下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校vol.6「グッド・モーニング」@早稲田小劇場どらま館

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校vol.6「グッド・モーニング」@早稲田小劇場どらま館

誰もが惚れ惚れするような「おはよう」を言ってみたくて、私はひとり朝練をしてる。まだ誰もいない駐輪場で、完璧な「おはよう」の特訓。昨夜を光に返してあげるための「お」と、朝霧に溶けて忘れさられる「は」と、チャイムにもかき消されない、あなたにだけ手渡す「よ」と、どこまでも伸びて夕暮れまで残る「う」を言えるように、ひたすら口角筋を鍛え上げていく。お、は、よ、う、お、は、よ、う。遠くから誰かのペダルを漕ぐ音が聞こえてくる。いよいよ本番だ。開口一番、私は青春史上最高の挨拶を決めて、きっとあなたは一目惚れをする。


脚本・演出|三浦直之

出演| 望月綾乃(ロロ)  大場みな

ロロが高校生に捧げるシリーズ いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校シリーズ(いつ高シリーズ)は第三高等学校という架空の学校を舞台設定にした連作演劇で、このシリーズは上演時間1時間以内、出演者が自ら10分間で舞台装置を組み上げるなど高校演劇の大会ルールに準じた舞台作品となっている。もうひとつの特徴は出演する俳優が演じる役柄以外に必ず別の人物が作品中で言及されることで、その言及された人物がシリーズの別の作品に今度は俳優が演じる役として登場することで、そうしたつながりによって1編1編は独立した作品であるとともには「 いつ高」サーガというより大きな世界観の一部ともなっている。
 そうした理由からそれまで登場しなかった人物が言及されたり、登場したりすることもあるのだが、今回のvol.6「グッド・モーニング」には深夜の教室で起こった出来事が描かれたvol.2の「校舎、ナイトクルージング」に登場した学校の音を盗聴し夜になるとそれを聞きにやってくる不登校の少女<逆>おとめ(望月綾乃)とvol.などに出てくる白子(大場みなみ)が登場。ダンスを踊る音を<逆>おとめが聞いて密かに思いを寄せている相手として「シューマイ」のことが語られる。
ロロの三浦直之の得意なモチーフといえばボーイ・ミーツ・ガール、つまりさまざまな形での恋愛の諸相なわけだが、実は「いつ高」シリーズの前回作vol.5「いつだって窓際でぼくたち」は4人の男の子たちのボーイ・ミーツ・ボーイの物語だった。実はその舞台には4人の登場人物のひとりとして「いつだって窓際であたしたち」以来ひさしぶりに「シューマイ君」が出ていて、私としては小太りで引っ込み思案なこのキャラを偏愛していたのですごく嬉しかったのだが、今回は<逆>おとめが彼の容姿は知らないのに小沢健二の歌に合わせて踊る足音から片思いじみた感情を抱いていることが分かって、嬉しくなった。
 さらにせつなくなったのは「いつだって窓際であたしたち」の冒頭部分では白子がシューマイの席に座ってうつぶせになって寝ていて、それに内気なシューマイが声をかけられないというところから始まる。女の子と話すのが苦手なタイプのシューマイが珍しく会話を交わせるのが、白子なわけで「いつだって窓際であたしたち」では初対面だからそうでもないけど何となく、白子のことを意識し始めている感じなのだった。それで白子の方がどうかというとそれは描かれていないから何ともいえないけれどシューマイのことを意識しているとは思えない。この作品では私はどうしてもシューマイに肩入れしがちなためにそんな風に考えてしまうのだが、それそれが自分のお気に入りのキャラに思い入れをしていろんなことを想像できる余地があるのもこの作品の魅力なんだと思う。