下北沢通信

中西理の下北沢通信

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別冊「根本宗子」 第8号【超、Maria】(新作)@KAAT

別冊「根本宗子」 第8号【超、Maria】(新作)@KAAT

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音楽:小春(チャラン・ポ・ランタン
出演:もも(チャラン・ポ・ランタン)、根本宗子
演奏:小春とカンカンバルカン楽団

公演期間:2020年1月29日(水)〜2月2日(日)

<スタッフ>
舞台装飾:東佳苗(縷縷夢兎)/美術・衣裳:山本貴愛/照明:伊藤孝(ART CORE)/音響:高橋真衣/ヘアメイク:二宮ミハル/

映像/松澤延拓/翻訳/時田曜子/演出補:石橋穂乃香/演出助手:田原愛美(虚構の劇団)/舞台監督:竹井祐樹(StageDoctor Co.Ltd.)

宣伝美術(クッキーデザイン・製作):KUNIKA/宣伝写真:Masayo/デザイン:木村高典

制作:寺本真美(ヴィレッヂ)、会沢ナオト

企画:根本宗子/提携:KAAT 神奈川芸術劇場/製作:月刊「根本宗子」・ヴィレッヂ

協力:ソニー・ミュージックアーティスツシュガー&スパイス、FMG、ワタナベエンターテインメント、果てとチーク

 根本宗子とチャラン・ポ・ランタンのももによる音楽劇。二人芝居だが音楽も小春(チャラン・ポ・ランタン)が担当、演奏も小春とカンカンバルカン楽団が半ば出演者も兼ねて生で担当している。小ぶりではあるけれど、とても楽しいショーでもあり、改めて単なる劇作家・演出家の枠を超えた根本宗子という人の多才さに感心させられた。
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 昨年後半から根本宗子に注目、その舞台を追いかけて見るようになったのだが、例えば一言でいうと同じ音楽劇となってしまうものでも、WACK所属のアイドルであるGANG PARADEに書き下ろしたジュークボックスミュージカル「プレイハウス」、清竜人を主演・音楽に招き入れた「今、出来る、精一杯。」、ストレートプレイに劇中での歌唱場面をふんだんに取り入れた「墓場、女子高生」、そして今回の舞台ではそれぞれスタイルが全く異なる。音楽の使い方ひとつにしても共同作業者となる音楽家の音楽性の違いにより、様々な形式のドラマを展開していく。そういうことができる人はなかなかいないし、もちろんアウトプットとして出来上がった作品のエンタメ作品としての質の高さを考えても注目すべき存在である。
 実は今回の【超、Maria】は「THE MODERN PLAY FOR GIRLS 女の子のための現代演劇」という表題のもとに2本立ての連続上演として企画された。もうひとつの『Whose playing that “ballerina”?』は過去に上演された舞台を英語劇に作り直しての再演となったが、今回の【超、Maria】は新作。とはいえ、この両作品には幼馴染の女友達の幼少期からの変遷を描いていくという共通点があり、さらにいえば今回の作品は二人がどちらも同じ人物(父親)の愛人の娘であるという共通点を持っていたということが分かるという設定などは完全に新規だが、片方が携帯ゲームにのめりこむくだりなどはまるのまま援用されて使われていた。こうしたやり方を自己剽窃だなどと指摘してやりだまにあげる人も出てくるかもしれないが、私はこの人が毎月上演というようなハイペースで公演ができるのは自分の表現のようなものに徹底的にこだわるのではなく、(かつて構築された)ユニットを融通無碍に組み合わせることで、新たな作品を構築する*1というような手法(データベース指向)を持っているからではないかと思った。
 以前に根本宗子に興味を持ったのはももクロの舞台の共同制作の相手に彼女がいいのではないかと指摘している人がいたからでもあったのだが、そのことについては指摘当時に考えていた課題はほぼクリアされて、有力な相手のひとりだと考えている。とはいえ、今回の舞台を見て思ったのは今回の組み合わせ(根本宗子×チャラン・ポ・ランタン)でももクロの妹分であるたこやきレインボー(たこ虹)の舞台(あるいはコンサートの一部)を制作してくれないだろうかということなのだ。
 実はこの舞台を見るまではすっかり忘れていたのだが、たこ虹はチャラン・ポ・ランタン作詞作曲の「なれたらなぁ」という曲をライブで歌っていて、その曲がけっこう好きなのだが、今回の舞台の中にその曲とすごく雰囲気が似た歌があって、フラッシュバックのようにそういえばあの曲はそうだったと思いだしたからだ。そういうしているうちにこの舞台を彼女らがこの舞台を演じている姿が浮かんできて、ぜひ見てみたいという気持ちがふつふつと起こってきたからであった。たこ虹はプロデューサー役の番長(東野マネージャー)がミュージカル好きでこれまでもミュージカル風の演出を取り入れてきたこともあるし企画としても魅力的だと思うのだがどうだろうか。

たこやきレインボー / なれたらなぁ

*1:それは必ずしも新しいものではなく、日本演劇の伝統を考えても歌舞伎などはそうした手法を駆使していたのではないかと思う