下北沢通信

中西理の下北沢通信

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堂々としたブスはほぼ美人『1/f』@三鷹SCOOL

堂々としたブスはほぼ美人『1/f』@三鷹SCOOL

作 小川敦子
演出/出演
宇都有里紗、中島真央(Gliese832c/根がポジティブ)、渕上夏帆、小山智之(タタミグループ)、小川敦子

日程

11/16(金)20時
11/17(土)15時/19時
11/18(日)15時

チケット代金

予約2500円、当日2800円

 女優、小川敦子の個人プロデュースユニットの旗揚げ公演。参加俳優がそれぞれのアイデアを持ち寄っての共同製作かと思っていたが、どうやらそれは私の勘違い。テキスト自体はひと繋がりの物語があるというのではなく、断片的だが、作品中のセリフの全ては小川敦子のもの。未確認だが、それぞれのセリフを誰が発話するのかについても指定があったのではないかと思われるが、演出のクレジットが俳優それぞれになっているという時点でそれをどのように演技するのかについては自由な裁量は俳優側に委ねられているように感じられた。
 実は客席に山縣太一の姿があり、翌日のアフタートークに彼が呼ばれていること。俳優のセリフ回しや身体所作の一部に山縣を連想させるところがあることから、小川に聞いてみるとかつて山縣のワークショップに参加したこともあり、それに触発されてこの企画を発足させたということらしい。
 この舞台からは特定の物語を含む言語テキストをもとに演出家が作品を構築していくという通常の舞台から感じるテイストとは明らかに違うものを感じる。ここから何か新しいものが出てくるかもしれないという意味では興味深いが、今回披露されたものが舞台として高い評価できるのかと問われると今のところはまだ習作の域を脱してはいないのではないかという風にも感じた。この作品は山縣が手掛けたものではないけれど、山縣がこのところ頻りに論じている舞台における俳優の自立というような考え方の中から生まれてきたひとつの試行であることは間違いない。次回公演がもしあるのであればそれもぜひ見てみたいと思った。