下北沢通信

コリン・デクスターが死去

英国の人気警察小説「主任警部モース」シリーズの作家コリン・デクスターさんが21日、オックスフォードの自宅で死去した。出版元が発表した。86歳だった。

最後のモース警部の本を読んでから16年もたっていた。テレビシリーズは時々見ていたけれど。

2001年2月27日の日記 コリン・デクスター「悔恨の日」を読了

 東京・下北沢、最後の日だが、引っ越しで慌ただしく、感慨にふけっている暇もない。明日は大阪で荷物入れの日である。

 大阪への移動の新幹線の中で、以前買ったままで長い間読みさしになっていたコリン・デクスター「悔恨の日」を読了。帯にも「モース主任警部、最後の事件」と書いてあったし、人気シリーズ完結編の文句も裏表紙にあって、これがデクスターのモースものの最後の作品だというのは分かっていたのだが、こんな結末になっているとは……。日本への翻訳は昨年10月のこととはいえ、作品が発表されたのは1999年と2年前のことだけにそれを今ごろ知ったのは最近のミステリの近況について不勉強ならではのことなのだが、デクスターがシリーズにこういう結末をつけていたことにはちょっとショックを受けてしまった。コリン・デクスターのモース警部シリーズについては作品がポケミスで出ればそのたびに買い込んで読んでいたというだけではなく、一時期は相当に入れ込んでいてこともあって、8年ほど前には事件ゆかりの地巡りを企画して、2日間という短期間ではあるが、ロンドン旅行の途中で足を伸ばして、オックスフォードにも出かけたほどである。その時に現地(ロンドン)で手に入れた「消えた装身具」は翻訳が出版される前に原書で読んでいるほどだ。もっとも、私の語学力では翻訳で読んでさえ、頭が混乱するデクスターを理解するには根気が続かず相当荷が重かったのだけれど(笑い)。

 「だれが犯人か」という謎を扱うそれまでの伝統的なフーダニットの本格ミステリに対して、デクスターのモース物は時には事件の実態さえ分からず、モースの推論の中で状況二転三転していくという特異なプロットを取る。こうしたパターンのミステリはアントニー・バークリーの「毒入りチョコレート事件」など一部の先例はあるものの、20世紀後半になり初めて一般的になったモダン・ディククティブストーリーの典型といえるものだ。それはいわゆる「ホワットダニット」型のミステリと言い換えてもいいのだが、形式は微妙に異なるが、アガサ・クリスティーの後期の作品群から、ロス・マクドナルドのリュー・アーチャーものなどある種のハードボイルド小説やをへて、デクスターのモース物とルース・レンドルのウェクスフォード警部シリーズという私見では20世紀後半の本格ミステリの系譜があり、今そのうちの1つのシリーズが20世紀の最後をもって終焉を向かえたという意味でも同時代を生きていた一読者としてそれなりの感慨は抱かざるをえなかったのである。

悔恨の日 モース主任警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

悔恨の日 モース主任警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫)