下北沢通信

中西理の下北沢通信

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アップデイトダンスNo.68「オフィーリア」(勅使川原三郎振付)@荻窪アパラタス

アップデイトダンスNo.68「オフィーリア」(勅使川原三郎振付)@荻窪アパラタス

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オフィーリア
 佐東利穂子の演じるオフィーリアはラファエロ前派の画家ミレイ(ジョン・エヴァレット・ミレー)の有名な絵画「オフィーリア」を思い出させた。佐東はダンスアクトレスとして優れた資質を持っている。勅使川原三郎が近作において「白痴」(ドストエフスキー)、「トリスタンとイゾルデ」(ワーグナー)など役柄と筋立てのはっきりある演劇的な作品を創作することが目立っているのは佐東の魅力を引き出すためにあて書きした面が強いのではないか。
 今回の作品も2015年にアップデイトNo.27「ハムレット」として上演した作品をオフィーリア役として出演していた佐東利穂子を中心とした新作として改訂したものだが、勅使川原の演じる「ハムレット」中心であった前作とまるで印象は異なり実質的には新作と言っていい。
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ミレイ「オフィーリア」
佐東の衣装は白いレースで出来たフェミニンなもので、長い髪をたらしたミレイの「オフィーリア」に寄せたような髪形。佐東は普段は髪を編み込んでまとめていることが多いし、衣装もパンツルックであることが多いので、それだけで印象がかなり違ってみえる。
 冒頭の場面は絵のように横たわった体勢から始まり、途中は何度も水中でたよたう藻のような動きもみせる。オフィーリア狂乱の場を想起させるような激しい動きの場面もないではないが、イメージの基本的なトーンは「水」ではないか。オフィーリアの場合、人を演じるといっても「白痴」のナターシャのような意思を感じさせるものではなくて、自然か精霊のようにも見える演じ方。
 一方、勅使川原三郎の演じるハムレットは意思を感じない機械人形のような造形に見えた。このハムレットは最初から生きていないのかもしれない。
 ハムレットによくある筋立てはいっさい演じられないので、演劇のような「ハムレット」を期待して観劇に臨んだ向きはかなり困惑するかもしれないが、斬新な解釈ともいえそうだ。

本作は、2015年にアップデイトNo.27「ハムレット」として上演した作品をオフィーリアとして出演していた佐東利穂子を中心とした新作として改訂創作するものです。

全てがレースで出来た新たな衣装が届き、
現在、作品はすこしずつその全貌を明らかにしています。
勅使川原は「オフィーリアは水に沈んでいく中で、どの様な景色をみていたのだろう」と語りました。
ハムレットとして出演する勅使川原と共に、佐東利穂子のオフィーリアをどうぞお見逃しなく。


絶望の水底に沈んだオフィーリアが見る紫色の空
灰色の死者ハムレットは影を刺し死を殺す
水は天を移す 死んだ水のみが永遠の愛

[公演概要]
アップデイトダンス No.68

演出・照明 勅使川原三郎
出演 佐東利穂子 勅使川原三郎

【日時】
2月3日(月)20:00 、2月4日(火)20:00 、2月5日(水)20:00
2月6日(木)20:00 、2月7日(金)休演日 、2月8日(土)16:00
2月9日(日)16:00、2月10日(月)20:00 、2月11日(火)16:00
受付開始は30分前、客席開場は10分前

【料金】
一般 予約 3,000円 当日3,500円