下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

新国立劇場バレエ団『コッペリア』(3回目)無観客ライブ配信

新国立劇場バレエ団『コッペリア』(3回目)無観客ライブ配信

【振付】ローラン・プティ
【音楽】レオ・ドリーブ
【芸術アドヴァイザー/ステージング】ルイジ・ボニーノ
【美術・衣裳】エツィオ・フリジェーリオ
【照明】ジャン=ミッシェル・デジレ

【スワニルダ】小野絢子
【フランツ】渡邊峻郁
【コッペリウス】山本隆之

【指揮】冨田実里
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

後期クイーン論に向けた序章として(番外編4)  エラリー・クイーン「レーン最後の悲劇」(角川文庫)

後期クイーン論に向けた序章として(番外編4)  エラリー・クイーン「レーン最後の悲劇」(角川文庫)

ドルリー・レーンの四部作はバーナビー・ロスというまったく別名義のペンネームを使用していて、そのことの意味が明らかにされた後はそのペンネームは封印されていたように最初からこの「レーン最後の悲劇」までのグランドデザインが用意されていたことは間違いないだろう。この作品に至って前作に突然登場したサム警視(もう引退して私立探偵になっている)の娘、ペイシェンス・サム(パティ)がなぜ登場するかが初めてはっきりするわけだが、最初から四部作の構想があったとすると最初の二作「Xの悲劇」「Yの悲劇」ではなぜ彼女の存在がいっさい言及されなかったのかという疑問が生まれてくる。もちろん、プロット的にこの二作に主要登場人物としてパティが現れるのは困難であるというのは確かだが、いろんな伏線を仕込んでいたのも確かだから娘の存在をほのめかしていてもおかしくはないだろうと思えるからだ。
 はっきりした論証は難しいが、ありえるかもしない仮説を思いついた。それは最初の二作の時点で次の二作にドルリー・レーンのライバル的性格の名探偵を出すことは決めていたが、その時点ではまだ人物設定は決まっていなかったのかもしれないという可能性だ。「レーン最後の事件」を読みながら次のように考えたのである。
 サム警視とペイシェンスの関係はリチャード・クイーン警視とエラリー・クイーンの関係を彷彿とさせる。だとすれば最初はこのライバル探偵はエラリー・クイーン的な男性だったのではないか。ただ、それだとエラリーに似すぎていて、バーナビー・ロス=エラリー・クイーンという四部作のもうひとつのメイントリックがネタバレしてしまう危険が大きい。このことに気が付いてのをどこかの段階で探偵役を女性に変更したのではないか。
 昔はこういう想像が許容されたが、現在は実際の創作についての裏側がかなり明らかになっている現在ではそうした可能性は完全に否定されている*1のかもしれないが、伝記的事実を離れて作品テキストを基にした探求ではそういう仮説も成立するのかもと思ったのである。
以下ネタバレ




















 クリスティーとクイーンには相互的影響関係がかなり色濃くあったのではないかということを以前「フォックス家の殺人」と「五匹の子豚」の類縁性について指摘*2したが、名探偵の幕引きのやり方という点において「カーテン」*3(執筆は1943年)が「レーン最後の悲劇」(1933年)を意識していることは誰の目から見ても否定できないであろう。
 「レーン最後の悲劇」という作品には評価すべき点はいろいろあるし、いくつかの点においてミステリ史に残るような作品とも思うが、いくつもの明白な欠点があることも確かだ。ひとつは中心的なモチーフとなっているシェイクスピアに関係する稀覯本についての話題がジャガード版の「情熱の巡礼」についてのものであって、高名な戯曲に関するものではないため、シェイクスピアの演劇が好きでよく見る現在の私のようなものでもとっつきにくいものであることだ。この小説の前半部分はほとんどがジャガード版の一五九九年発行「情熱の巡礼」ジャガード版が盗まれて一六〇発行「情熱の巡礼」第二版ジャガード版が代わりに返送されてくるなど稀覯本に関する豆知識としては興味を引かなくもないが、正直興味が持ちにくいマニアックな内容だとことだ。こうしたトリビアルな知識に基づき物語が展開していくのでシェイクスピアに興味がある人にとってさえなかなか興味が惹かれにくいし、ましてやシェイクスピアについて関心がなければ退屈してしまうのは仕方がないところがある。
 しかしながら、真相に至るペイシェンス・サムの二つの推理「殺されたのは誰か?」「犯人は誰なのか?」の鮮やかさは特筆すべきもので、クイーン作品中でも「エジプト十字架の謎」のヨードチンキの謎にかかわるエラリー・クイーンの推理と双璧をなすぐらいのものではないかと思っている。 
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*1:現在は否定されているがダネイとリーの合作方法が明らかにされる以前には藤子不二雄のようにコンビのうちのどちらかがクイーン名義の作品を書き、もう一方がバーナビー・ロス名義の作品を書いていたのではないかという説もまことしやかに囁かれていた時期もあった。

