下北沢通信

中西理の下北沢通信

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あうんの会「海につくまで」@こまばアゴラ劇場

あうんの会「海につくまで」@こまばアゴラ劇場

作・演出:関戸哲也(空宙空地)


売れない中年芸人「エンジェルブラザーズ」のアニキとアキラ。実はこの二人、かつてはヤクザ稼業。
対立する組を襲撃する際、間違って自分たちの若頭を傷つけてしまい、芸人をしながら逃げている。
二人の行き先は「沖縄」。
道中では様々な人々が登場、そして様々なエピソードが繰り広げられる。
西へ西へ、そして、南へ南へ。沖縄の海で彼らが見ようとしたものとは・・・。
坂口修一・小菅紘史のたった二人でお送りするノンストップ・ロード演劇。

三重県津市の民間劇場・津あけぼの座がプロデュースする少人数ユニット。形態毎にメンバーを変えて活動、津あけぼの座を拠点に作品を製作、各地で上演を行う。坂口・小菅コンビで第1作「海につくまで」を2018年・2019年に上演、第2作「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(作・演出:弦巻啓太【弦巻楽団】)を2019年に上演。

出演

坂口修一 小菅紘史(第七劇場)

スタッフ

音響:大久保樹
照明:加藤直子(DASH COMPANY)
舞台監督:山中秀一
舞台監督補佐 西内捺美
写真撮影:松原豊(Office365番地)
宣伝美術:橋本純司(橋本デザイン室)
制作:油田晃(特定非営利活動法人パフォーミングアーツネットワークみえ

 坂口修一、小菅紘史(第七劇場)という二人の男優による軽妙なロードムービー的な演劇。さまざまな役柄を次から次へと演じわけていく手法には惑星ピスタチオ西田シャトナー)が生み出したスイッチプレイを思わせるようなところがあるが、西田シャトナーのそれのように独自性の高い世界観の実現のためにそれが駆使されるわけではないので、坂口らの役者としての技芸の巧みさに感心はさせられても、どうしても演劇としての満足度は薄いと感じてしまう。
 ほぼないものねだりというのは自分でも分かってはいるのだが、物語や登場人物の突飛な設定には西田シャトナー後藤ひろひととの共通項を感じてしまうのだが、残念ながらこの作品にはスラップスティックにしていこうと試みてはいるものの最後は沖縄の海の場面で回収しようという作者の狙いが透けて見えてしまい、後藤や西田の作品が持っていたような根本的なラジカルさ、どこに行くんだか分からないような浮遊感が薄いのだ。もちろん、これは私の勝手な好みでもあって、作者に根本的にそういうものは求めていませんと言われたらそれまでのことだが。少なくとも終盤の「007」のパロディーみたいなところ、前に挙げた2人ならば宇宙人か、怪獣か、忍者かなにかを出していたと思う。