下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ももいろクローバーZ AE限定「over.40祭り」@日本武道館

ももいろクローバーZ AE限定「over.40祭り」@日本武道館

開催日時 2017-10-21 (土)
時間 開場 18:30 開演 19:30 終演 21:00
※終演時間はあくまでも目安になります

出演者
ももいろクローバーZ
百田夏菜子
玉井詩織
高城れに
佐々木彩夏
有安杏果

over.40 本日のセトリ

ピンキージョーンズ
猛烈宇宙交響楽 無限の愛
チャイマっクス
MC
夢の浮世に咲いてみな
Zの誓い
words of the mind
MC
黒い週末
believe
MC
DNA狂詩曲
走れ

ライブ途中でゲッタマンが登場しての体操の時間とか、女医の先生による予防医学的な注意事項、まったく意味不明の風景映像に合わせてピアノとギターの生演奏が行われるヒーリングタイム……。AE限定イベントおなじみの茶番的な企画は随所に挿入されるが、セットリスト自体は激しい動きのいわゆる「アゲ曲」が並びきわめて攻撃的。なかなか見所のあるライブであった。
 直前に行われた「学生祭り」では学生たちの年齢ではだれも分からないだろうと思われる「スクールウォーズ」がモチーフになったが、「over.40祭り」は客入れ時の音楽こそ80年代の懐かしめな選曲が目をひいたが、本編に入ると 「over.40」を逆手に取ったように「ピンキージョーンズ」「猛烈」「チャイマ」と最近でこそ以前よりやられる回数が減ってはいるが、ガッツリ系ライブの定番曲を並べた。
コールがいつもより野太いのは年齢のせいもあるかもしれないが、男女比率でいうといつものライブよりも圧倒的に男性の比率が高いためだろうか。怒号のようなコールの迫力はいつもにも増して、大音量で会場に響いたが、もうひとつの特徴は最近話題になることの多い他アイドルの現場では普通だが、ももくろスタンダードMIXや「イエッタイガー」などのコールがまったく聞こえてこないことだった。
おそらく、ももクロの他の女性アイドルと比較した場合の最大の特徴、そして武器は「over.40」のファンの層が分厚いことだろう。しかもこの年齢層はいろんなきっかけでももクロにはまった人がいても、いわゆるアイドルファンというのは少数で、アイドルだからではなくももクロだから応援しているという人たちが多いと思われる。最近は実はももクロだけでなく、他のアイドルの現場にも足を運ぶ機会が増えているのだが、スターダストプロモーション所属のももクロの後輩グループの現場ではこうした年齢層の客は多いとはいえず、この日は単純に計算しても武道館を満員にする観客が公演に来ているわけであり、しかも抽選にはずれている人や来られない人も多いのだから、これこそがももクロが他のアイドルが埋められないスタジアム級の会場を埋められる原動力だといえるかもしれない。逆に言えば10代など学生層への浸透はテレビの露出がほとんどないことからいまひとつであり、ファンクラブイベントということもあり、すべての客席を埋めることはできなかった*1
 この日のライブが画期的であったのは(正式にそうだという確認はとれていないももの)当日の客席を連番は別にして前から順番に年齢順に並べたのではないかと思われること。私は50歳代末なのではあるが、60歳代の知人と連番で登録していたため、左サイドではあるが、前から3列目という絶好のポジションに陣取ることができた。
 実はそんなに大きくなくてももクロメンバーがスタジアムのようにバラバラにならなくてもいい会場でひさしぶりにかつての定番曲をやってことで、歌にしてもダンスにしてもメンバーの技量が格段に上がっていることが改めて感じられ「こりゃ凄い」と思うところが随所にあった。同じ振り付けだと思うのだが、「夢の浮世に咲いてみな」「words of the mind」「believe」などは動くところと静止するところのメリハリがはっきりしていて、手足の動きなどもエレガントになっていてまるで別物のように見えた。特に歌唱、ダンスともどもにあーりんの充実ぶりはすばらしくて、杏果推しながらもついついそちらの方に目が引き寄せられた。この日の武道館は超満員だったのだが、少しの広いという風には感じられず、むしろ狭く感じられたのはアリーナ前方の席のせいもあるかもしれないが、スタジアム級ライブを経験しすぎたせいで、感覚が狂っているのかもしれない。さらに言えばMC3回で10曲というのはきわめて普通のライブではあるのだが、4時間あるライブを何度も経験したせいで異常に短く感じたのも確かなのである。

*1:とはいえ、ももクロ運営は観客動員をすべて実数で発表するが、他のグループで満員と発表している観客数よりは若干多いかもしれない。