下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

お布団「IMG antigone copycopycopycopy.ply」@アトリエ春風舎

お布団「IMG antigone copycopycopycopy.ply」@アトリエ春風舎

 

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作・演出:得地弘基(お布団/東京デスロック)

 

 ギリシャ悲劇「アンティゴネ」が下敷き。戦争状態にある国(劇中ではテーベとアルゴス)の中で、一人の勇敢な女性(アンティゴネ)が権力に反抗したことから拘束され、虐げられてゆく過程を描く。

 主要な登場人物は権力者であるクレオンとアンティゴネ、その妹のイスメネの3人なのだが、3人ならびに姉妹を取り調べる政府の関係者はすべて役柄を互いに交換しながら4人の女優が演じる。

 原作ではクレオンと姪の姉妹の関係は権力者である男性が力による女性たちを簒奪にしていくというジェンダー差による支配構造が露わなのだが、今回の上演では性差による差別や抑圧よりは権力者がいかにして権力に異を唱える存在を抑圧、収奪していくのかということがより強調されているのではないか。

 

お布団

2011年、得地弘基を中心に結成。現在は演出・俳優・音響の三人で活動。近作は主に古典戯曲を題材に、改作・上演を行う。戯曲本来のイメージと現代社会のイメージが混在するテキストは、時にSF的ガジェットによって拡張され、虚構と現実の境界から、私たちを取り巻く問題を演劇の現前性によって観客に問いかけていく。

 

「破壊された女」(2019) 撮影|櫻内憧海

出演

緒沢麻友(お布団)、田崎小春、津嘉山珠英(冗談だからね。)、永瀬安美

スタッフ

音響・他:櫻内憧海(お布団/青年団
制作:半澤裕彦 当日運営:山下恵実(ひとごと。/青年団

 

 

 

幻灯演奏会『夜の江ノ電』@横浜若葉町ウォーフ

幻灯演奏会『夜の江ノ電』@横浜若葉町ウォーフ

<期日>

2019年11月4日〜2019年11月4日


今回お届けするのは、写真家・田中流の幻灯写真とあなんじゅぱすの生演奏による幻灯演奏会『夜の江ノ電』02年の初演以来、イタリアツアーや室蘭のホスピス公演など国内外の様々な場所で再演を重ねるあなんじゅぱすの代表作です。戦後最大の詩人・田村隆一の同名詩集をモチーフに、鎌倉−藤沢間を走る単軌鉄道・江ノ電が軽快に走り出します。車窓に浮かびあがるのは、田村隆一谷川俊太郎萩原朔太郎入沢康夫など、日本を代表する詩人たちの言葉です。音楽と詩と写真による車窓の旅をお楽しみください。ゲストは歌人・作家の東直子。『夜の江ノ電』い登場する詩に関するトークの他、東の短歌や書き下ろしの朗読劇を俳優の龍昇と能島瑞穂が朗読いたします。ご期待ください。

演奏:あなんじゅぱす 幻灯写真:田中流 構成演出:前田司郎(五反田団) トーク&朗読劇作:東直子(歌人・作家) 朗読:龍昇(龍昇企画)、能島瑞穂(青年団)

【日時】
2019年11月4日(月・祝)
14:00/18:00(開場は各開演の30分前)

【料金】
前売り3000円/当日3500円

【ご予約・お問い合わせ】
045−315−6025(若葉町ウォーフ)

 あなんじゅぱすは元青年団の女優だったひらたよーこが率いるバンド。田村隆一谷川俊太郎ら日本を代表する詩人の詩にオリジナルの曲をつけ、ひらたが歌う。今回は「夜の江ノ電」と題して、写真家田中流の写真をプロジェクターでバンドの後ろの白い壁に映し出して、楽曲と写真の組み合わせでひとつの作品集のようになるように構成していた。

戴陳連(ダイ・チェンリエン)/Dai Chenlian (北京、中国)『紫気東来-ビッグ・ナッシング』/“东来紫气满函关(Big Nothing)”@東京芸術劇場

戴陳連(ダイ・チェンリエン)/Dai Chenlian (北京、中国)『紫気東来-ビッグ・ナッシング』/“东来紫气满函关(Big Nothing)”@東京芸術劇場

