下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

オフィスコットーネ 改訂版「埒もなく 汚れなく」 @シアター711

フィスコットーネ 改訂版「埒もなく 汚れなく」 @シアター711

改訂版「埒もなく汚れなく」は2016年の読売演劇大賞上半期 作品賞・演出家賞・男優賞にノミネートされた作品を大幅に改訂して上演!

2009年、不慮の事故により48歳という若さで世を去った劇作家・大竹野正典さん。家族を持ち、会社勤めをしながら、意欲的な作品を創り続けました。亡くなるまでに大竹野正典さんは多くの優れた戯曲を遺しています。中でも最高傑作と評される最後の作品『山の声』(第16回OMS戯曲賞大賞)は、彼自身の思いがもっとも色濃く投影されている戯曲です。

本作、改訂版 『埒もなく汚れなく』では、この作品に至るまでの大竹野正典さんの軌跡を追いながら、演劇に憑かれた劇作家・大竹野正典と山に憑かれた登山家・加藤文太郎の重なる生き様を、瀬戸山美咲ならではの斬新な切り口で描きます。また、同時期に『山の声』の初演バージョンを上演致します2作品合わせてお楽しみ下さい!


CAST

西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
占部房子
柿丸美智恵
緒方 晋(The Stone Age)
福本伸一(ラッパ屋)
橋爪未萠里(劇団赤鬼)
照井健仁

「埒もなく汚れなく」は2009年、不慮の事故により48歳という若さで世を去った劇作家・大竹野正典の評伝劇である。改訂版ということだが、初演とはかなり趣きが変わり、大竹野がくじら企画の後半劇作が壁にぶつかり、それと呼応するように登山にのめり込んでいく様子、妻との葛藤、そしてその中から代表作となった「山の声」が生まれてくるまでにより一層焦点を絞りこんで描き出している。
 大竹野夫妻を演じる二人の俳優(西尾友樹、占部房子)の役作りにも一層深みがまして、ルックスが酷似してるということはないのに二人の背後から実際の二人の姿が浮かび上がってきた。
 作品自体の出来映えとは直接は関係ないのかもしれないのだが、生前の本人を知っているだけに最後の場面は万感の思いが込み上げてきて涙なくしては見られなかった。そしてそこに至る流れをよりスムーズに形作ってきたのは初演では本人を知る人間にとっては若干の違和感がなくもなかった広瀬泰弘、小堀純の姿がより説得力を持って造形されていたことだ。特に広瀬は以前関西で発行されていた演劇情報誌Jamciにともに劇評を執筆していた同志でもあり、高校教諭という本業を持ちながらも現在まで演劇評論の活動を続けている人物。本作にもあるように大竹野の高校時代からの親友でもあり、今回公演の当日パンフレットにも大竹野への思いがこもった一文を寄せてきている。劇中の広瀬(福本伸一)が大竹野の妻に大竹野作品について滔々と語る場面があり、ここが終盤の非常に印象的な場面となっている。作者の瀬戸山美咲によれば「参考にした文章はあるがあくまで作家としての創作」だというが、ここで話されていることは圧倒的に正しいと思うし、何より広瀬が言いそうなことなのである。その意味でこの作品は優れた大竹野正典論にもなっている。
 今回は伊丹アイホールでの上演も予定されており、初演は見ていない広瀬がどのような感想を抱くのかが楽しみだ。他にも関西には生前の大竹野を知る人たちが多数おり、そういう人にもぜひ見てもらいたい舞台となった。