下北沢通信

中西理の下北沢通信

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悪い芝居vol.25『ミー・アット・ザ・ズー』@シアタートラム

悪い芝居vol.25『ミー・アット・ザ・ズー』@シアタートラム

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シアタートラム ネクスト・ジェネレーションvol.12
【作・演出】山崎彬
【音楽】岡田太郎

【出演】
中西柚貴 潮みか 東直輝 畑中華香 植田順平 山崎彬 (以上、悪い芝居)
日比美思 藤原祐規 田中怜子 久保貫太郎

【会場】シアタートラム

【日程】2019年12月
4日(水) 19:00
5日(木) 14:00/19:00
6日(金) 14:00◆/19:00◆
7日(土) 13:00/18:00
8日(日) 13:00

 悪い芝居の山崎彬の新作。岡田太郎率いるバンドが入って全編生演奏で劇伴音楽を担当。劇中に登場するYoutuberの映像をリアルタイムで流す映像や動物園の檻をあしらった美術も秀逸。トータル演出の総合的な完成度の高さには目を見張った。そのクオリティーにおいてメジャーに向けての階段をまた一段上ったのではないかと思った。山崎彬が目標としている作家の一人にケラリーノ・サンドロヴィッチがいると思うが、生演奏、映像の多用と演出の趣向では共通項が多いもののスタイリッシュさでは上回っている部分もあるともいえそう。
 とはいえ、物語の設定自体は相変わらず奇天烈でいかにも山崎彬らしいものだ。動物園を舞台にお笑い芸人コンビとYoutuberを巻き込んで展開される不思議な世界観は魅力的なものだが、物語は伝えても伝わりにくいものでもあって、そこを肯定的にとらえるか、否定的になるかがこの劇団の評価を分ける部分でもあるかもしれない。
 動物園は例えば社会における何かの状況を象徴するメタファー(隠喩)のようにも受けとることができなくもないが、もちろんこの舞台は動物園=社会における檻のような直接的な社会批判を目的として作られてはいない。
 とはいえ、実は正直戯曲の書き込みの問題か説明不足でよく分からない部分もあるのも確かだ。この作品に即していえば植田順平演じる謎の人物がいったい何者であり、何のためにああいうことをしていたのかは作品の最後に至っても判然としない。実はこういう分かりにくさは以前の作品にもあった。ただ、これまでは多少辻褄の合わないところがあってもそれを圧倒的なパワーと勢いで押しきるようなプレースタイルだったためそれほど気にはならなかった。ところが、最近は作品の作りが緻密になり、細かい部分でのさじ加減が以前よりも気になるようになった。
 いずれにせよ角を矯めて牛を殺すようなことがあっては元も子もない。そういう意味では劇作家としてもうワンランク上がるのにはここからが正念場なのかもしれない。
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