怪談と幼き日々の思い出、夢と現実が交錯する人形劇 ユーモアと狂気、ナンセンスの先に拓けるのはー

日時:11月2日 (土) 15:30 / 19:30
会場:シアターイースト演出・出演:戴陳連(ダイ・チェンリエン)
舞台美術・照明・音響プラン:戴陳連(ダイ・チェンリエン)
ドラマトゥルグ:由密(ヨウ・ミー)
プロダクションマネージャー:張淵(ジャン・ユエン)、キム・シヌ
委託・プロデュース:キム・ソンヒ
共同製作:韓国国立現代美術館(ソウル)、ミン現代美術館(上海)、SPIELARTフェスティバル(ミュンヘン
滞在製作協力:ソウルアートスペースMulla


 東京芸術祭ワールドコンペティションのグランプリ受賞作品。私は4作品観劇し、この作品も観劇したが正直言って見終わった後の感想は????。退屈で何度か寝落ちをしかけたし、なにがやりたかったのかがよく分からない。審査は分かれるだろうとは思ったが、私自身が審査員であるならばこの作品だけは選ばないであろう。これまで日本で開催された国際的なダンスフェスティバルの審査の現場を審査直後に関係者に話を聞いて回って日本と欧米での評価基準の違いに唖然としてことがあったが、今回もかなり唖然の結果。どのような審査経過をへてこうなったのか詳しい話を誰かに聞きたい。

dracom(大阪、日本)『ソコナイ図』/“Sokonaizu-Bottomless”@東京芸術劇場プレイハウス

dracom(大阪、日本)『ソコナイ図』/“Sokonaizu-Bottomless”@東京芸術劇場プレイハウス(舞台上舞台)

おかしみのある声とぼんやりした絶望の時間が 悲劇のソコから抜け落ちる

日時:11月2日 (土) 19:30、11月3日 (日祝) 13:00
会場:プレイハウス
作・演出:筒井潤
出演:稲葉俊、大江雅子、神藤恭平、高山玲子、電電虫子、松㟢佑一
舞台監督:浜村修司
照明:吉本有輝子 (真昼)
照明操作:吉田一弥 (真昼)
音響:佐藤武
制作補佐:阪田愛子 ( (同) 尾崎商店)
字幕翻訳:新井知行

東京芸術祭ワールドコンペティション。観劇した作品は4本。全てを見たわけではないが、見たなかではdracom「ソコナイ図」が突出。「ソコナイ図」はまさに日本現代演劇(ポストゼロ年代演劇)の手法を洗練させた作品、身体的な表出も物語の魅力もない。ミニマリズムの形式美。とはいえ、視点を半分死者に置き、それを召還することで全体を俯瞰する構造は日本を代表する古典劇でもある能楽に通底する部分があるかもしれない。
大阪で実際にあった2児餓死事件が作品のモデルである。事件は母親の育児放棄が問われるものとなっていたが、ここでは被害者となる姉妹の年齢を上げて、両親の死と貧困の理由を保有土地の売買に伴う投資詐欺に巻き込まれて財産を失ったためという風に変更。不在の両親よりも異常に気がつきながら気づかぬふりをした市役所の職員らの無作為の罪が問われるものとなっている。

ゲーテ座サロンコンサートVol.351「アタシノアシタ」(得居幸振付)@山手ゲーテ座

ゲーテ座サロンコンサートVol.351「アタシノアシタ」(得居幸振付)@山手ゲーテ

松山に本拠地を置くダンサー、振付家の得居幸とコマ撮りアニメーション作家、山内知江子、ボイスパフォーマー、音楽家の中ムラサトコの3人によるコラボレーション作品。子供向け作品のような枠組みで紹介されているのだが、各分野のレベルはいずれも高く国際的のアート(ダンス)フェスで上演したとしてもけっしておかしくない水準の作品。
 特にソロでダンスを踊りつづける得居が中心メンバーのひとりであるyummy danceは松山に本拠地を置きながら、首都圏で開催されていたダンスコンペの常連でもあった。今回の作品で見てみて改めてコンテンポラリーダンスのダンサーとしての並みならぬ資質を感じただけでなく、人懐こいキャラクターの魅力でこの日見に来ていた幼い子供たちの心も鷲掴みにして、退屈して飽きたりしてしまうことがなかったことにも感心させられた。
 資金の関係もあり、自ら運転する自動車で東京まで出掛けてきていることもあり、首都圏での再演は困難、これが最後になりそうとのことなのだが、どこか彼女らを招聘してくれるところが現れないだろうか?


