シラカン『蜜をそ削ぐ』@横浜STSPOT
多摩美術大学出身者によって結成された若手劇団で現在は結成3年目。大学の先輩である快快が映像を多用するなどスタイリッシュな作風だったのに比べ、「シラカンにはさらに脱力的、あるいはへなへなな美術や演技のテイストを推し進めたようなところがある」というのが、過去の公演を見ての印象だったのだが、そうした印象は今回の「蜜をそ削ぐ」を見ても依然変わらない。舞台美術を取り上げても途中で天井から吊るされることになる「コドモ」の造形 (美術製作:石橋侑紀)などを見る限りは脱力的、あるいはへなへなな美術は作品全体のテイストと相俟って確信犯としてそうしていることは明らかだ。
ただ変わってきている部分もある。これまで見たシラカンの2本の作品は現代の日本あるいはそう見える世界が舞台で、そこに突然、現実にはありえないような突飛な要素が入りこんでくるというようなタイプの作品だったが、「蜜をそ削ぐ」で描かれているのは明らかに不思議な住民たちが住むムラの出来事。ロールプレイングゲーム(RPG)で出てくる世界観が想起されるような異世界である。
例えば列車、コドモなどには寓話的な意味も読み取ることができそうだが、結局のところ全体としては不条理な印象が強く、どのような意味合いが持たされているのかというのはよく分からない。物語の冒頭部分ではムラに必要な物資などを運んでくる唯一の外とのつながりとなっている列車の所有権(管理権)について村人たちの間に争いが起こっていて、財産権や所有権を巡って、身分の差や政治的な権力が生まれるということの寓話のようにも読み取れるから、現実世界におけるそうした出来事への揶揄なんだろうかと思いながら見ていると、コドモが生まれると主張していた夫婦が、妻の方が明らかに切り株のようなものをおなかに装着していて、それをコドモだと主張する辺りから、そうした現実世界に片足を置いたような揶揄とか批評とかにはどんどん無関係なものになっていく。
むしろ、舞台美術なども演劇としての物語性を取り払えば不思議なイメージの現代美術インスタレーションても受けとることができるようなビジュアルイメージのインパクトがあるように思えた。そこがこの集団の魅力なのかもしれない。
あらすじ
一本の列車が走ってくる場所。 住人は変化もないが不満ない生活を送っている。 ある日夫婦がこどもを授かった。住人は皆新たな命に歓喜する。 それ が穏やかな日々を崩壊させるとも知らずに
キャスト・スタッフ
作・演出:西岳
出演:徳倉マドカ 岩田里都 春木来智 (以上シラカン)
秋場清之(情熱のフラミンゴ)
古賀友樹
櫻井碧夏
俵山峻(スクールゾーン)
原田つむぎ(東京デスロック)
演出助手:桝永啓介(限界集絡)
舞台監督:石橋侑紀
美術:西岳
美術製作:石橋侑紀
小道具:前田和香
照明:齋藤桜子
音響:久野毬乃
音楽:丹野武蔵
衣裳:土田寛也
ドラマターグ:小野晃太朗(シニフィエ)
宣伝美術:加藤玲
ロゴデザイン:有馬華穂
制作:河野遥(ヌトミック)
村田天翔(限界集絡)
芳野広太郎
協力:限界集絡 情熱のフラミンゴ
東京デスロック ヌトミック
冨田コーポレーション プリッシマ
吉本興業株式会社 急な坂スタジオ
other member:青木幸也 中村里佳
企画・制作・主催 シラカン