下北沢通信

中西理の下北沢通信

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ももいろクリスマス 2017 ~完全無欠のElectric Wonderland~ 埼玉公演@さいたまスーパーアリーナ

ももいろクリスマス 2017 ~完全無欠のElectric Wonderland~ 埼玉公演@さいたまスーパーアリーナ

 「ももいろクリスマス」はももいろクローバーZが毎年クリスマスの時期に開催しているライブ。今回は8回目でこれまでもその1年を総括するような意味合いを持つライブとして開催されてきた、ただ、一昨年はスキー場でのライブ、昨年はクリスマス曲を集めたアルバム発売に合わせた公演と企画色も強く、場所柄凝った演出が難しかった。

 本当はさいたまスーパーアリーナでやりたいところだが、クリスマス時期のSSAはやりたい団体が多く、しかもももクロの動員力とキャパから言って本当は複数日取りたいところだった。この条件では会場確保が難しいため、これまでは代替になる会場の開拓に向けてだれも使ったことのない厳冬期の西武ドーム(そもそもドームといっても開放型である)やスキー場と試行錯誤を繰り返してきたが、今回は発想を変えて、時期を前倒しにしての単日開催、しかも大阪城ホールを大阪会場として確保することで何とか公演回数を2回にして、SSAに帰ってくることができたのだ。

セットリスト全体を振り返ってみると新旧の曲が具合よく取り混ぜられていてとてもバランスのとれたものだったという印象だったのだが、終了後確認してみて驚いたのは昨年発売されたクリスマス曲アルバムに収録されていた曲は昨年同様歌っているし、さらに今回のための新曲2曲、山寺宏一夏菜子のデュエット曲、直近のシングル曲3曲と昨年以上に縛りが多いセットリスト。実は昨年はクリスマスアルバム曲を全曲歌ったためにセットリストの自由度が低く、窮屈な印象もあったのだが、今年のももクリはそういうマンネリ感はいっさいなかった。

今回の特徴はバンド編成をいつものダウンタウンももクロバンド(DMB)ではなくて、元カシオペアのドラマー、神保彰によるドラムとシンセドラムによりすべての楽器の音色をひとりで演奏するという「ワンマンオーケストラ」と宗本康兵率いるアコースティックカルテットが参加。一緒に演奏するというのではなくて、それぞれが合う楽曲を担当するという形をとった。DMBがいつもの形で参加しなかったのは武部聡志音楽監督をつとめるFNS歌謡祭にほとんどのメンバーが参加していたためだが、結果的には今回の「ワンマンオーケストラ」、アコースティックカルテットとの共演は近年のももクロの音楽的な対応力の高さを見せ付けることになった。

 中でもももクロのことは置いておくことにしてもその圧倒的な演奏力に唖然とさせられたのは神保彰。なかでも凄かったのが「Neo STARGETE」。この演目といえば百人以上の合唱隊を背後に圧巻のパフォーマンスと展開した国立競技場のが非常に印象的で、そのせいもあってかあまりやられなくなっている感があったが、前奏となっている「カルミナブラーナ」をひとりで演奏したのには驚嘆させられたうえにそれを受けて登場したももクロ5人のパフォーマンスも引けをとらないもので、この日のパフォーマンス全体でも白眉といえるものだった。

 この曲だけではなく、インステュメンタルで演奏した「さらば愛しき~」から「Neo STARGATE」「Chai Maxx ZERO」「BLAST!」と続くブロックはドラムの分厚い音圧にももクロメンバーそれぞれの歌唱が拮抗していくようで「いまのももクロはここまで来ています」をモノノフの前でまざまざと見せ付けるようなパワフルさを見ることができた。