アタシノアシタ Hanbun.Sato.co: ダイジェスト

Hanbun.co(ハンブンコ)
世界各国で活躍してきた振付家・ダンサーの得居幸(トクイミユキ)(yummy dance)と、チェコアニメ作家・美術作家の山内知江子(ヤマウチチエコ)により松山を拠点に2010年に結成されたパフォーマンスユニット。童謡をモチーフにした作品やオリジナル作品を続々と発表。映像/美術/ダンス/音楽による多角的な演出で観客に迫る公演は各地で好評を博している。
子どもにはもちろん、子どもだった大人への新たな世界の投げかけになるよう、より身近に舞台に触れることができる様々な仕掛けのある作品を制作し、作品を観て終わりではなく、その作品が観客の身近に存在することで、その時の感覚や想いが生き続ける舞台を目指す。2015年度より、子どもゆめ基金助成活動アートワークショップ「Let’sアクション!みんなで作ろうコマ撮りアニメ」メイン講師。道後オンセナート2018に地元アーティストとして招聘。
http://hanbuncochan.blog55.fc2.com


中ムラサトコ
ボイスパフォーマー、太鼓・足踏みオルガン奏者、役者。
岐阜県飛騨高山で育つ。強烈なボイスパフォーマンスと、オルガン弾き語り、太鼓の叩き歌いで、独自の音楽を展開。
ノルウェー公演をはじめ、フランスのサラヴァレーベルのコンピレーションアルバムなどに参加。2008年ベルリン国際映画祭新人賞作品「パークアンドラブホテル」に出演。TVKテレビ40周年企画のクレイアニメ「ドロンコロン」(代表作品「ニャッキ」の伊藤監督作品)での声と歌の出演、ドキュメンタリー映画への楽曲提供など映像に関わる作品も多い。
乳幼児の為のお芝居「ぐるぐる」を15年間上演(2014年厚生省児童福祉文化財作品)。アートワークショップ「オトのサンポ」講師。
現在、4人の子持ち。2012年春より愛媛県松山市に移住。「でたらめで誠実で楽しげ」が人生のテーマ。

【料金】
¥3500(中学生以下¥1500)前売
¥3800(中学生以下¥1800)当日(※未就学児無料)
【ご予約・お問い合わせ】
岩崎ミュージアム TEL.045-623-2111  MAIL.museum@iwasaki.ac.jp


simokitazawa.hatenablog.com

ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2019 本広克行プロデュース(ももクロ出演) 横浜音祭りスぺシャル 劇伴の匠菅野祐悟@横浜みなとみらいホール

ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2019 本広克行プロデュース(ももクロ出演) 横浜音祭りスぺシャル 劇伴の匠菅野祐悟@横浜みなとみらいホール

指揮者田尻真高
共演者菅野祐悟(作曲・指揮・ピアノ)
石丸由佳(オルガン)
和田由貴(ヴォーカル)
公募高校生合唱団ハセガワダイスケ(ヴォーカル)
神奈川フィル合唱団(合唱)
本広克行(プロデュース)
新井鷗子(構成)
ももいろクローバーZ(司会・歌)

主な演目
菅野祐悟/映画「踊る大捜査線THE MOVIE3」より

菅野祐悟/アニメ「亜人

菅野祐悟/「幕が上がる」より

菅野祐悟/「PSYCHO‐PASS」Symphony

菅野祐悟交響曲第1番~The Border~より第3楽章

前山田健一猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
詳細
踊る大捜査線」「亜人」「雲天に笑う」などでお馴染みの映画監督本広克行は、知る人ぞ知るクラシック音楽ファン。盟友の人気作曲家、劇伴の若き匠、菅野祐悟と近年評価を高めている神奈川フィルとの演奏会をプロデュースします。本広監督ならではのスペシャルゲストも加えて、菅野祐悟の多彩な作品の魅力やオーケストラ音楽の楽しさを伝える、シンプルで最高にスリリングな演奏会!

