下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」@新宿TOHOシネマズ

アニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」@新宿TOHOシネマズ

日本が誇る「ゴジラ」シリーズ初の長編アニメーション映画。巨大な怪獣たちが支配する2万年後の地球を舞台に、故郷を取り戻すべく帰還した人類の闘いを描く3部作の第1部。20世紀末、巨大生物「怪獣」とそれを凌駕する究極の存在「ゴジラ」が突如として地球に現われた。人類は半世紀にわたる戦いの末に地球脱出を計画し、人工知能により選ばれた人々だけが移民船で旅立つが、たどり着いた星は人類が生存できる環境ではなかった。移民の可能性を閉ざされた船内では、両親の命を奪ったゴジラへの復讐に燃える青年ハルオを中心とする「地球帰還派」が主流となり、危険な長距離亜空間航行を決断。しかし帰還した地球では既に2万年もの歳月が流れており、ゴジラを頂点とした生態系による未知の世界となっていた……。「名探偵コナン」シリーズの静野孔文と、「亜人」の瀬下寛之が監督をつとめ、「PSYCHO-PASS サイコパス」の虚淵玄がストーリー原案と脚本を担当。「シドニアの騎士」「亜人」などセルルックの3DCGアニメーションを多く手がけるポリゴン・ピクチュアズが制作。

スタッフ
監督静野孔文 瀬下寛之
ストーリー原案虚淵玄
脚本 虚淵玄
シリーズ構成 虚淵玄

キャスト(声の出演)
宮野真守 ハルオ・サカキ
櫻井孝宏 メトフィエス
花澤香菜 ユウコ・タニ
杉田智和 マーティン・ラッザリ
梶裕貴 アダム・ビンデバルト


アニメーション映画『GODZILLA 怪獣惑星』WEB CM<熱狂コメント篇>





この作品だけを単独で見ると明らかにされてない謎の部分が多すぎて「どうなのこれ」みたいな感想になりがちな出来栄えだが3部作の1作目なのだからこれだけを見て、ああだこうだ言うのは物語の設定の真意が分かる前の最初の数話だけを見て「魔法少女まどかマギカ」を評価するようなものではないかという気がする。
(以下はねたバレ嫌な人は読まないで)











 冒頭にゴジラと他の怪獣たちが突然現れたということの直後に地球を侵略しにきたという宇宙人「エクシフ」のことが出てくるわけだが、この映画ではわずか数秒程度で片付けられていて、次の場面ではゴジラにともに敗れた地球人と宇宙人たち(エクシフとブラックホールに母星を呑み込まれた種族ビルサルド)が仲良く、移住可能な惑星を探して宇宙の旅に出ているということになっている。どう考えても唐突なのだが、その間の経緯が略されすぎで全然分からない。
しかも少しだけ考えても矛盾するような記述や疑問点が多数あるのだ。第一に移民船は地球から恒星系をいくつか回って旅をしながら、居住可能な惑星を探しているのだが、その間にワープ航法のようなものを使うことはしていない。それなのに一度地球に戻るということを決意してからは実はこんな技術もあったんだとあっという間に戻ってきているのだが、このあたりどうも怪しい。
宇宙人が2種類出てくるところなどはまずアーサー・C・クラークのSF「地球幼年期の終わり」に登場する超越君主the Overlordオーバーロード)と超越精神the Overmind(オーバーマインド)を連想させる。そうだとすると高度な科学技術を持つというビルサルド(オーバーロードにあたる)は第1部ではあまり表面に出てくることはないが、彼らがメカゴジラ(機龍)を作ったことは間違いないので、第2部では彼らが中心になるというのでは言い過ぎとしてももう少し前面に出て来るのは間違いない。この2つの種族は今はともにゴジラを倒すという利害の一致から協力をしているようだが、もともとそれぞれが異なる目的のために動いているとも思われ、対ゴジラ部隊の地球派遣にもそれぞれ思惑がありそうだ。
 興味深いのはインタビューなどで虚淵玄が「エクシフ」=X星人だと明らかにしていることでX星人といえば「怪獣大戦争」(1965年)と「ゴジラ FINAL WARS」(2004年)の2度にわたって出てくるが、いずれも地球人を怪獣から救うというように甘言を弄して地球人を奴隷化して支配しようというような悪巧みを試みており、一見人類に好意的に見える「エクシフ」もどこかで豹変してその真なる姿を現すというのは大いにありうるところだ。
 もうひとつの種族ビルサルドも実はブラックホール第3惑星人だという説があり、こちらも「ゴジラ対メカゴジラ」で登場するがメカゴジラを操って地球侵略を企てる。第1部のラストシーンからしメカゴジラが登場して、第2部ではゴジラと戦うことになるのは間違いないのだけれど、過去のゴジラ作品の流れからするとビルサルドが製作したメカゴジラが人類にとっての福音なのかどうかはまだ疑念が残るところだ。ましてや相当以上のゴジラマニアとして知られる虚淵玄が「ゴジラ」の再構築である「シン・ゴジラ」への対抗軸として従来は正統派ゴジラに対する異端作品群と思われていた宇宙人が登場する「怪獣大戦争」(1965年)と「ゴジラ FINAL WARS」(2004年)、「ゴジラ対メカゴジラ」といった作品群をさまざまに参照しながらこのアニメ映画「GODZILLA 怪獣惑星」を製作したのは間違いない。そうだとすると第2部にメカゴジラが登場した後には真打としてゴジラシリーズの生んだもうひとつの千両役者、キングギドラが登場するのは間違いないだろう。そのときにゴジラキングギドラの位置づけがどうなっているのかというのは大いに興味を引かれるところであるのだけれど。善悪の位置づけについて虚淵玄がプロット上での逆転につぐ逆転を得意とすることは「魔法少女まどかマギカ」を見た人なら誰でも知っていることであろう。その意味では今後が楽しみな映画である。
いずれにせよ、この映画はゴジラシリーズはもちろんだが怪獣映画全般、SF小説・映画、漫画、アニメなどからの引用が縦横無尽に盛り込まれている。もちろん、「進撃の巨人」やハリウッド映画のようなバトルアクションとして楽しむこともできるのだが、真価が問われるのはむしろこれからだろう。