*2:simokitazawa.hatenablog.com

*3:

cookpadLive「うまさ二重マル!たこ虹カフェ」

cookpadLive「うまさ二重マル!たこ虹カフェ」

5人だとわちゃわちゃ感が大渋滞。たこ虹はやはり面白かった。きょうが「うまさ二重マル!たこ虹カフェ」としては最終回ということだったのだが、5月中に「神虹レストラン」として復活。新プロジェクトになって「たこやき」は封印しても「レインボー」は何らかの形で残したいと言っていたのでそれを見越してのネーミングだとは思うのだが、まさか新ユニットの略称が「神虹」ということはないよな(笑)。

#9 たこ虹まんまるクッキー作り!
5/7 (金) 19:00〜20:00 配信

たこ焼き器を使ったおしゃかわ料理を生配信でご紹介! 是非ご覧下さい♪
コメントもお待ちしております!!
www.cookpad.tv

www.cookpad.tv

パワハラ問題、谷賢一氏は出来るだけ早くWSで何が起こったか説明すべきではないか?

パワハラ問題、谷賢一氏は出来るだけ早くWSで何が起こったか説明すべきではないか?

日本劇作家協会は公式ホームページに同協会の企画として行われたWS(ワークショップ)で起こったパワハラ事案についての謝罪文を掲載した。ただ、個人の事情に触れたくないためか、その謝罪文はこのパワハラに誰が関与したのかまったく触れておらず、具体的に内容にも触れていないため隔靴掻痒なものになるという不可解なことになっている。
 どうやら、そのWSの講師を務めていたのは谷賢一氏らしいのだが、谷氏はこれまで一切そのことに触れることなく沈黙している。この沈黙は谷氏に留まらず関係する劇団(DULL-COLORED POP、青年団)にも及んでおり、大部分は本人による詳細な説明を待ってのことではないかとも思うが、おそらく2つの内容にはかなり差異があるとは思うのだが、すでにネット上では今回の事案が地点の三浦基氏によるパワハラ案件と同一視されて独り歩きしつつあるという実態も起こりかけている。個人的に知る谷氏の人となりからいえば確信犯である三浦氏とは異なり、「高圧的な態度で接し、受講者の尊厳を傷つける」という劇作家協会側の説明が谷氏のイニシアティブから起こるということが三浦氏の例と異なり想像しにくい。谷氏を庇っているように思われれば本意ではないのだが、ここには何かのボタンの掛け違いのようなことが起こったとしか思えないのだ。もし、何らかの誤解があるなら即座に明らかにすべきだし、逆に行き過ぎた点があったのだとすれば実際に起きたことに即して謝罪があってしかるべきではないか。いずれにせよ、あいまいなまま放置しておくのは演劇界の評判を落とすことになりかねないし、最大の愚策だと思う。
www.jpwa.org
その後、谷賢一氏が公開したパワハラ案件についての事情
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ももクロの『家にいろTV』第5夜「SURF & DOLPHIN in 品プリ」@Youtube