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(2回目)@こまばアゴラ劇場

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(2回目)@こまばアゴラ劇場

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映画監督の今泉力哉と劇作家・演出家の玉田真也による合同公演である。
 前回の感想レビューで「今泉、玉田の2人がどういう分担だったのかは関係者に話を聞いてみないと分からない」と書いたのだが、実際に今泉、玉田の両者に話を聞き、確かめてみたところ全体を通してのプロット(流れ)を二人で打ち合わせたうえで、後は前半を今泉が、後半を玉田がそれぞれ脚本も演出もそれぞれが担当。どちらかが先行するというのではなく、同時進行で製作したということであった。
 前半部分は劇作家・演出家を主人公とした現代口語演劇であり、ただ、一場劇ではなく、暗転なしに次々と場面転換しながら、スピーディーに進行していく様式は映画的と言えなくもない。当初の予想の通りに今泉がこの部分は1人で作り、特に後半炸裂する玉田の仕掛けを意識してはいなかったというが、興味深いのは全体像が分かった上で通して見てみると前半の舞台があたかも後半の仕掛けを前提としてわざと隙を作って描いているようにさえ思われてくることだ。
 一方、玉田の担当する後半の特徴はメタシアター的な構造である。公演が終了したのでネタバレを解禁してどういう仕掛けなのかを明らかにすると、後半が展開すると突然、玉田自身をモデルにしたような演出家が舞台に飛び込んできて進行中の芝居を止め、それで前半舞台で進行していた芝居は明日の本番に向け稽古中の芝居の一部なんだとことが分かる。
 玉田は渋谷ユーロライブでのコント公演でも同種の趣向を使用しているので、これが始まった瞬間その後の展開は予想できるものではあったが、ここから玉田の面目躍如といえよう。一見、普通の会話劇のように展開していたそれまでの前半部分の芝居にも若干整合性や人物造形の部分で無理があったのだが、それを演出家は強引な演出的指示により何とか糊塗しようとするが、ますますおかしなことになっていくという展開がここからは続き、次第に俳優らの間にも作演出に対する不信感が膨らみ、悪化した状況はエスカレーションしていく。
 シベリア少女鉄道の土屋亮一が得意にしている手法とやや似ているようではあるが、玉田の舞台が面白いのはこうした構造をスラップスティックコメディーとしてドタバタの面白さで髣髴絶倒に見せていくだけではなく、作演出を務める男の内面の反映としても見せていくことだ。
 ラストシーンが秀逸。一見したところただの夢落ちに見えなくもなくて、初見の後は「夢落ちかよ」と思ったりもしたのだが、ベッドに横たわるひとを作家の友人から作家自身に変えて、芝居の冒頭の構図を再現したラストの場面が騙し絵として見事に機能していたのではないか。ここでこの物語全体が妻に三行半を叩きつけられ、創作的にもゆき詰まった劇作家・演出家の見たナイトメア(悪夢)であり、インナーワールドであることが分かるのだが、最後に妻との関係に踏ん切りをつけた姿に「再生」に向けた希望を見るのだ。
 

作・演出:今泉力哉、玉田真也

終電がなくなった後の時間帯を男女が過ごす話を書くつもりだ。それが誰のための何の時間になるのかはわからない。私は今この文章を終電が過ぎ去ったとある駅のホームで書いている。雨がしとしと降っている。あと5分もこうしていたらきっと駅員がやってきて「もう電車は来ませんよ」と私に声をかけるだろう。あ、やって来た。「あの、もう電気消しますんで」意外な言葉。そういうの描きたいと思ってます。帰って寝ます。(今泉力哉


今泉さんとこの企画を立ち上げる時、まず最初に2人で考えたのが団体名です。いろんな団体名が浮かんでは消えたのですが、僕は「チームおもしろ」というのはどうかと提案しました。赤塚不二夫タモリがその集まりにつけたという「おもしろグループ」という団体名があり、その名前からインスパイアされるという高度に文化的な背景から出た提案だったのですが、今泉さんは「そんな団体名はダサい。面白い人たちがチームおもしろなんてつけるわけがない。ていうか名前からしておもしろくない」という無知極まりない理由で却下してきました。そして「今泉力哉と玉田企画」という無味乾燥な団体名に落ち着いたわけで、僕としては内心怒り心頭だったのです。しかし今では思います。当時の僕は頭がどうかしていたのだと。今泉力哉と玉田企画をよろしくお願いいたします。(玉田真也)

今泉力哉

1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2014年『サッドティー』で知られ、2019年『愛がなんだ』で、より知られる。今年9月、最新作である伊坂幸太郎原作の映画『アイネクライネナハトムジーク』(9/20)が公開予定。

玉田真也

青年団演出部所属。玉田企画主宰・作・演出。自身の劇団、玉田企画のすべての作品で作・演出を担当。映画『ジャンクション29 ツチノコの夜』脚本(2018)、フジテレビ『JOKER×FACE』脚本(2018)等、映画やドラマの脚本を手がける。玉田企画の舞台原作の映画『あの日々の話』で初監督、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にて正式出品。映画『僕の好きな女の子』監督・脚本(原作:又吉直樹)2020年初頭一般公開予定

