下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

キリグス 『MOTHER LAND』 @横浜STSPOT

キリグス 『MOTHER LAND』 @横浜STSPOT

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脚本演出:山内 晶(キリグス)

出演:
堀内 萌(キリグス)
富永瑞木(キリグス)
植浦菜保子
小田原直也
高橋義和(FUKAIPRODUCE羽衣)
原田つむぎ(東京デスロック)

スタッフ:
舞台監督 :鐘築 隼
照明:鈴木まゆ
映像:柳生二千翔(女の子には内緒)
音響:櫻内憧海(お布団)
制作:河野遥(ヌトミック)、伊集院もと子
宣伝美術 :篠原 朱

協力:FUKAIPRODUCE羽衣、東京デスロック、女の子には内緒、お布団、青年団、ヌトミック、山内晶母、母友人一同

マザープロフィール:
山内晶の母
昭和33年4月12日練馬区石神井産婦人科で生まれる。
3歳で千代田区麹町に引っ越し同じマンションに住む18代勘三郎当時6歳に追いかけ回される。エスカレーター式の私立の学校に入学する。幼稚園の試験だけで大学まで無事に通う。

キリグス プロフィール:
ロマンかロマンスかロマンチックがそこにある舞台芸術を作るべく、そのとき感銘を受けた文化(口承文学、伝承、クラブミュージック、歌舞伎、人形浄瑠璃、落語、漫画、アニメ、ファンタジー小説、etc)を編み込み、独特の世界を作り出す。
[受賞歴]
『白痴をわらうか』が第17回AAF戯曲賞の特別賞を受賞
『朽ちた蔓延る(くちたはびこる)』が第18回AAF戯曲賞の大賞を受賞

お問い合わせ:
[mail]wearekiligs@gmail.com
[web]http://wearekiligs.com

 山内晶は『白痴をわらうか』が第17回AAF戯曲賞(2018年)の特別賞、『朽ちた蔓延る(くちたはびこる)』が第18回AAF戯曲賞(2019年)の大賞を受賞。青年団演出部所属の気鋭の劇作家・演出家である。その作風には様々な遊戯的な要素を作品に組み込みながら、「舞台を遊ぶ」というようなところがあり、この「MOTHER LAND」でも本人(山内晶)の母親の幼少時から現在までの実人生を素材(モチーフ)とし「生と死」という重い主題を孕みながらも作品そのものはまるで子供がお遊戯で何かを演じているように自由で遊び心に満ちている。
 母親の役が分身的に何人にも振り分けられていて、それをそれぞれ別の俳優が演じる。さらにそのうちの一人にはイマジナリーフレンドがついていて、それを原田つむぎが演じている。
以前、私が試みたインタビューで青年団演出部では先輩格にあたる綾門優季が山内らを称して「柴幸男さんや、岡田(利規)さんは現代口語の方法をさらにこういう形で拡張できるというものだったと思うのですが、蜂巣ももさんとか、この間山内晶さんとかが若手自主企画でやられていたことは青年団の方法論のフォーマットを更新した、みたいなこととはあまり関係のない、でも新しいものになっている。そこに断絶を強く感じます」と指摘していたが、そうした点に私も同感。
 綾門を含む先行世代は手法的に追随するにせよ、反発するにせよデフォルトとしてある現代口語演劇を意識せざるを得なかった部分があるが、おそらく山内にとってはそれも何も特別なものではなく、多様な演劇表現の中の一部にすぎないのではないか。
 ここではさらに実際に父母らから聞き出した過去に実際にあったこととと作者が作り出した虚構である事実は母のもしかしたらこうだったかもという形で並列された人物たちのワン・オブ・ゼムに過ぎず、しかも虚実ない交ぜに展開されていく。


[DOWN TOWNへくり出そう♪.flv