ももクロの『家にいろTV』第5夜「SURF & DOLPHIN in 品プリ」@Youtube

「家にいるTV」第5夜ももクロがコラボしていた品川プリンスホテルの水族館を会場とした周回式の生配信ライブであった。昨年何回もやった配信ライブのノウハウを詰めこんで初めて可能になったものだが、ふとこれを見て気が付いたのは今やももクロは通信設備がある場所なら世界中のどこからでも生ライブ開催が可能なのではないかということだ。ももクロのノウハウを活用すれば施設側の協力が得られるなら現在休場中の東京ディズニーランドUSJを会場としても無観客ライブの開催は可能なのではないかということに気が付いたのである。これらの大型集客施設はいずれも現在休業閉鎖中だけれど、政府発表ではまったく意味不明だった「無観客開催」はできる。ということは緊急事態宣言のさなかでもももクロの大規模配信ライブは可能なのではないか。
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 水族館のクラゲや魚が入れられた水槽の配置された空間を青い照明で照らしだしその幻想的な雰囲気でライブはスタート。この日のセットリストが興味深いのは「行く春来る春」「猛烈宇宙交響曲・第七楽章『無限の愛』」「吼えろ」「天国のでたらめ」とここまで「家にいろTV」の配信で歌われたそれぞれのライブを象徴する楽曲が次々と披露されて、いわば総集編のようになっていたこと。さらに最終的にはイルカショーとのコラボもあった。実はももクロとイルカとの共演は今回が初めてというのではなく八景島シーパラダイスでも見た記憶があるのだが、その時は収録した映像によるもので実際のライブをそこでやったというわけではなかった。
 誰か演出家の手が入らないとこれほどのライブはできないはずだし、佐々木敦規の演出としては世界観が違う感じだしどうしたのだろうと思っていたのだが、「SURF & DOLPHIN in 品プリは、GOUNNツアーの岡本さんが全体を作ってくれた」とプロデューサーの川上アキラが話しており、これはどうやら過去のももクロライブの中でもアーティスティックな世界観を強く打ち出す岡本祐次だったようだ。今回の「SURF & DOLPHIN in 品プリ」がこれまでのももクロ配信ライブとはまた少し作風が違ったことの理由が氷解したような気がしてきたが、こうなると次は「東京キネマ倶楽部」に共同演出で関わった振付家・演出家avecooの演出による配信公演も見てみたいという気にさせられてきた。
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演劇とももいろクローバーZ(抜粋) - 中西理の下北沢通信

