下北沢通信

中西理の下北沢通信

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神村恵 『消えない練習』・篠田千明 『ゆーばーん』@SCOOL

神村恵・篠田千明「さっきあった時間はいま」ワークインプログレス@SCOOL

上演作品

神村恵 『消えない練習』篠田千明 『ゆーばーん』

出演

神村恵・篠田千明

日程

2017.11.8(水) 9(木)
19:30開演(開場は30分前)

料金

1,000円


11.8 WED 19:30
11.9 THU 19:30

神村恵 ソロ作品『消えない練習』
2015 年に初演した作品を、再構成して上演します。 過去を思い出せないと、現在の目の前のことを見ることができない。 さっき手が下にあったことを思い出せなければ、手が上に上がるという動きを、見ることができない。しかし手の現在を見なければ、そもそも何も見えない。
(振付・出演:神村恵)
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篠田千明 ソロ作品『ゆーばーん』
人生で初めてのソロのタイトルは、タイ語で”うちにいる”。これは翻訳なしで文脈で覚えた最初のタイ語でもある。 移動が多い人生がはじまり随分経つが、久々にバンコクで部屋を借りた。その部屋から始めてみる。
(企画・構成・出演:篠田千明)

助成:セゾン文化財
協力:Speedy Grandma, Bridge Art Space, Nut Sawasdee

12月に京都の小スペースでで本公演が予定されており、それに向けてのワークインプログレスということだった。
 前半の神村恵は以前行った公演の再演ということだが、決められたミニマルなプロトコルをひたすらに繰り返すという「いわゆるタスク系ダンス」だったようだ。ようだというのは用事があり遅れてしまい途中からしか見られなかったからで、それゆえここではこれ以上のコメントはしない。
 篠田千明の一人芝居は現在彼女が住んでいるタイのバンコクでの部屋について語ったもの。モニターによって壁に映し出された字幕的な文字テクストとそれを彼女が読んだものを録音した音声、それからここにいる彼女が実際に語るセリフ。前半はそれが3つ重なり合うように展開するのだが、そういうことをする意図は上演を実際に見ているだけではあまりよく分からない。
 上演はほぼ同じ内容に思われるものが、同時に提示されるため、重複感が強くて、冗漫な風に感じるのは否めない。上演が終わってからのワークインプログレスでの説明では舞台上で聞きながら語ったりすることに意味があるらしかったが、正直言って見る側にはそれは分からない。
 中盤以降、英語、タイ語の発話と字幕が重なったりするようになる。ここではテクストが時間的にずれたり、内容が一部異なったりしはじめると次第に上演は複数要素のコラージュ的な面白さを生み始める。
 ここらあたりまでは手法に目が行きがちになるが、映像とテクスト、音声とパフォーマーによる身体所作などをとりまとめて組み合わせる後半部分になると実は手法的により複雑になったようでいて、むしろ描かれる彼女のタイでの実際の生活はどうなのかというようなことに興味は移って、手法は次第に透明に感じられていく。実際にはここが面白いのだが、作り手側はどうも観客側が受けるそういう印象はそれほど重要ではないらしく、結局のところ何がやりたいのかということはよく分からなかったかもしれない。