下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

コトリ会議「しずかミラクル」@こまばアゴラ劇場

コトリ会議「しずかミラクル」@こまばアゴラ劇場

作・演出:山本正典

25世紀。
地球は、無くなる一年前を迎えていた。
干上がった海を眺めて語り合う人間の男と宇宙人の女。
宇宙人は今日、人間から名前をもらった。
水のない、静かな海からとった名前「しずか」
宇宙人は喜んで、人間のことをたくさん尋ねた。人間の男はたくさん話した。
人間の戦争の歴史。日本の四季。神さまのこと。科学の発展。有名な小説。
ほとんどがもう、この世界からなくなったものだけど、一年後には、本当に全てがなくなってしまうけれど、人間の男は宇宙人の女に聞かせてやった。
なんでも、無くなってしまって構わない。
この宇宙人の女は、今、ここで喜んで聞いてくれた。それが、男にとって大切なことだった。
宇宙人の女が死んだところから、物語は始まる。

<作者の山本より>
コトリ会議は次で3回目の東京です。
家から離れて過ごす街の華やいだこと。それに比べて僕の暮らす街の平らかなこと。
背伸びは疲れますが、東京は楽しい。
だからこそ、ゆっくりと腱をほぐせる僕の街の嬉しいこと。
そんな気持ちにまたなれること。
楽しみです。



コトリ会議
2007年結成。ほぼ全作品を作・演出の山本正典が手がける。ふつうの人々の生活を、軽妙な会話で丁寧に描くことを得意とする。素朴さを装いながらも、人の心に巣食う“嫌らしさ”を、寓話的な表現を織り交ぜて立ち上げていく。
シアトリカル應典院演劇祭「space×drama2010」優秀劇団を受賞。
2017年に5都市をまわった『あ、カッコンの竹』は演劇批評誌「紙背」二号に収録されている。



『あ、カッコンの竹』(2017)撮影:山口真由子


出演

牛嶋千佳 要小飴 まえかつと 三村るな 若旦那家康(以上、コトリ会議)
石英史 中村彩乃(安住の地/劇団飛び道具) 原竹志(兵庫県立ピッコロ劇団) 山本瑛子

スタッフ

舞台監督:柴田頼克(かすがい創造庫)
音響:佐藤武
照明:石田光羽
照明オペレーション:木内ひとみ
舞台美術:竹腰かなこ
衣装:山口夏希
演出助手:吉村篤生(劇の虫)
音楽:トクダケージ(spaghetti vabune!
宣伝美術:小泉しゅん(Awesome Balance)
制作:若旦那家康、竹内桃子(匿名劇壇)
制作協力:大石丈太郎、劇団 短距離男道ミサイル


 コトリ会議の舞台についてSFだということになっているようだし、前回公演の後、そう書いたような気がするが、それは宇宙人が出てくるからであって本質はファンタジーなのではないかと思った。
 とはいえ、それはジブリに例えると宮崎駿のようなリアリティーのある異世界ではなくて、高畑勲のようなふんわりした世界。この「しずかミラクル」にせよ、前作「あ、カッコンの竹」にせよ、あの
アンテナのついた宇宙人が出てくるから、B級SFみたいに見えるけど、それがなければ竹林の中に山姥がいる話、今回は神の怒りにより、世界が滅んでしまう話と極めてファンタジー的な想像力により紡ぎ出された物語に感じる。
 あのとぼけた宇宙人は確かに魅力的なキャラではあるのだが、コトリ会議=宇宙人の出てくる劇団ではないようだし、そういうイメージが固定化するのは劇団にとってもあまり得策ではない気がする。
 とはいえ、舞台のテイストなら宮崎駿でなく、高畑勲と書いたのは独特の下手うまテイストが魅力だからだ。そして、イメージに余白を残して、観客の想像力に委ねるようにしている。それでいて、いくつかのシーンのイメージは鮮やかに美しい。本人がアフタートークでそこからこの舞台は始まったと語ったが、もう死んでしまった恋人と二人で手をつないで地球最後の日を待つ、ラストのシーンの切なさ、儚さはこの作家の才能と言えよう。