私立恵比寿中学メジャーデビュー9周年記念ライブ

私立恵比寿中学メジャーデビュー9周年記念ライブ

<1部>エビの踊り食いは新メンバー加入前最後のライブということで病気療養中でこの日はまだ復帰がかなわなかった安本彩花のプロデュースによる「6人体制」のラストライブとなった。とはいえ、この日はこの後に新メンバー披露も控えているということもありMCなどで過去に浸ることは一切なく、楽曲を次々と披露しおそらく客席で見ているであろう新メンバーにもその雄姿を見せつけたのではないか。
 ライブは「熟女になっても」「仮契約のシンデレラ」など懐かしい楽曲を時折挟みながらも、「自由へ道連れ」「ジャンプ」など最近の人気曲を踏まえたセットリスト、最後はりななん曲としてファンが記憶する「感情列車」で締めくくった。第1部のセットリストが現在のエビ中と考えればこれに新メンバーが加わってどのように化学反応が起こるのかが楽しみである。
 新メンバーはきょう発表となるものの、すでの6月に予定しているツアーでは新メンバーの参加がないことを発表しており、コロナ禍の現況でライブの予定が詰まってはいないことを逆に利用して、じっくりと育てようと考えているのではないかと思う。発表の前に思いを語るとしたら、前に「全員合格でいいのではないか」と書いたことは今も変わらないけれど、合否が分かれることを前提とするならばココナとリナは外さないでほしいと考えている。どちらも現時点ではココナは歌、リナはダンスに穴があることは確かだし、即戦力は厳しいかもしれないが、ココナのアイドルとしての華、リナの歌のポテンシャルは捨てがたく、もし現時点ではずすというのであればこの2人をエースとする新グループを作ってほしいぐらいなのである。
 それでは<2部>の「初夏のエビ増量キャンペーン」はどうだったか。こちらはメジャーデビュー9周年記念ライブということを意識して、インディーズ時代も含めてシングル曲をデビュー時から順番に全曲披露するという内容。今回の新メンバーオーディションで興味を持った新規にエビ中はこんなグループなんだよと理解してもらうのに加えて、新メンバーにも「これがエビ中だ」というのを生で見てもらい決意を新たにしてもらおうという意味合いもあったのかもしれない。
 結局、新たなメンバーとして発表されたのは桜木心菜(ココナ=15)小久保柚乃(ユノ=14)風見和香(ノノカ=13)の3人。オーディションの最終候補者としてはもう少し年長の候補者もエントリーされていたのだが、結局年齢のことも考慮されたのかなと思った。個人的にはリナは逸材だったと思うので惜しいし、何らかの形でスターダストプロモーションがキープすべきだとは思っているが、CROWN POPの例を見てみても、歌は歌割りが最初はあまりなく、ダンスだけの参加でもメンバーの一員としてやっていけなくはないが、ダンス経験がほとんどないのは現実的にはエビ中では難しいという判断だったのかなとも思う。全体的なバランスがよかったメイが落ちたのは意外だったが、ココナが入ったことにはほっとしたし、成長すればある種の層に対してメンバーのアイコンとなりそうなほど整った容姿を持っているのは武器だと思うので、今後の成長を見守って応援したい。

本公演は、有観客での開催予定でしたが、緊急事態宣言の影響で無観客配信として実施することになりました。

【日時】
2021年5月5日(水祝)
14:00~
<1部>エビの踊り食い produced by 安本彩花
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http://live.nicovideo.jp/watch/lv331575036

18:00~

<2部>初夏のエビ増量キャンペーン※新メンバー発表

http://live.nicovideo.jp/watch/lv331575120



※両部とも安本彩花は出演いたしません。

ももクロの『家にいろTV』 第4夜 PARCO Production(ももクロミュージカル)「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」@舞浜アンフィシアター

ももクロの『家にいろTV』 第4夜 PARCO Production(ももクロミュージカル)「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」@舞浜アンフィシアター

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 今回の「家にいるTV」ではももクロのライブ活動を総花的に紹介、その主軸が春、夏、冬の3つの大規模ライブであるとすればそれと同等な重要性を持つのが演劇、映画など演技に関する仕事かもしれない。実は一番最初にももクロの存在を知り興味を持ったのはライブの面白さもあるけれどもそれに加えて彼女らの所属がスターダストプロモーションというもともと俳優のマネジメントに長けた芸能事務所だということもある。これまでの多くのアイドルグループにおいてもAKB48前田敦子大島優子をはじめ、卒業した後で女優に転向した人は多かった。しかし、アイドルを続けながら女優も継続的に続けるという例はあまりなかった。それにはいろんな理由があるが最大の理由は多くの場合はアイドル運営は俳優のマネジメントには素人からだ。 そのため、女優に転身したいと考えるアイドルは卒業して俳優のマネジメントが得意な事務所に移籍することが必要だった*1
 対してももクロの所属するスターダストプロモーションは冒頭にも書いたように俳優(女優)のマネジメントが本業。ももクロのマネージャーである川上アキラは沢尻エリカの元マネージャーだった。アイドルについては門外漢であるが、俳優については現場経験は豊富だった。ももクロSMAPや嵐を目標に上げてアイドルグループとして長く続けていくと打ち出していたが、そのモデルはジャニーズ事務所だったと思う。そして、もしそうであれば活動の柱のひとつに俳優(女優)仕事が入ってくるのは自明の理であったといえよう。
 そのため、ももクロの活動には1~2年に一度ぐらいに舞台が入ってきている。コロナ禍の状況次第ではあるけれど今年も9月に玉井詩織を座長役とする明治座公演(時代劇ミュージカルと予告されている)が予定されている。今回配信するミュージカル「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」(2018年9~10月)もそうした舞台活動のひとつ。演出は本広克行。映画監督としてももクロ主演の「幕が上がる」を手掛けたがその際にはプロジェクトの一環として舞台版「幕が上がる」も上演した。この「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」も映画と同じPARCO Productionによる制作。ももクロの楽曲を使ったジューク・ボックス・ミュージカルとしたのはミュージカルが初めてであったももクロへの負担を極力減らそうという狙いもあったのではないか。*2「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」のアイデアが面白かったのは多数のパラレルワールド(並行世界)があるという世界観を採用し、そのうちのひとつに「HEAVEN」というももクロと似ているがももクロではないアイドルグループを登場させたことだ。

