下北沢通信

中西理の下北沢通信

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「JAPAN JAM2019」参戦記 ももクロライブレポート

「JAPAN JAM2019」参戦記 ももクロライブレポート


野外フェスに3万8000人が熱狂 JAPAN JAM 2019 開幕

JAPAN JAM 2019
SKY STAGE 05/04(土)14:15〜
ももいろクローバー
セットリスト
M1 あんた飛ばしすぎ!!
M2 Chai Maxx
M3 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
M4 The Diamond Four
M5 ココ☆ナツ
M6 全力少女
M7 DNA狂詩曲

この日も昨年一昨年のロッキン(ロック・イン・ジャパン)同様にDMB(ダウンタウンももクロバンドがロックフェスティバルに降臨。今回はドラムに柏倉隆史、ベースに日向秀和に加え、ギターには元JUDY AND MARYのTakuyaまで引き連れる最強の布陣。昨年のロッキンでもそうであったが、ダウンタウンももクロバンドを帯同したももクロはいまや最高の戦闘能力。少し大げさな表現に聞こえることも覚悟してあえて言うが、本人たちの登場する前からバンドメンバーがサウンドチェックという名前の超絶ソロ演奏を披露。観客であるモノノフ(ももクロファンの総称)からは「DMB」コールが起こる盛り上がりようで、ウォーミングアップ代わりにバンドがインストで「サラバ、愛しき悲しみたちよ」を演奏するとももクロ本人もいないのにファンがさっそくメンバーコールでこれに呼応し、「ももクロってどんな感じなんだろう」と集まってきたロックファンの度肝を抜く前振り。
 しかもこの日はOvertureから登場した百田夏菜子が「ちょっとあんた誰見にきてんのよ?ここに来たってことは分かってる?アイドル地獄に生き埋めにしてあげる」との煽りを見せるや1曲目から激しい曲想のロックチューン「あんた飛ばしすぎ!!」を披露。スタートダッシュでいきなり場内は興奮状態に突入。この勢いは「 Chai Maxx」「行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-」とつながれ「ここだけ次元が違う」の声も聞かれるなどロックフェスはももクロの蹂躙状態となった。
 昨年一昨年のロッキンでも感じたことだが、この種の戦闘モードに入ったときのももクロの破壊力は凄まじい。日本を代表するロックフェスだけあって、この日はもちろんももクロ以外にも優れたパフォーマンスや観客を巻き込んでの盛り上がりを見せるアーティストはほかにもおり、それぞれさすがの実力を感じさせてもらったしおおいに楽しんだ。それでも自分たちのファンだけでなく、周辺の観客も巻き込んでの盛り上がりぶりはこの日一番だったかもしれない。
 この日のももクロのパフォーマンスのもうひとつの売りは近く発売予定の新アルバム「MOMOIRO CLOVERZ」のリード曲である「The Diamond Four」がすでにMVは公開されていたもののライブでは初披露となったことだ。最近は以前のヒャダインに代わりももクロのメイン作家となった感の強いinvisible mannersの提供曲で、生で歌いこなすのには相当の技量が要求される難曲と思われたが、4人はこれを当たり前のように簡単に(見えるように)こなしており、ここ数年、特に4人になって以降のレベルアップを感じさせる内容となった。

【Momoclo MV】ももいろクローバーZ(MOMOIRO CLOVER Z)『The Diamond Four』MUSIC VIDEO
「The Diamond Four」は前日に振りをつけたばかりと言いながらもパフォーマンスとしてはすでに完成されていて、新曲披露の時には毎回不安定でファンを心配させていた昔のももクロとの違い、大人の集団としての成熟をはっきりと感じさせた。
  実はこの日はももクロの前にLittle Glee Monsterのライブがあったので見ていて、彼女らの歌の上手さには舌を巻かされた部分はあったが、確かに彼女らが日本の女性ボーカルグループの技術面での最高峰にあるのは認めても、グループでの歌唱とパフォーマンスの総合的な力ではももクロは決して劣っていない。ももクロは確かにそのコーラスで「ジュピター」のようなメロディーを奏でることはできないけれど、「あんた飛ばしすぎ!!」のようなテイストの歌唱はリトグリにはできないし、それでも「下手だ」というならば、ミック・ジャガーは歌が下手だとけなすようなもので、ほとんど無意味なことにしかならないと思われたのである。
 この日の後半はまずはももクロ夏ライブのスーパーウエポンである「ココ☆ナツ」から始まったが、オールスタンディングの野外フェスではかならず皆が「ココココ」という歌詞に合わせて、ニワトリの頭が前後に揺れるような振りをしながら円状になり、ぐるぐると回るココ☆ナツサークルが会場のあちこちで複数できる。これは大規模会場の野外でもブロック分けがされるももクロの単独ライブではほとんどないのが現況であり、ロッキンや氣志團万博などの大規模野外フェスのみで推奨はされないが、自然発生的に起こるのは仕方ないと許容されている贅沢ともいえ、この日もまるで熱帯地域における台風の発生のように群衆でいっぱいになった会場のそこここに渦巻き状のサークルが発生。ほかのバンドで出来るサークルモッシュの円は覚悟なしに巻き込まれるとかなり危険だが、このサークルは女性や子供たちも和気藹々と参加でき、フェスファンの間でも風物詩として認知されつつあるのではないか。
 「ココ☆ナツ」の後は「全力少女」「DNA狂詩曲」と2曲連続でパフォーマンスを行いラストスパート。ファン投票で人気ナンバー1となった実績もある「DNA狂詩曲」はともかく、少し懐かしさのある「全力少女」はなぜセットリストに入ったのかとの疑問は現地では感じていたのだが、この日は5月4日(みどりの日)であり、「全力少女」の歌詞に「こどもの日も みどりの日もキミに 会いたい
多すぎるって 五月の祝日」というくだりがあるので十連休の今年にちなんでここに合わせて持ってきたんだということが後に分かったが、実はこういう遊び心もももクロの楽しさなのである。

