下北沢通信

さやわか式☆現代文化論 第5回「アイドル/運営の現在」さやわか×もふくちゃん@ゲンロンカフェ

 ゲーム、アイドル、サブカルなどのライター・批評活動をしているさやわか氏とアイドル「でんぱ組.inc」の運営担当であるもふくちゃん(福嶋麻衣子)によるアイドルを主題にした対談イベント。このサイトを見ていただければ最近私が個人的にももいろクローバーZももクロ)というアイドルグループに関心を持っていることはすでにばれているとは思うが、ももクロとの関係でチームしゃちほこなどのライブに数度足を運んでみたことはあっても、「でんぱ組.inc」についてはももクロに楽曲を提供していた前山田健一氏がいくつかの楽曲を提供していることや、最近人気が高まっていて5月に武道館でライブをするらしいという程度の知識しかない。そもそもAKBほか、ももクロ以外の最近のアイドル事情にそれほど詳しいというわけでもないため、実際に運営する側の話も聞け、その一端を垣間見られたという意味では貴重な経験であった。
 もっとも演劇、ダンスの公演とももクロのライブ*1でスケジュールに入れていればそれだけで手いっぱいで、少しは興味があってもそのぐらいでは現場に出かけてまでして見てみるということにもなりにくい*2ので、例えば「でんぱ組.inc」のライブに行くことはおそらくないとは思うが、いろいろ話を聞いてみて、今後はもう少しだけ興味を持って見てみたいという気にさせられたのは確かだ。ただ、今回感じたのは近接領域としてこのアイドルという領域で何が行われているのかを知らないと演劇・ダンスの全体像が見えないのではないかということを感じさせられたことだ。
 批評領域として最初に演劇をしてその隣接領域としてコンテンポラリーダンスに出会ったというのが私が今でも両方をカバーし続けることの困難と遭遇しながらもこの両方を批評の対象とし続けている理由であるのだが、同じようなことはそこをメインの批評領域にすることはないにしてもその後、この両者の近接領域としての現代美術に深い関心を抱いたのはジャンルのオーバーラップしてくる部分の存在からして、現代美術に関する基本的な知識がないとある領域の舞台作品について語ることは難しいという風に感じたことが原因だった。
 最近のアイドルに対して興味を持っているのは実は以前現代美術に関心を持ち始めた時と似たようなビビッドかつ先進的な動きをアイドルという表現領域(という言葉が適切かどうかは分からないが)に感じているからだ。
 以前ももクロを論じる文脈のなかでアイドルを総合芸術(あるいは芸術という言葉に拒否反応を引き起こすかもしれない向きに対しては総合エンターテインメントといってもいい)と論じたことがあるが、現在のアイドルというのはそのプロジェクトに参加するそれぞれのクリエイターにとっては楽曲にしても衣装にしても、映像コンテンツにしても自らの表現におけるコアな部分を落とし込めるひとつの実験場のように機能しているところがあり、そのクオリティーの高さというのはそれこそ「クール・ジャパン」の主要コンテンツとして漫画、アニメに続き、ボカロ(初音ミク)などと並ぶ、日本オリジンの創作物として世界に誇れるものではないかと考えている。
 ももクロなどはまだこれからだが、アイドルといえるかどうかは少し微妙だがすでにPerfume(パフューム)やきゃりーぱみゅぱみゅは日本発カルチャーにおいてそれぞれ異なる分野でキラーコンテンツの役割を果たしつつある。ここまで書いてきて誤解がないようにしなくちゃと思ったので断っておくが、以上のようなことが対談で語られたというのでは全然なくて、ここまで書いてきたのはこの対談を聞いていて私が勝手に考えていた内容で、この日実際に話されたこととは直接の関係ないことがほとんどなのだが、アイドルに対する興味が最近とみに増してきたことにはそういう理由があるのだ。
 さやわか氏の話のなかで興味深く、そして目からうろこという気がしたのはライブ、そして握手会などという現場に置ける接触活動が始まったのは東京パフォーマンスドール、制服向上委員会といったアイドル冬の時代以降のことで、それまでのアイドルというのはメディアでの活動が中心でそういうことはそれほどなかったという指摘。握手会などの活動といえばAKBの印象が強いので盲点になっていたのだが、「モーニング娘。」がいまでこそ握手会をしているのだが、もともとメディア主導の売れ方をしたグループだからヒットを連発していた時代の「モー娘。」はそれはしていなかったんだということに初めて気が付かされた。
 もうひとつ「そうなのか」と思ったのはアイドルファンの多くがアイドルの「女優になりたい」という発言に対して「じゃあアイドルは腰掛かよ」と拒否反応を示すという話で、女優事務所所属であるももクロのメンバーが以前はよく当然のこととして「いつか女優に」発言をしていたのがある時点を境にそういう発言をしなくなったことにもそういう事情があるためかと得心するものがあった。私などは演劇が主たる批評対象であることもあるのでそういう感覚は全然ないのだが、もうひとつは世代的に以前に好きだったアイドルというのが、山口百恵はもちろん、その後も薬師丸ひろ子原田知世斉藤由貴小泉今日子といった女優=アイドルの時代だったこともあるのかもしれない。
 厳密にいえば前者2人は女優がアイドル的な活動をしていたし、小泉今日子はアイドルが女優活動をしていたといえなくもないが、斉藤由貴となるとどっちがメインだったのか微妙だし、当時はアイドルもほとんど個人だったので両方やるスケジュールも今のグループアイドルと比べると組みやすかったろうとは想像できるが、少なくとも薬師丸ひろ子原田知世斉藤由貴の3人はまず女優として好きになってその後歌も聞いてという順番だったので、アイドル/女優が二律背反の対立項的に語られるという文脈にはなじみがなかったのだ。ただ、きょうの話を聞いて、スターダストプロモーションがなぜアイドル部門を分離せざるを得なかったのか、そしてなぜ私立恵比寿中学から急に3人の転校生(脱退)が出たのかというの背景がなんとなく分かった気がした。

*1:こちらはチケットが容易には手に入らないのでLV中心ではあるが

*2:おまけにも以前からもクロのファンクラブ会員AEではあったが、最近チケットが取りたくてついチームしゃちほこのファンクラブにもふらふらと入ってしまい、それが妻にばれてひどい目にあった。以前の繰り返しになるが別にしゃちほこのファンというわけではない