下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

ナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』@下北沢本多劇場

ナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』@下北沢本多劇場

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作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ 峯村リエ
みのすけ 大倉孝二 松永玲子 村岡希美 長田奈麻 廣川三憲 安澤千草 藤田秀世
猪俣三四郎 菊池明明 小園茉奈 木乃江祐希 伊与勢我無/
萩原聖人 泉澤祐希 伊藤梨沙子 山西 惇

 ティルダ・ベーカー(犬山イヌコ)とコナ・アーネット(峯村リエ)を中心に大きな楡の木のある家とその家に住む一家を巡る年代記である。イメージの原点となった特定の作品(映画か小説)があったのかどうかは不明だが、舞台でありながら良質な映画や小説の味わいを思わせるような作品だった。
 物語の中心にあるのは一本の楡の木。木の周囲の人たちには秘め隠されていた出来事をその木だけは話すことができて、木は語ることはできないけれどよく知っているんだという設定が巧みだ。二部構成になっていて、一部を見ただけでひととおりの一家の歴史は分かるのだけれど、そこでは語られなかったことにそれぞれの「人生の真実」のようなものがあったんだというケラの作劇には熟練の技を感じた。
KERAの演出や脚本もきわめて完成度が高いものではあるけれどもナイロン100℃の最大の武器は俳優のよさである。技術的にもうまいことも確かなのだが、それ以上に俳優の醸し出す独特のペーソスというか、見ていてせつなくなってくるような魅力がある。最後の本当に重要なシーンに出てきて鮮やかな印象を残すみのすけの存在のあり方がいかにもナイロン100℃である。みのすけは主役とはいえなくても、作者の分身として物語全体をつかさどる役割を担うことが多い。今回はそれほど重要な役にも見えないけれどこの役はみのすけならではの役柄だと思った。