下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

ジエン社と「蒼いものか」(東京ELECTROCK STAIRS)

The end of company ジエン社実験公演『いつか私たちきっとそこきっとそこで、そこに』@アーツ千代田3331

出演
片瀬宇海 北村美岬 木村梨恵子 高橋ルネ 坊薗初菜 洪潤梨 由かほる

スタッフ
舞台監督 吉成生子
音響 田中亮大
照明 みなみあかり(ACoRD)
衣装 正金彩
総務 吉田麻美
写真 刑部準也
演出助手 黒澤多生 篠原加奈子
制作 水野綾
協力 ECHOES
主催 The end of company ジエン社
助成 公益財団法人 セゾン文化財

ジエン社は以前から気にはなっていたが、実際に作品を見るのはこれが初めてだ。舞台を見に来た理由は今回の作品が「アイドル」を主題(モチーフ)にしているということがあり、その取材のためとして作者が実際のアイドル現場を取材しに行っていたというから「アイドル的な何か」を舞台で表現してくれることを期待していたのだが、実際の舞台からはそれをあまり感じられなかったのが残念だった。
 作品を見た時にはなぜそうなのかが判然としなくてもやもやしたものがあったのだが、少し時間がたって分かってきたことがある。それは私にとってアイドルというのはそのパフォーマンスの魅力そのものであってそれ以外の何ものでもなくて、ジエン社のスタイルからして部分的にでもそれを再現するのは困難であった(あるいは不必要と判断したのかもしれない)のかもしれないけれどライブの始まる前の控室での会話などは舞台で繰り返し表現されたが、ライブは舞台の中にはなかったし、「推す側」がそこに何を求めているのかがこの舞台からは伝わってこなかったのだ。
 こんなことを感じたのは私が握手会などライブ以外の活動をほとんどやらないももいろクローバーZ(ももクロ)のファン(モノノフ)であることも関係しているかもしれない。ただ、実はこの公演に興味を持ったのは実は作者が取材していたのが、Their/They’re/There(ゼアゼア)というグループおよびそのオタクたちだったことがある。
 というのはゼアゼアは見たことがないのだが、その前進である「BELLRING少女ハート」(ベルハー)のライブは何度か実際に見たことがあり、ベルハーとしての最後の大箱ライブとなった赤坂ブリッツにも参加。そのある種陶酔感のあるパフォーマンスに惹かれるものを感じていたからだ。そういうこともあって逆にその後、ゼアゼアゼアのライブを見に行くことには何となく躊躇していたのだが、twitterなどでの作者の山本氏のつぶやきなどから判断した限りではゼアゼアゼアも似たような魅力を持つアイドルなのかもしれないと感じて、それをどのように舞台で再現するのかを少しだけ期待してきた。
 もちろんジエン社は会話劇の劇団であるから、こういうのは「木によりて魚を求む」ということは重々分かってはいる。この作品ではアイドルをかぐや姫、鶴(鶴の恩返しの鶴)、桃太郎などおとぎ話の登場キャラにも準えており、どうも寓話(ぐうわ)的でアイドルとしてのリアリティーを感じないのはそのためかとも感じたのだが、それだけでもなかったみたいだ。ただ、取材との関係において考えてみるとモデルとなったベルハーとゼアゼアと作中人物を比べて考えた時に月に帰ってしまった「かぐや姫」(ベルハー)へのどうしても消せない思いを「鶴」(ゼアゼア)に託して推し続けてはいるものの、どうしてもそのことが推される側も推す側も感じてしまっていて、どちらもやるせなくなってしまうというところは取材で感じたことがそのまま反映されているのかもしれない。
 ただ、考えてみればアイドルというのは宿命的に「いなくなる」ものなのだ。それは例に出すのはあまりのも悲しいけれど夭折してしまった私立恵比寿中学松野莉奈(通称:りななん)のようなこともあるし、そうじゃなくてアイドルは卒業して女優として活躍している場合もあるけれど、女優としてのその人に会えたり応援し続けることもあるけど、それはもうアイドルを推すということとは決定的に違うんだ、ということを作者は当日パンフに書いていて、それはすごく納得できるところがある。
 そういう点では現在私が応援しているももいろクローバーZは、卒業や脱退は早見あかり以外はもう二度とないだろうと信じられている稀有なグループで、つまり、結婚しても出産してもグループは継続するが、誰かひとりでも抜けた時には解散するだろうということをファンの多くが信じている。それゆえ、この舞台のアイドルのリアリティーを共有できないことには「ここにいる」「いなくなる」のリアリティーを共有してないももクロのファンだということも関係しているのかもしれない。
 ただ、唯一、リアルに痛みを感じたことがあった、チェキの写真をおばあさんに切り裂かれた最後の場面だ。ももクロにチェキはないが推しタオルが腹を立てた妻により自分の留守中に切り裂かれていた時の恐怖はあまりにもリアルであの場面はその時に冷や汗の出る嫌な感じを思い出させた。

「蒼いものかvol.4」(東京ELECTROCK STAIRSプロデュース)@桜台 pool

pickles
泊舞々
TABATHA
(休憩)
高橋萌
横山彰乃(ダンス)+フジワラサトシ(音楽)

東京ELECTROCK STAIRSメンバーの泊舞々、高橋萌登、横山彰乃がそれぞれのソロ作品を披露。KENTARO!!の3作品を連続上演した吉祥寺シアターでの本公演に続き、最近の同カンパニーの充実ぶりをうかがわせるダンスショーケース公演だった。