下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフト W バニラリッチソリッド』@シアタートラム

チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフト W バニラリッチソリッド』@シアタートラム

2014 年の初演以降、世界 13 カ国 22 都市を巡った『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』。この度、本作がタイトルも新たに『スーパープレミアムソフト W バ ニラリッチソリッド』として戻ってきます ! 現代社会の聖地コンビ ニで次々に起こる取るに足らない出来事を舞台とした本作は、全編に流れるバッハの平均律クラヴィーア曲集第 1 巻にあわせ て、ユーモアと風刺にあふれる視点で現代人の価値観の移り変わりや、鬱屈、押し寄せる分断の時代を描き出し各地で賞賛され、 NHKBS プレミアムでの放映も大きな話題を呼びました。 初演から 4 年を経て再創作される今作は、テキストはそのままに、新たなバージョンアップの要素としてこれまで 以上にばかばかしいほどに動きの過剰さを加速させ、ほとんどダンス作品のような様相に昇華していきます。テキストに対して、 身体とその動きを極端なまでに凌駕させるという方法によって、止まることのないコンビニの過剰さ、空虚さがあらわになり、 そこに浮かび上がるのはまぎれもなく「いま」の私たちのすがたに違いありません。 ますますスピードを増して分断する現代社会の本質を射抜く今作に、どうぞご期待ください。

【演出家ステートメント
2014 年に初演したコンビニエンスストアについての空虚な演劇を演出しなおします。 ソリッドなバージョンにします。 シュッとした空虚さ。音楽、身体の動き、発されるせりふ。それらが緊張したり弛緩したりする関係。スタイリッシュなバージョンにします。 それによって上演の空間が主題で満たされてしまうようなスタイルで上演します。
岡田利規

作・演出:岡田利規
出演:足立智充、鷲尾英彰、渕野修平、太田信吾、川﨑麻里子、吉田庸、椎橋綾那

【会場】
シアタートラム
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-1-1
TEL 03-5432-1526 https://setagaya-pt.jp/


 チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフト W バニラリッチソリッド』を観劇。KAATでの初演は見ている。戯曲についてはほぼそのまま上演していると思われるが、演技の身体所作の印象がかなり違ったので驚かされた。今回の舞台は俳優が語るモノローグのセリフと上演の間流れ続けるバッハの音楽(平均律クラヴィーア曲集第一巻全48楽章)がほぼシンクロしていて、音楽とセリフ、身体所作の関係性が非常に濃密であり、印象としては音楽と身体所作の連動率の高さからかなり「ダンスのような」表現に感じた。
 「三月の5日間」では山縣太一、松村翔子ら初演キャストの印象が強すぎたことと、再演を何度も繰り返して見たことで、それぞれのキャラクターのイメージが過去上演で演じた俳優と結びついたために現前の上演自体を虚心坦懐に見るということは難しかったが、この『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ」(2014年)は物語的エピソードはかなり詳細に記憶していたものの、俳優それぞれの演技の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
 そのこともあり、今回のキャストでの「ソリッド」版は出演俳優の演技により立ち上がってくるイメージがそれぞれ個性的で強い印象に残るものであったといえそうだ。

三月の5日間(2004年2月13日-15日、天王洲スフィアメックス)
クーラー(2004年、新宿パークタワーホール)
労苦の終わり(2004年11月3日-7日、横浜STスポット)
ポスト*労苦の終わり(2005年3月)
目的地(2005年11月、こまばアゴラ劇場
体と関係のない時間(2006年9月22日-24日、京都芸術センターフリースペース)
エンジョイ(2006年12月、新国立劇場
フリータイム(2008年3月、六本木Super Deluxe)
ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶(初演2009年)
わたしたちは無傷な別人である(初演2010年、愛知芸術文化センター/あいちトリエンナーレ2010)
ゾウガメのソニックライフ(初演2011年)
現在地(初演2012年)
地面と床(初演2013年)
スーパープレミアムソフトWバニラリッチ(2014年、KAAT神奈川芸術劇場
部屋に流れる時間の旅(初演2016年)