アイドルグループ「HEAVEN」の登場ですっかりこの作品の世界に引き込まれはするが、この舞台の本当の見せ場はこの後にあるかもしれない。
 残されたHEAVENのメンバーの新曲として「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」が披露されるが、 妃海風が出てきて「この世界はカナコの夢の中の世界でもうすぐ消滅する」と伝える。本広監督のイメージではこの辺りの作品構造のモデルは押井守監督の「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー*3であるということらしい。
 これは本広の確信犯的なもので脚本の鈴木聡に執筆の前に「うる星やつら2 」を見てほしいとの注文をつけたらしい。同作品はループ構造やゲーム的な世界観からゼロ年代の作品に大きな影響を与えているが、大本の「うる星やつら2 」をはじめ多くの作品で導入されているループ構造はここではない。ここで受け継がれているのは「生きることの全ては夢の世界のできごと」というテーマ。もちろん、これは新しいものではなく、元をたどれば「荘子」の一節「胡蝶の夢」からの影響も大きい*1。
「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」が面白いのはその世界観に深みのあるディティールはないのだけれど、その世界はいくつかの短いルールによって規定されているような仕掛けになっていることだ。
 このミュージカルは4つの世界から構成されている。一つ目はカナコたち4人がダンス部で翌日に高校ダンスの決勝を迎える世界。ところが冒頭の部分で自動車事故が起こり、次にカナコが気がつくと「天国」に来ている。
 仲間の3人(アヤカ、シオリ、レニ)を探すカナコだが、4人は死んでカナコ以外の3人はすでに生まれ変わってしまったと告げられるが、どうしてもダンスの大会で3人と踊りたいカナコは納得しない。
 逆に天使たちから時空間転送装置を奪って、生まれ変わった3人のところに会いに行く。

 当時書いた感想の抜粋だが、今回作品を見直して思ったのは「幕が上がる」でも「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」でも作品をももクロのリアルストーリーと連関させているのは単なるファンサービスではないということだ。作中人物に「あまりにもうまくいきすぎておかしい」と言わせているが、そもそもももクロのこれまで辿ってきた歴史こそが劇中のセリフのように「できすぎている」「どこかおかしい」「何かの力が働いているとしか思えない」ようなものだ。HEAVENは発足時に9人いたメンバーが次々と卒業し最後にはダンス仲間の4人が残るが、これは最大人数9人いたももクロが現在4人になっている現実のももクロを意図的に反映している。この「ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?」は2018年9月だからこの年の初めに有安杏果が突然卒業するという最大の危機を迎えたばかりだった。ファンの間にもわだかまりやもやもやが残る中で、カナコの口をかりてやめるのも続けるのも「それが正解」と言わせたことの意味は決して小さくはなかったと思う。今回見て考えたのはこのミュージカルぜひ再演してほしいということだ。この物語は最近のアイドルならびにスターダストプラネットに立て続けに起こる出来事も連想させる*4
 それゆえただ再演するというだけでなく、今度はぜひHEAVENのメンバーにスタプラの後輩のアイドルを起用して、彼女たちにも歌割りを与えてもらいたい。それならば期間限定で実際にHEAVENとして活動することもできる*5
 初演時のHEAVENのキャストを務めたメンバーはとてもよかったけれど、いろんな問題でやむを得なかったけどやはり歌割りがももクロメンバーだけだったことには違和感があった。ももクロ以外のHEAVENメンバーはちょうど5人いるわけだけれど、数も一致するからたこやきレインボーのメンバーが卒業して結成する新ユニットを起用するというのはどうだろうか*6
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公演日程2018年9月24日(月・休)~2018年10月8日(月・祝)
会場舞浜アンフィシアター
作鈴木聡
演出本広克行
出演百田夏菜子 玉井詩織 高城れに 佐々木彩夏
ももいろクローバーZ
妃海風 シルビア・グラブ