出演

青木柚、川﨑麻里子(ナカゴー)、小竹原晋、志田彩良、芹澤興人、長井短、師岡広明
スタッフ

舞台監督 杉山小夜
舞台美術 福島奈央花
照明 井坂浩(青年団
音響 池田野歩 
衣装 アレグザンドラ早野
制作 足立悠子、小西朝子、井坂浩、飯塚千夏
宣伝美術 牧寿次郎

芸術総監督:平田オリザ
技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:今泉力哉と玉田企画/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(3回目)@こまばアゴラ劇場

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(3回目)@こまばアゴラ劇場

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映画監督の今泉力哉と劇作家・演出家の玉田真也による合同公演である。
 前回の感想レビューで「今泉、玉田の2人がどういう分担だったのかは関係者に話を聞いてみないと分からない」と書いたのだが、実際に今泉、玉田の両者に話を聞き、確かめてみたところ全体を通してのプロット(流れ)を二人で打ち合わせたうえで、後は前半を今泉が、後半を玉田がそれぞれ脚本も演出もそれぞれが担当。どちらかが先行するというのではなく、同時進行で製作したということであった。
 前半部分は劇作家・演出家を主人公とした現代口語演劇であり、ただ、一場劇ではなく、暗転なしに次々と場面転換しながら、スピーディーに進行していく様式は映画的と言えなくもない。当初の予想の通りに今泉がこの部分は1人で作り、特に後半炸裂する玉田の仕掛けを意識してはいなかったというが、興味深いのは全体像が分かった上で通して見てみると前半の舞台があたかも後半の仕掛けを前提としてわざと隙を作って描いているようにさえ思われてくることだ。
 一方、玉田の担当する後半の特徴はメタシアター的な構造である。玉田はユーロライブでのコント公演でも同種の仕掛けが使用しているので、これが始まった瞬間その後の展開は予想できるものではあるが、芝居自体は笑えるし、玉田の面目躍如といえよう。
 

作・演出:今泉力哉、玉田真也

終電がなくなった後の時間帯を男女が過ごす話を書くつもりだ。それが誰のための何の時間になるのかはわからない。私は今この文章を終電が過ぎ去ったとある駅のホームで書いている。雨がしとしと降っている。あと5分もこうしていたらきっと駅員がやってきて「もう電車は来ませんよ」と私に声をかけるだろう。あ、やって来た。「あの、もう電気消しますんで」意外な言葉。そういうの描きたいと思ってます。帰って寝ます。(今泉力哉


今泉さんとこの企画を立ち上げる時、まず最初に2人で考えたのが団体名です。いろんな団体名が浮かんでは消えたのですが、僕は「チームおもしろ」というのはどうかと提案しました。赤塚不二夫タモリがその集まりにつけたという「おもしろグループ」という団体名があり、その名前からインスパイアされるという高度に文化的な背景から出た提案だったのですが、今泉さんは「そんな団体名はダサい。面白い人たちがチームおもしろなんてつけるわけがない。ていうか名前からしておもしろくない」という無知極まりない理由で却下してきました。そして「今泉力哉と玉田企画」という無味乾燥な団体名に落ち着いたわけで、僕としては内心怒り心頭だったのです。しかし今では思います。当時の僕は頭がどうかしていたのだと。今泉力哉と玉田企画をよろしくお願いいたします。(玉田真也)

今泉力哉

1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2014年『サッドティー』で知られ、2019年『愛がなんだ』で、より知られる。今年9月、最新作である伊坂幸太郎原作の映画『アイネクライネナハトムジーク』(9/20)が公開予定。

玉田真也

青年団演出部所属。玉田企画主宰・作・演出。自身の劇団、玉田企画のすべての作品で作・演出を担当。映画『ジャンクション29 ツチノコの夜』脚本(2018)、フジテレビ『JOKER×FACE』脚本(2018)等、映画やドラマの脚本を手がける。玉田企画の舞台原作の映画『あの日々の話』で初監督、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にて正式出品。映画『僕の好きな女の子』監督・脚本(原作:又吉直樹)2020年初頭一般公開予定

出演

青木柚、川﨑麻里子(ナカゴー)、小竹原晋、志田彩良、芹澤興人、長井短、師岡広明
スタッフ

舞台監督 杉山小夜
舞台美術 福島奈央花
照明 井坂浩(青年団
音響 池田野歩 
衣装 アレグザンドラ早野
制作 足立悠子、小西朝子、井坂浩、飯塚千夏
宣伝美術 牧寿次郎

芸術総監督:平田オリザ
技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:今泉力哉と玉田企画/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場

