下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

第10回せんがわ劇場 演劇コンクール(1日目)=キュイ・世界劇団・イチニノ

第10回せんがわ劇場 演劇コンクール(1日目)

【公演スケジュール】
7月13日(土)【1日目】
13:30~14:10 キュイ(東京) 『蹂躙を蹂躙』

作:綾門 優季青年団/キュイ)
演出:得地 弘基(お布団/東京デスロック)

出演者
中田麦平(シンクロ少女)
新田佑梨(青年団
原田つむぎ(東京デスロック)

スタッフ
照明:井坂浩(青年団
音響:櫻内憧海(お布団/青年団
演出助手:穐山奈未(青年団
あらすじ
人通りの少ない道沿いの家から見知らぬ男が出て来る。様子がおかしく、言葉も不自然である。その男にはじめに話しかけた通行人は、思いきり殴られ、卒倒する。男は強く、立ち向かう者たちは全員殴られ、卒倒する。男はやがて森に入っていく。懸命に探すが、見つかる気配はない。不穏な数日間が経過した後、男は突然現れる。
15:00~15:40 世界劇団(愛媛) 『紅の魚群、海雲の風よ吹け』

作・演出:本坊 由華子

出演者
赤澤里瑛
兵頭美咲
本坊由華子
片渕高史(ハコベラ)
品部大和(星屑ロケッターズ)

スタッフ
ドラマトゥルク:髙山力造
振り付け:本坊由華子、品部大和(星屑ロケッターズ)
舞台監督:高橋克司
照明:金野俊之
音響:高橋克司
舞台美術:金野俊之
衣装:世界劇団、渡邉沙織(情熱'ダイヤモンド)
あらすじ
少女は布団にもぐった。
目を開くと、そこには紅の海が広がっていた…。
2015年に創作した野外劇「紅の魚群、目劇の地図を観ろ」をリクリエーションする。
人間の根源、社会の構造、医学の不条理を描く。
音と言葉と身体で嵐を巻き起こそう。
嵐は海を駆け抜けて、雲を晴らしてくれるだろう。

16:30~17:10 イチニノ (茨城) 『なかなおり/やりなおし』


作・演出:前島 宏一郎

出演者
梅木彩羽(イチニノ)
大図愛(オープンロード)
森裕嗣

スタッフ
照明:赤城治利(A工房)
音響:戸室健太郎
あらすじ
車はそらをとんだ。宇宙人は現れた。ひともそらをとんだ。そんな「未来」を描いた幼い頃。…現実はそんなことはないけれど。「100年後の未来のために」とか、このクソつまんない中途半端な田舎に執着した母も、よくわかんないけど。そんな私が、ちょっとだけそらをとんだときのはなし。


7月14日(日)【2日目】
13:30~14:10 劇団速度
15:00~15:40 ルサンチカ
16:30~17:10 公社流体力学
受付は各回開演30分前/開場は各回開演15分前

18:30~20:00 表彰式
入場整理券は当日配布のみ

 かつて新鋭劇団(ダンスカンパニー)の発掘企画としてリクルートが主催するガーディアンガーデン演劇フェスティバル*1というのがあった。開催場所であったフジタヴァンテがなくなってしまうなど企業メセナ退潮の波にのみこまれるようになくなってしまったが、チェルフィッチュニブロール、東京デスロック、イデビアン・クルーヨーロッパ企画、庭劇団ぺニノ、 ゴキブリコンビナート 、ロリータ男爵、珍しいキノコ舞踊団、猫ニャー……と並べてみるとすでに解散してしまった集団もあるのだが、その時期いかに大きな役割を果たしていたかが分かるのではないか。
 実はこんなことを書いたのは以前から評価してきたキュイ(綾門優季)がノミネートに入ったことで、興味を持ち今回初めて全ての集団の作品を見ることにしたこともあり、「せんがわ劇場 演劇コンクール」が毎年開催されていたガーディアンガーデン演劇フェスティバルを思い起こさせるものとなったからだ。
 「せんがわ劇場 演劇コンクール」については以前からそういう名前のコンクールがやられているという情報は得ていたものの、これまで個別の参加劇団に興味があり、その上演を見に来たことはあったが、正直コンクールとそれに参加している劇団にはそれほど興味を持っていなかったのも確かだった。
 今回このコンクールに興味を持ち、見に来ることを決めたのは青年団演出部の綾門優季によるキュイが参加するというのを耳にしたからだった。このコンクールはグランプリを受賞した劇団が次年度にせんがわ劇場で1週間の公演を行うことができる権利が手に入る。これは今回も京都に本拠を置く劇団が2劇団ノミネートされたように地方に拠点を置く劇団にとっては魅力的ではあるが、普段はこまばアゴラ劇場やアトリエ春風舎など青年団関係の施設をホームグラウンドとしているキュイにとってはそれほど魅力のある条件とも思えず、過去に参加した劇団の名前を見ても、現段階でキュイが参加することが意味あるコンクールなのかとの疑問もなくもなかった。
 それでは実際の上演はどうだったのか。正直言って今回キュイが上演した「蹂躙を蹂躙」は普段から分かりやすい作品を提供することはしないキュイの作品の中でも難解な演出(演出は得地弘基)。エンタメ色を極限まで削り落としたような内容は観劇直後、「うーん」と考え込ませるようなものだった。参加劇団のラインナップを見て、キュイ以外にないでしょと思っていただけにもどかしい思いがした。さらにいえば客席を覆う空気が最近の若手劇団がよくまとうような舞台に対する違和感に満ち満ちていたことも上演の印象に影響を与えたかもしれない*2
もっとも、厳しいもの言いにはなってしまうが、それでもキュイの作品には現代演劇として評価できるところが数多くあったのに対して、世界劇団(愛媛) とイチニノ (茨城)は現代演劇として評価できる部分がほとんどなかった。地方の劇団には時折あることだが、なぜ青年団チェルフィッチュを経過したこの時代にこんな古風なスタイルの演劇をやっているのかという疑問しかわかなかったのである。
 

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:少なくとも私の体感では観客席の半分以上が置き去りにされた感を抱き、まったく理解できなかったという空気感を漂わせていた