下北沢通信

中西理の下北沢通信

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木ノ下歌舞伎 舞踊公演『娘道成寺』@京都芸術劇場 春秋座 特設客席

木ノ下歌舞伎 舞踊公演『娘道成寺』@京都芸術劇場 春秋座 特設客席

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京都造形芸術大学から眺める夕陽
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監修|木ノ下裕一
演出・振付・出演|きたまり[KIKIKIKIKIKI]
長唄|杵屋東成・杵屋勝禄 連中
囃子|望月太明藏 社中

京都芸術劇場 春秋座 特設客席[京都造形芸術大学内]
2019年12月7日[土]・8日[日]

 初演から11年になるきたまりのソロダンス、木ノ下歌舞伎『娘道成寺』。今回は初めて下座音楽の部分を長唄を杵屋東成・杵屋勝禄 連中、囃子を望月太明藏 社中*1という日本のトップクラスの演者による演奏で上演。舞台上の特設舞台とはいえ歌舞伎劇場である春秋座で上演したのを目の当たりにできたということは私にとっても感動的なことであった。もちろん、ダンス、演奏ともに見ごたえ、聴きごたえたっぷりの素晴らしいものであった。
 きたまりが素晴らしい。身体は小さいが舞台では等身大を超えた人間以上の存在に見える。きたは舞踏出身ではあるけれども、この表現はもはや通常の舞踏のメソッドに縛られない自由さがある。日本舞踊の原振付に触発されて引用している部分もあるが、そこからも基本的には自由であり、唯一無碍の境地に近づきつつある。終盤では蛇体の睨みを思わせる目つきも見せるが、これも伝統舞踊のものとは異なりむしろギリシア神話メデューサのような怪物性を感じさせた。
 こういうのを見せられるとダンスはコンセプトよりもまずはそれを演じるダンサーがすべてであると思わせる。とはいえ、今回の公演は木ノ下歌舞伎という器を使い出身の京都造形芸術大学も巻き込んでこれを実現した木ノ下裕一の情熱なしには決して実現しなかったであろう。
 作品構成としてはこまばアゴラ劇場、それを受けての松本での公演と大きな違いはないはずだが、生の演奏には立体感、音場感が素晴らしくて、その中で踊るきたまりには音に包まれて踊る感覚があった。そこには録音の音源によるダンスに感じたのとはまったく違う存在感があり、これはここだけで終わらせるのではなく、東京はもちろん世界に持っていくべき作品だと思わせた。
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