下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

オフィス上の空プロデュース 悪い芝居vol.20.5『アイスとけるとヤバイ』@築地本願寺ブッディストホール

オフィス上の空プロデュース 悪い芝居vol.20.5『アイスとけるとヤバイ』@築地本願寺ブッディストホール

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作・演出 山崎彬 音楽 岡田太郎

出演
中西柚貴 潮みか 植田順平 長南洸生 東直輝 佐藤かりん 北岸淳生 畑中華香 山崎彬(以上、悪い芝居)清水みさと(オーストラマコンドー) 岩井七世 鶴田まこ ほか

築地本願寺ブディストホール
2018年8月8日(水)〜12日(日)

悪い芝居の山崎彬の特徴は作品ごとに舞台の印象がコロコロ変わることだ。そのため作風を一口で説明することが難しい。それでも「らしい」作品はいくつかあって、最近は前作の「」暴力的な犯罪の被害者などエキセントリックな登場人物のトラウマなどをモチーフとする重めの作品が多かったが、今回の「アイスとけるとヤバイ」は一変してポップかつナンセンスかつキッチュな「笑える演劇」だった。
 作風が作品ごとに違うということを説明しようとときにナイロン100℃のケラのことが脳裏に浮かんだ。冒頭の劇中劇や植田順平演じる人物が直接客席に語りかけることで舞台が進行するというメタシアター的な仕掛け、タイムトラベルとコールドスリープというSF的設定で、より強くそう感じるということがあるのだとしても、関西弁を多用した関西版ナイロン100℃とでもいいたくなるような作品となっていたのではないか。
○○に似ているなどという言い方は褒めていることにならない*1のであまり言わない方がいいのだろうが、悪い芝居を見ると真似をしたとかそういうレベルではないところで90年代に登場してきたナイロン100℃大人計画が持っていたエンタメ性と実験性をいずれも備えていた劇団の魅力と同質のものを感じるのだ。ところでこの両者には猫ニャーやブルドッキングヘッドロック、劇団本谷有希子など後継と目させる劇団もいた(いる)が、そうした劇団とは全然似ていないということを考えれば独自性は大いにあるのかもしれない。
似ているということで言えばこの作品などを考えた時に作品のタッチ自体が似ているというわけではないが山崎彬自身が影響を受けた劇団としてデス電所のことを挙げていて、そういえばデス電所もその活動の全盛期(~2012年)において作演出を務める竹内佑と音楽を提供した和田俊輔の共同制作のような部分があって、悪い芝居もオリジナル音楽を提供する岡田太郎(出演もする)のコンビが前述の竹内・和田コンビと重なるような部分がある。デス電所の場合、和田俊輔の退団後も劇団は継続したがそれまでの勢いを失ったような側面が否定できない。和田の退団の理由はは外の仕事が増えてきたこともあるから、岡田太郎の場合も最近売れっ子になりつつあるから、今後どのように活動のバランスをとって山崎・岡田コンビが活動を継続していけるかが、悪い芝居の今後を占う大きな要因になっていくかもしれない。
そうは言いながら山崎の作家としての本線は漫画に例えるなら「アオイホノオ」というか、もっと暴力的で破天荒な連中が目茶苦茶をするようなストーリーラインにあるのだと思う。これだって随分無茶苦茶じゃないと思う人もいるかもしれないが、表題の「アイスとけるとヤバイ」からも感じられるのはやはり夏の夜をすごしやすくするポップで軽やかな笑いの側面が強い。

*1:二番煎じ的な意味合いで受け取ってしまう