井田彩花 伊藤彩夏 大澤えりな 草野未歩 KUJINKO 小石川茉莉愛 佐藤マリン 滝澤梨吏華
二橋南 MIO 八尋由貴 結木春衣 吉田 藍 大澤信児  加藤貴彦 sho-ta Anna

*1:ザ・キャンディースは渡辺プロダクションの所属だったので、そういう発想があれば女優のマネジメントも可能だったはずだが、そういう風にはならずメンバーのうち2人は解散後、女優として活躍した。私の最初のイメージはキャンディーズが解散せずにグループとして存続しながらグループとしての活動も続けるという感じだった。

*2:今年の明治座の公演は宗本康兵が音楽にクレジットされており、初のオリジナルミュージカルになるのでゃないかと思う。

*3:
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*4:この歌割りだとももクロ以外歌割りのソロ部分がないので、歌割りをもらえない不人気メンバーから順番に卒業していったみたいになって可哀想すぎるのだ。

*5:より外部への訴求力を強めるために舞台ではなく、ミュージカル映画でもいいかもしれない。

*6:浪江女子発組合も考えたけれど5人なので、アメフラっシの4人、B.O.L.Tの2人の中から誰か1人だけが外れることになる。それはそれで禍根を残しそう。ちなみにHEAVENメンバーは群舞にも入るので相当以上のスキルが必要である。

新国立劇場バレエ団『コッペリア』(2回目)無観客ライブ配信

新国立劇場バレエ団『コッペリア』(2回目)無観客ライブ配信

新国立劇場バレエのローラン・プティ版「コッペリア」をYoutubeの無料配信で見た。この日の配役はスワニルダに木村優里、フランツに福岡雄大、コッペリウスに初めて私も見たことのある山本隆之。スワニルダの木村優里は可憐なタイプで米沢唯とは随分感じが違う。演技的にどちらが正解というようなことは一概には言えないものの、表情が細かくくるくる変わるところなどが無言で登場人物を演じなければならないバレエダンサーとしてはメリハリがはっきりしていて好感が持てた。
ローラン・プティは私にとってW・フォーサイスピナ・バウシュと並んで特別なダンス作家だ。というのは現代のダンスに興味を持ち始めた時に参考書代わりにしたのが*1で、そこで一章を割いて紹介していたこともあり、かなり初期の段階で作品と触れ合っていたからだ。
ローラン・プティの振付にはポワント技法を柔軟に使って表情を付けるような表現が本当は必要で、ローラン・プティバレエ団のダンサーら何人かがそういうやり方をしていたのを目撃したことがあるが、日本人ダンサーではそれに近いようなポワント使いが出来ていたのは上野水香ぐらいであろうか。この日のスワニルダ役の木村優里は第二部の動きなどにいかにも人形を思わせるような正確な技術を使いこなせるような技術があり「これは凄い」と思わせる部分が何カ所もあったが、ポワントの使い方のニュアンスはプティダンサーのそれとは微妙に違う気がした。ただ、初日の米沢唯との比較で言うと米沢唯は普通のクラシックダンサーのテクニックには長けていたが、プティ作品としてのニュアンスにおいてはこの二人だけの比較なら木村優里に軍配を上げたくなった*2

