下北沢通信

中西理の下北沢通信

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青年団第79回公演「日本文学盛衰史」@吉祥寺シアター(1回目)

青年団第79回公演「日本文学盛衰史」@吉祥寺シアター(1回目)

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日本文学盛衰史 (講談社文庫)

日本文学盛衰史 (講談社文庫)

原作:高橋源一郎 作・演出:平田オリザ
出演 山内健司 松田弘子 永井秀樹 小林 智 兵藤公美  島田曜蔵  能島瑞穂 大塚 洋 鈴木智香子 田原礼子 大竹 直 村井まどか 山本雅幸 河村竜也 長野 海 堀夏子 村田牧子 木引優子 小瀧万梨子 富田真喜 緑川史絵 佐藤 滋 藤松祥子

文学とは何か、人はなぜ文学を欲するのか、
人には内面というものがあるらしい。そして、それは言葉によって表現ができるものらしい。しかし、私たちは、まだ、その言葉を持っていない。
この舞台は、そのことに気がついてしまった明治の若者たちの蒼い恍惚と苦悩を描く青春群像劇である。高橋源一郎氏の小説『日本文学盛衰史』原作、青年団2年ぶりの新作公演。

原作:『日本文学盛衰史』(講談社文庫刊)

高橋源一郎の長編小説。『群像』に1997年〜2000年にかけて連載。
日本近現代文学の文豪たちの作品や彼らの私生活に素材を取りつつ、ラップ、アダルトビデオ、伝言ダイヤル、BBSの書き込みと「祭」、たまごっち、果ては作者自らの胃カメラ写真までが登場する超絶長編小説。第13回伊藤整文学賞受賞作。

原作者:高橋源一郎

1951年広島県生まれ。小説家、文学者、文芸評論家。明治学院大学教授。
1981年デビュー作、『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作受賞。1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞。2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。2012年『さよならクリストファー・ロビン』により第48回谷崎潤一郎賞を受賞。
著書に『「悪」と戦う』、『恋する原発』、『ぼくらの民主主義なんだぜ』他多数。


舞台化に向けて原作者よりメッセージ
平田オリザさんから、「『日本文学盛衰史』を劇にして上演してもいいですか」と訊かれたときには、ほんとうに驚きました。そして、あの小説がほんとうに劇になるのか、と思い、同時に、あの小説の登場人物たちが舞台の上で生身の人間になって動き、しゃべるところを見てみたい、と強く思ったのでした。
日本人にとって、あるいは、何かを造り出そうとする者にとって、日本語や言葉や表現というものに関心を抱かざるを得ない者にとっての特別な時代、それを描こうとした小説が、舞台の上で生まれ変わる。
その瞬間をいちばん楽しみにしているのは、作者であるわたしかもしれません。

高橋源一郎

出演

山内健司 松田弘子 志賀廣太郎 永井秀樹 小林 智 兵藤公美  島田曜蔵  能島瑞穂 大塚 洋 鈴木智香子 田原礼子 大竹 直 村井まどか 山本雅幸 河村竜也 長野 海 堀 夏子 村田牧子 木引優子 小瀧万梨子 富田真喜 緑川史絵 佐藤 滋 藤松祥子

スタッフ

舞台美術:杉山 至
美術アシスタント:濱崎賢二
照明:井坂 浩 西本 彩
音響:泉田雄太 櫻内憧海
衣裳:正金 彩
舞台監督:小林朝紀 
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:石川景子 太田久美子

撮影協力:momoko japan
タイトルロゴ制作資料協力:公益財団法人日本近代文学館

  平田オリザの2年ぶり*1新作。高橋源一郎の小説「日本文学盛衰史」を原作に明治の文学者たちの群像を自由闊達に描いた異色作だ。
 それまで平田が劇作・演出において自ら禁じ手としてきたこと*2を一挙に試みている。それまでの平田の作風を知るものには驚きを禁じえない部分も多いが、かつて「東京ノート」で披露された「作品として世界を写し取るというのはどういうことなのか」という平田の根源的主題に回帰したという意味ではどこを切っても平田オリザというきわめて平田らしい作品だともいえる。
 ただ、これだけの大作(出演者24人、登場人物はそれ以上)を群像劇として今上演できるのはベテランから若手までこの劇団の俳優たちの充実振りがあればこそだと思う。青年団は来年(2019年)以降、兵庫県豊岡市への本拠地の移転を発表しており、まだ詳細は不明だが、こまばアゴラ劇場や演出部などおそらく、東京に残る機能もあるだろうことを考えると、現体制での集大成的な意味合いもあったのではないかと思われた。
 志賀廣太郎山内健司青年団を代表する俳優たちの存在感はもちろんではあるのだが、今回はそれぞれ男性役も演じ、樋口一葉(小瀧万梨子)をチェルフィッチュで、宮澤賢治(兵藤公美)をラップでなどと、下手をするとただのコントになってしまいかねないようなタスクをアクロバティックにこなしてみせた女優陣の達者さにも舌を巻かされた。
 葬儀の親族として挨拶を行うのが必ず能島瑞穂、来賓挨拶が必ず志賀廣太郎なのだが、2人とも役柄はそれぞれ毎回違うのだけれど、その声が音楽的に感じられるほど素晴らしくて感心させられた。
 明治のヒロイン、中村屋相馬黒光を演じた藤松祥子もまさに「青年団のヒロイン」を感じさせ魅力的だった。 
 演劇からの引用も多い。大竹直と島田曜蔵はある文豪の役*3を演じるのだが、「ゴドーを待ちながら」のウラディミールとエストラゴンのように舞台に居残り続ける。ゴドーとは違い最後の最後に待ち人はやってくるのだが、さらにその先に河村竜也演じる「ある人」*4がやってくる。平田オリザ版メタシアターの極致。
 7月1日「日本文学盛衰史」に出演中の河村竜也、大竹直をゲストに三鷹SCOOLでレクチャー「セミネール」を開催。同日「日本文学盛衰史」昼公演観劇とのはしごも可能です。予約申し込みお願いします。
simokitazawa.hatenablog.com

*1:歌の効用――青年団『ニッポン・サポート・センター』/中西理 – Webマガジン「シアターアーツ」

*2:1、俳優は基本的に1人1役そのひとがそのままそう見える役柄のみを演じる。2、時事問題は取り上げない。3、正面を向いてモノローグなど演劇的な趣向は使わない。

*3:島崎藤村田山花袋

*4:原作の作者の高橋源一郎である