BiSHセットリスト

NON TiE-UP
遂に死
GiANT KiLLERS
BiSH-星が瞬く夜に-
本当本気
stereo future
MONSTERS
ファーストキッチンライフ
beautifulさ

 ももクロの終了後は間髪入れずSKY STAGE隣のSTAGEでBiSHのパフォーマンスがスタートするために急いで移動。BiSHの楽曲は比較的新しい楽曲と思われる「NON TiE-UP」「遂に死」からとなった。

BiSH / NON TiE-UP [BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL "THE NUDE"]@幕張メッセ9.10.11ホール

BiSH / STiCKS [全曲試聴MOViE]
 この2曲はあまり知らない曲だったのだが、私が代表曲と思っていた「オーケストラ」「プロミス・ザ・スター」などはあえてやらず、3曲目の「GiANT KiLLERS」も含め、リンリンのデスボイスが入ったこれらの曲をあえてセットリストに入れているのは「楽器を持たないパンクバンド」というのを強調しようというロックフェスティバルを意識しての布陣であろうか、と感じた。 
 実は黒フェスでは見ているけれども、BiSHの単独ライブを見たのは2017年7月の幕張*1が最後で、最近はあまりフォローができていなかった。BiSHの最大の強みはタイプの違う2人のスーパーボーカリスト(アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ)を擁することだと以前書いた記憶があるが、今回驚かされたのは以前は「かわいい」担当の認識しかなかったアユニ・Dの成長である。ところどころは入ってくるボーカルに一瞬「これだれ」と思う時もあって、メンバーとしても一番若いだけに一層の伸びしろが期待できそう。ハシヤスメ・アツコも以前と比べてしっかりと強い声が出るようになっており、アイドル的要素を体現しているモモコグミカンパニー、デスボイスのリンリンを含め6人の総合力は2年前よりははっきり底上げされていると感じた。
 とはいえ、こうしたロックフェスではコンセプト的な難しさも感じた。ももクロと違いBiSHはバンドを帯同していなかったが、普段は音源で活動しているアイドル系グループもロッキンなどでは主催者側の用意した演奏者が伴奏に入ることも多い。BiSHも以前はバンドを擁してのライブハウスツアーなどの経験もあるから、バンドと一緒にパフォーマンスをしてもおかしくはないはずだが、それをここでしないのは予算的なものもないではないかもしれないけれどやはりキャッチフレーズの「楽器を持たないパンクバンド」というのが関係しているのかもしれないと思った。つまり、本人が楽器演奏しなくても「楽器を持たない」というコンセプトは薄れてしまいかねないというジレンマも出てくるからだ。
 ただ、以前ZEPPTOKYOでバンドの入ったパフォーマンスを見た時の印象からいえばBiSHの中心メンバーの歌唱スタイルや音楽性から言えば例えばBABYMETALのようにバンドと組んだ時の方が演奏者との相互作用でパフォーマンスの質は上がるだろうし、ももクロ西武ドームのライブで初めて本格的なバンドを入れたように次のステップに進むにはバンドと一緒にやった方がいいのではないかと思ってしまった。ももクロと比較すると大抵のアイドルグループはその熱量が届く範囲が狭いのだけれど、BiSHの今回のパフォーマンスに関していえばバンドの生演奏のあるなしの差がかなり大きかった気がした。

Little Glee Monsterセットリスト
放課後ハイファイブ
好きだ。
君に届くまで
だから、ひとりじゃない
OVER
SAY!!!
世界はあなたに笑いかけている
Jupiter