下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンスなど様々な文化的事象を批評するサイト。

勅使川原三郎振付 カラス・アパラタス 6周年記念アップデイトダンスNo.65「ロスト イン ダンス」@荻窪アパラタス

勅使川原三郎振付 カラス・アパラタス 6周年記念アップデイトダンスNo.65「ロスト イン ダンス」@荻窪アパラタス



芸劇dance 勅使川原三郎 新作ダンス公演「月に憑かれたピエロ」「ロスト・イン・ダンス-抒情組曲-」

「ロスト イン ダンス」
あなたは今、もうすでにここにいないのだよ
あなたなまだ気づいていない、でも
存在していないにもかかわらず、あなたは踊りつづける
永遠に生き延びてしまう恐怖をあなたは予感する
勅使川原三郎

〈公演概要〉
アップデイトダンス No.65「ロスト イン ダンス」

演出・照明 勅使川原三郎
出演 佐東利穂子 勅使川原三郎

【日時】
8月5日(月)20:00
8月6日(火)20:00
8月7日(水)20:00
8月8日(木)20:00
8月9日(金)休演日
8月10日(土)16:00
8月11日(日)16:00
8月12日(月)20:00
8月13日(火)20:00
*受付開始は30分前、客席開場は10分前

 東京芸術劇場で初演したものの再演という位置づけにはなっているようなのだが、使用音楽を差し替えており、事実上の新作といってもいいのではないかと私には思われた。ベートーベンのピアノ曲に合わせて、緩やかでかつ優雅な勅使川原三郎の動きでスタート。曲演奏の切れ目で佐東利穂子と入れ替わる。以下、同じような進行が続くが、曲目が替わるたびに次第に激しい演奏に合わせてような激しい動きになっていき、テンペストの所で佐東が爆発的に激しい旋回系の動きを見せる。 
 後半部分になると勅使川原と佐東が今度は曲の途中で入れ替わる前に相手が羽織っていたコートのようなものに横から手を突っ込み、上着を何度も受け渡すような場面が繰り返された。このダンス作品は個々の振りの動きなどに意味を込めたようなものではないとは思うが、この部分だけはここで受け渡される上着は「勅使川原三郎のダンス」の象徴なのかなと思えてきた。
 偶然の一致と聞かれれば本人は言うだろうが、ちょうどこの日会場入り口で手渡されたフライヤーの中に東京バレエ団の公演のものがあり、勅使川原の新作がトリプルビルとして披露されるという告知があった。他の2本がバランシンとベジャールの作品でバレエの世界では振付家の新作が定評のある過去の作品として上演されることはそれほど珍しいことではないけれど、これまで日本のバレエ団があまり上演されていない勅使川原作品が上演されることは歴史的意義があることではあるし、この作品のテーマであるダンスは死なないと呼応するような部分があるのではないかと思ってしまった。
 事実、特に欧州ではこの作品と前作「幻想即興曲」の上演がすでに決まっており、特に後者はオーケストラとの共演作となる予定で、勅使川原作品がすでに現代の古典的な扱われ方をされてきているのも確かだ。
 勅使川原自身はその精力的な創作活動を見ても元気そのものだが、それでも公演後の挨拶で「この作品は佐東利穂子に捧げる」と明言したのはダンスで次世代に受け渡していくものという思いが最近彼の脳裏にいつもあるからではないかと思う。