下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団リンク キュイ「前世でも来世でも君は僕のことが嫌」(2回目)@小竹向原・アトリエ春風舎

青年団リンク キュイ「前世でも来世でも君は僕のことが嫌」(2回目)@小竹向原・アトリエ春風舎

作:綾門優季青年団) 演出:得地弘基(お布団/東京デスロック)

この世には、決して受け入れられないひとがいるということ。
決して近寄ってはいけない場所があるということ。


ある日、夜の公園で突然起こった無差別殺人事件。誰かを狙った犯行というわけでもなく、その日、たまたま犯人に出くわした人物という共通点しか被害者たちには存在しない。悪い人物も良い人物も、等しく殺されている。マスコミはそのような事件を起こした動機を必死に探ろうとするが、最近も遠い昔も、何も出てこない。家庭環境に原因も特になさそうだ。その事件を目撃した市民は、あの犯行が何の動機もないものだということを確信していたが、それを証明する術はなく、ただ沈黙した。


出演

大竹 直(青年団) 岩井 由紀子(青年団) 西村 由花(青年団) 矢野 昌幸(無隣館)
井神 沙恵(モメラス) 中田 麦平(シンクロ少女) 船津 健太 松﨑 義邦(東京デスロック)
スタッフ

照明:黒太剛亮(黒猿) 音響:櫻内憧海、渡邉藍
映像:得地弘基(お布団/東京デスロック) 舞台監督:篠原絵美
舞台美術:山崎明史(デザイン事務所 空気の隙間)  衣裳:正金彩(青年団
演出助手:三浦雨林(青年団/隣屋) 制作:谷陽歩

総合プロデューサー:平田オリザ
技術協力:大池容子(アゴラ企画)
制作協力:木元太郎(アゴラ企画)

脚本が欲しい。最後の方の記述にいくつか疑問点がある。まず注目したいのはシーン「4ー??」なのだが……。
 その前に作者による登場人物のキャラ付けに注目したい。「前世でも来世でも君は僕のことが嫌」が面白いのはこれは登場人物らが一種の不条理な空間に置かれるという意味で「不条理劇」なのであるが、主人公の志向性がまるでゲームでも行うかのようにその中で可能な最適解を探そうかと言うように合理的な行動をとろうとするところだろう。
 全体の状況があまりにも変だからそれは一見そうではないように見えるかもしれず、それでその突飛な行動に劇場で笑いが起こったりもするのだが、この人物の行動原理は単純。それは最小の手順により、このループから抜け出すための行動ということだ。
主人公(と思われる)男は自らが迷い込んだ迷宮空間が4つの場面のループからなっていることに気がつく。それで、まず1ーXの「公園の場」で自分の行動を最初のループと変更してみて、殺人の連鎖を妨害し、ループから脱出しようと試みるが、途中の経路をいくら変更しても全員死んで次のループに移行するという結末は改変できないことを確かめる。
 その後、バスジャックの場で「ルーレットで全体の盤面を4分割し、出目の多い局面に重点的に賭ける」という友人の話にヒントを得る。
 それは全員の殺戮を防ごうとしても「公園の場」では無理で、「バスジャックの場」「学校の場」も困難。そのため、自分が毒を飲まなければ毒殺されることが避けられそうな「毒殺の場」にすべての知恵と努力を注入し、他の場に当たった時はとにかく、自分がまず殺されることや、全員ができるだけ早く死ぬように計らい、その回をできるだけ早く回して次の回に行くような努力をするという戦略である。
 そして毒殺犯であるはずの女を捕らえ、本来ならば皆が死ぬ時間まで監禁して何も行動ができないようにして待つのだが、そうした努力にも関わらずそのループはそこで終わって何事もないように次のループに入ってしまう。

「脚本が欲しい。最後の方の記述にいくつか疑問点がある。まず注目したいのはシーン『4ー??』なのだが……。」
 
 こんな風に最初に書いたのはそのためなのだが、実はここまで書いてきた瞬間に作者の仕掛けてきたトリックと解答が分かった。それが何かというと
(もう一度観劇するので、解答編はその時書くけどこの作品は幻想譚などではなく、巧緻に創作されたミステリ演劇です)
http://simokitazawa.hatenablog.com/entry/2017/12/23/000000