 この日のもうひとつの見せ場はアコースティック編成の宗本カルテットの演奏によるUnplugedのブロック。MVTUnplugedのライブやももいろフォーク村、杏果、れにのソロコンを加えてもいいと思うが、シンプルなアコースティック楽器だけの演奏で歌声そのものをきっちりと聞かせるような機会が増えてきている。以前からそういうパフォーマンスは時折はあったが、転機になったのは武部聡志のピアノだけの演奏で披露した太宰府天満宮(男祭り)での「灰とダイアモンド」のパフォーマンスだと思われるが、この日披露した「白い風」「灰とダイアモンド」「空のカーテン」といった楽曲はボーカルグループとしてのひとつの到達点を示したものであり、ももクロのことを相変わらず「下手」とディスっている人たちに見せつけてやりたいほどのものだった*1


音楽の神様 神保彰


 ももいろクリスマスのもうひとつの目玉はももクリ限定シングルによる新曲の発売・披露だが、今回は2曲が昔風の言い方をすれば両A面。

 ライブで最初に披露された新曲「天国の名前」は、戦後を代表する作詞家であった阿久悠の未発表(楽曲としてはということ)の詞にももクロ曲作曲ではヒャダインと双璧といえるNAKARAKIが曲をつけた。もちろん、直接の関係はないわけだが、亡くなった人間に呼びかける歌詞は現時点で聞けば突然逝去してしてしまったエビ中のりななんのことを想起せずにはおられぬだろう。曲自体は今後長い間その時々の思いを胸に歌いついでいくべき楽曲であろうし、ピンクレディーキャンディーズといったアイドルにも楽曲を提供していた阿久悠氏の詞を著作権保護者の了解を得てもらいうけることができたということはももクロのこれまでの活動実績が認められたことだと素直に喜びたい。

 詞の話を聞いたときに次に思ったのは「誰が作曲者なんだろう」ということだったのだが、それがNARASAKIだったというのも納得の選択。自分が選ばれたことの意味をおそらく考えながら、たいていの人がバラード曲だろうと思う詞にあえてロック調のギターサウンドをつけたNARASAKIの矜持にも拍手をしたい。
一方、清竜人作詞作曲による新曲「ヘンな期待しちゃ駄目だよ…?♡」は佐々木彩夏&ももメイツのクレジット通りのあーりん曲だが、あーりんのキャラクターを活用した楽曲としては初見の印象では、どうしてもヒャダインによる強烈な楽曲群と比べてしまうこともあり、やや線が細い感じが否定できないものであった。 今回はトロッコを移動しながらの楽曲となったことがそういう印象を強めたかもしれないので、歌いこなせばそういう印象は薄まることはあるだろうが、「メリークリスマス メリークリスマス」と曲中で何度も唱和されることもあって、クリスマスライブ以外では歌いにくいだろうというのも少し気になった。
 この日は声優、山寺宏一が登場しアニメ映画「かいけつゾロリ ZZのなぞ」の主題歌でもある「夢は心の翼」もライブとしては初披露されたが、この歌の夏菜子は声が本当に伸びやかで、魅力的だった。この歌も地上波テレビを含め今後いろんなところで披露してもらいたいところだが、相手も多忙な声優であり、スケジュール的に厳しいのが残念である。今後、披露できそうな場としては来年になってしまうがももクロも参加するアニメフェスぐらいだろうか。


セットリスト
M1:何時だって挑戦者
M2:LOST CHILD
M3:BIRTH Ø BIRTH
M4:真冬のサンサンサマータイム
M5:僕等のセンチュリー
M6:天国の名前
M7:Wee-Tee-Wee-Tee
M8:モノクロデッサン
M9:きみゆき
M10:Neo STARGATE
M11:Chai Maxx ZERO
M12:BLAST!
M13:白い風
M14:一粒の笑顔で…
M15:境界のペンデュラム
M16:DECORATION
M17:サンタさん
M18:猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
M19:SECRET LOVE STORY
M20:ヘンな期待しちゃ駄目だよ…?♡
M21:夢は心の翼 (百田夏菜子山寺宏一)
M22:行くぜっ!怪盗少女
M23:灰とダイヤモンド
M24:白金の夜明け
アンコール
EN1:泣いちゃいそう冬
EN2:空のカーテン
EN3:今宵、ライブの下で

*1:もっともその手の輩はどんなパフォーマンスを見ても下手と言い続けると思われるのでむしろ黙殺すべきなのだが