シャルル・ノムウェンデ・ティアンドルベオゴ/Charles Nomwendé Tiendrebéogo (ワガドゥグ、ブルキナファソ)『たびたび罪を犯しました』/“Mea Culpa”

シャルル・ノムウェンデ・ティアンドルベオゴ/Charles Nomwendé Tiendrebéogo (ワガドゥグブルキナファソ)『たびたび罪を犯しました』/“Mea Culpa”@東京芸術劇場

「仮面」を通じて蘇る、運命を逆転させたい亡霊たち アフリカの文化の根源と現代をつなぐフィジカル・シアター

日時:10月30日 (水) 15:30 / 19:30
会場:シアターウエスト東京芸術祭ワールドコンペティション2019

 アフリカ系と分かるパフォーマーによるひとり芝居。日本にはないタイプの作品で異文化として面白い部分はあるのだがコンペの作品と考えるとあまり積極的に評価することは難しいと思った。

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(1回目)@こまばアゴラ劇場

今泉力哉と玉田企画「街の下で」(1回目)@こまばアゴラ劇場

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映画監督の今泉力哉と劇作家・演出家の玉田真也による合同公演である。どちらも実力のある作家ゆえに面白く見ることはできたが、合同公演としての相乗効果のようなものがでているような感じがせず、そこのところがやや消化不良の感じが否めない。
 今泉、玉田の2人がどういう分担だったのかは関係者に話を聞いてみないと不明なのだが、作品は構造上、ユーロライブでのコント公演でも同種の仕掛けを使用しているため、この部分を玉田が手掛けたのはほぼ間違いないだろう。
 前半部分は劇作家・演出家を主人公とした現代口語演劇であり、ただ、一場劇ではなく、暗転なしに次々と場面転換しながら、スピーディーに進行していく様式は映画的と言えなくもない。

作・演出:今泉力哉、玉田真也

終電がなくなった後の時間帯を男女が過ごす話を書くつもりだ。それが誰のための何の時間になるのかはわからない。私は今この文章を終電が過ぎ去ったとある駅のホームで書いている。雨がしとしと降っている。あと5分もこうしていたらきっと駅員がやってきて「もう電車は来ませんよ」と私に声をかけるだろう。あ、やって来た。「あの、もう電気消しますんで」意外な言葉。そういうの描きたいと思ってます。帰って寝ます。(今泉力哉


今泉さんとこの企画を立ち上げる時、まず最初に2人で考えたのが団体名です。いろんな団体名が浮かんでは消えたのですが、僕は「チームおもしろ」というのはどうかと提案しました。赤塚不二夫タモリがその集まりにつけたという「おもしろグループ」という団体名があり、その名前からインスパイアされるという高度に文化的な背景から出た提案だったのですが、今泉さんは「そんな団体名はダサい。面白い人たちがチームおもしろなんてつけるわけがない。ていうか名前からしておもしろくない」という無知極まりない理由で却下してきました。そして「今泉力哉と玉田企画」という無味乾燥な団体名に落ち着いたわけで、僕としては内心怒り心頭だったのです。しかし今では思います。当時の僕は頭がどうかしていたのだと。今泉力哉と玉田企画をよろしくお願いいたします。(玉田真也)

今泉力哉

1981年生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2014年『サッドティー』で知られ、2019年『愛がなんだ』で、より知られる。今年9月、最新作である伊坂幸太郎原作の映画『アイネクライネナハトムジーク』(9/20)が公開予定。

玉田真也

青年団演出部所属。玉田企画主宰・作・演出。自身の劇団、玉田企画のすべての作品で作・演出を担当。映画『ジャンクション29 ツチノコの夜』脚本(2018)、フジテレビ『JOKER×FACE』脚本(2018)等、映画やドラマの脚本を手がける。玉田企画の舞台原作の映画『あの日々の話』で初監督、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にて正式出品。映画『僕の好きな女の子』監督・脚本(原作:又吉直樹)2020年初頭一般公開予定

出演

青木柚、川﨑麻里子(ナカゴー)、小竹原晋、志田彩良、芹澤興人、長井短、師岡広明
スタッフ

舞台監督 杉山小夜
舞台美術 福島奈央花
照明 井坂浩(青年団
音響 池田野歩 
衣装 アレグザンドラ早野
制作 足立悠子、小西朝子、井坂浩、飯塚千夏
宣伝美術 牧寿次郎

芸術総監督:平田オリザ
技術協力:鈴木健介(アゴラ企画)制作協力:木元太郎(アゴラ企画)
企画制作:今泉力哉と玉田企画/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場