下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団・こまばアゴラ演劇学校“無隣館”『革命日記』Aチーム@こまばアゴラ劇場

青年団・こまばアゴラ演劇学校“無隣館”『革命日記』Aチーム@こまばアゴラ劇場

作・演出:平田オリザ
2018年4月14日(土)- 4月30日(月・祝) 20ステージ
会場:こまばアゴラ劇場
日常と非日常が交錯する共同体の臨界点を鋭く描写した意欲作 。組織は腐敗する、革命は堕落する。いかなる組織も、いかなる革命も。
都市近郊の閑静な住宅街。ごく平凡な家庭が、二つのテロを企てる過激派集団のアジトになっている。空港突入と大使館襲撃。日常を引きずりながら突き進む、彼らの革命はどこへ向かっているのだろうか。2017年4月に入学したこまばアゴラ演劇学校“無隣館”3期生と青年団有志による合同公演として、 2012年に上演された『革命日記』を6年ぶりに再演。A、Bチームによるダブルキャスト公演です。
この戯曲は、1997年、安田雅弘(山の手事情社)が演出した『Fairy Tale』という作品の中核をなす物語として書き下ろされました。 当時、私は、「集団と個」の問題ばかりを考えていたように思います。オウム真理教の事件から二年、劇団を主宰する者として、演劇集団とオウム真理教はどこがどう違うのかばかりを考えていたように思います。個々の善意から生まれた集団が、なぜ狂気に走るのか。『革命日記』は、その答えを探そうとして書かれた作品です。
集団を作るのが難しくなっている今の時代に、無隣館の若い俳優(若くない人もいますが)たちと、この作品に再び取り組めることは、大きな意義があることだと思っています。

作・演出 平田オリザ


出演

Aチーム
本田けい 坂倉花奈 藤瀬のりこ 吉田 庸(以上、青年団)有吉宣人 飯田一期 石渡愛 外桂士朗 多田直人 西風生子 南風盛もえ 坊薗初菜 堀紗織 山村麻由美 和田華子(以上、無隣館)


Bチーム 小林亮子 堀夏子 中村真生(以上、青年団
石渡 愛 小野亮子 木村トモアキ 黒澤多生 鯉沼トキ 多田直人 奈良悠加 西風生子 南風盛もえ 坊薗初菜 矢野昌幸 和田華子(以上、無隣館)

スタッフ

舞台美術:青年団美術部
照明:井坂 浩
衣裳監修:正金 彩
舞台監督:河村竜也
宣伝美術:西 泰宏
制作:赤刎千久子 太田久美子


新左翼組織の活動とその崩壊を描いた「革命日記」は1997年、安田雅弘(山の手事情社)が演出した『Fairy Tale』という作品の中核をなす物語として書き下ろされ上演された。この時は平田オリザも語っているようにオウム真理教による一連のテロ事件(1995年)とそれほど時間がたっていない時期で平田自身も「当時、私は、『集団と個』の問題ばかりを考えていたように思います。オウム真理教の事件から二年、劇団を主宰する者として、演劇集団とオウム真理教はどこがどう違うのかばかりを考えていたように思います。個々の善意から生まれた集団が、なぜ狂気に走るのか。『革命日記』は、その答えを探そうとして書かれた作品です」と説明している。
 こまばアゴラ演劇学校“無隣館”との合同公演は春の風物詩となりつつある。青年団の豊岡移転のことも関係してか、無隣館は第3期で最後というのがすでに発表されているので、来春の合同公演が最後ということになるが、ここ数年の合同公演を見る限り、青年団の本公演とさほど遜色がないほどレベルが高い。実はこの3期を通じてアゴラ演劇学校“無隣館”というのは新劇の劇団によくあるような単なる新人養成所ということではなく、新たなキャリアパスを模索する他劇団の中心俳優も参加できるようなところであるというのが知られてきた。
 今回の座組みではAチーム、Bチームともに青年団の俳優も参加しているが、年齢層の高い役柄を埋めるという風ではない。この日のAチームには本広克行演出の舞台「転校生」にも参加していた石渡愛のような若手有望株が入っているかと思えば*1、多田直人は演劇集団キャラメルボックスの中心俳優のひとり、革命組織のリーダー佐々木を熱演した飯田一期は庭劇団ペニノの「地獄谷温泉 無明ノ宿」にも出演していた中堅俳優である。飯田らごく一部の例外を除けばいままでの青年団にはいなかったタイプの個性派だけに無隣館との合同公演には青年団の本公演にはないような奔放さがあり、そこが面白いのだ。
革命組織がワインを飲み交わすなどリアリティーがないとの批判がネットに上がっていたが、この脚本はもともと安田に提供された時点で「Fairly Tale」つまり「おとぎ話」と題されていたほどでリアルは求めていなかった。

*1:青年団から出演した坂倉花奈も舞台「幕が上がる」「転校生」に出演していたからここではライバルを迎え撃つ構えといってもいいかもしれない