鈴木 春男・・・面会人        田中ひろし 古館寛治
 藤原 友子・・・面会人        原田雅代  月村丹生
 坂口 徹子・・・面会人        山田秀香  たむらみずほ

 吉沢 貴美子・・入院患者・妹     広瀬由美子 端田新菜
 吉沢 茂樹・・・貴美子の兄      大塚秀記  山本雅幸

 本間 一郎・・・新しい入院患者    永井秀樹  秋山建一

 松本 義男・・・医師         志賀廣太郎 ←
 藤沢 知美・・・看護人        松田弘子  (看護師)村井まどか
 川上 俊二・・・看護人        大木透   (看護師)岩崎裕司

 「S高原から」のこれまでの上演の記憶をたぐってみた時、2005年の上演はもちろん記憶の片隅にありはするけれど、絵描きに足立誠が扮し、その面会人が山村崇子、半年の入院患者を山内健司が演じた1994年バージョンの印象が強い。青年団などキャストを替えながら同じ演目の再演を何度も繰り返す劇団の舞台では往々にして、その時上演された実際の舞台の背後から過去に上演を見た舞台でそれを演じていた俳優の演技の記憶が蘇り二重写しになってしまうことがあるのだが、「S高原から」については患者側で主要キャストとなる3人のうち、画家については足立。かつての婚約者が結婚することをその友人から聞かされるはめになる男(村井康則)は古谷隆太の演技も覚えてはいるけれど、やはり山内健司の演技の記憶が強く残っている。ところが高原のピンクドラゴンについては逆に大竹直の印象が強くて今回の舞台を見ている最中もその記憶が絶えず呼びさまされた。
 ところが平田オリザの作品のひとつの特徴は過去の演技の記憶がたとえ呼びさまされたとしても作品の印象そのものはそれほど変わりがないことだ。もちろん、実際には今回の公演などは特に新人公演の色合いが強く、初めて見る俳優も多いことから、俳優としての値踏みをしてしまうようなところがどうしてもあって、これまで見たことがない俳優のなかに「この人はいい」と思わせる演技を見せる人を見つける*1楽しみはあった。

*1:今回の場合で言えばBチームで特によかったと思われ、今後が楽しみと気になったのは佐々木久恵役と吉沢貴美子役の女優だった。