【振付】ローラン・プティ
【音楽】レオ・ドリーブ
【芸術アドヴァイザー/ステージング】ルイジ・ボニーノ
【美術・衣裳】エツィオ・フリジェーリオ
【照明】ジャン=ミッシェル・デジレ

【スワニルダ】木村優
【フランツ】福岡雄大
【コッペリウス】山本隆之

【指揮】冨田実里
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

コッペリア』無観客ライブ配信スケジュール
5月2日(日)14:00ライブ配信https://youtu.be/TUULJgGkq5I
5月5日(水・祝)14:00ライブ配信https://youtu.be/NINBF3WM0lM
5月8日(土)14:00ライブ配信https://youtu.be/Ga0XAxKqoP4
キャスト
5月2日(日)14:00開演回
スワニルダ:米沢唯
フランツ:井澤駿
コッぺリウス:中島駿野

5月4日(火・祝)14:00開演回
スワニルダ:木村優
フランツ:福岡雄大
コッぺリウス:山本隆之

5月5日(水・祝)14:00開演回
スワニルダ:池田理沙子
フランツ:奥村康祐
コッぺリウス:中島駿野

5月8日(土)14:00開演回
スワニルダ:小野絢子
フランツ:渡邊峻郁
コッぺリウス:山本隆之
新国立劇場バレエ団
芸術監督:吉田都
会場:新国立劇場・オペラパレス
制作:新国立劇場 

www.nntt.jac.go.jp

spice.eplus.jp

*1:西麻布ダンス教室 / 桜井 圭介/いとう せいこう/押切 伸一【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

*2:ただ、団菊じじい的記憶補正が入っている可能性は大いにあるけれど、プティ作品のニュアンスの表現という意味においては上野水香までは至っていない印象だ。

ももクロの『家にいろTV』 第3夜「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」2日目@埼玉県・メットライフドーム

ももクロの『家にいろTV』 第3夜「MomocloMania2019 –ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式」2日目@埼玉県・メットライフドーム

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今年のももクロの『家にいろTV』は5夜連続でももクロのライブ映像をYoutubeで無料配信(アーカイブはなし)しているがこれが3日目。よく考えられているなと思うのはこの5日間の配信でほぼももクロ活動の全貌を初めてももクロを見た人にも知らせることができるようになっていることだ。ももクロのライブ活動には毎年恒例のスケジュールになっているものが3つある。それが「春の一大事」(春一)と「ももいろクリスマス」そして今回配信する夏の大規模野外ライブだ。このところの2回は東京五輪の開催を意識して「MomocloMania(ももクロマニア)」と題してももクロとスポーツの融合を主題に展開してきたが、それ以前は「夏のバカ騒ぎ」「桃神祭」などのコンセプトで行われたこともある。とはいえ、首尾一貫しているのは夏の巨大スタジアムで開催するももクロの夏祭りというモチーフで、音楽性・エンタメ性をとことん追求した「ももクリ」、地域との交流による社会貢献までを視野に入れた「春一」とは異なり、とにかく理屈抜きに楽しい祝祭感が特徴だ。
実際にこのライブが参加してどうだったのかについては当時書いたレビュー*1を参照してもらいたいが、当時まだポジティブに考えていた東京五輪がその後どうなって現在どのような状況に置かれているかを考えてみると複雑な気分になってしまうことも確かなのだ。

【公演詳細】
MomocloMania2019
–ROAD TO 2020- 史上最大のプレ開会式
会場:埼玉県・メットライフドーム

<DAY1>2019年8月3日(土)
<DAY2>2019年8月4日(日)
両日共通:open 14:30 / start 17:00 / (20:30終演予定)

DAY2
01. ロードショー
02. 愛を継ぐもの◎
03. ワニとシャンプー◎
04. イマジネーション
05. BLAST!★
06. ココ☆ナツ
07. The Diamond Four
08. 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-◎
09. GODSPEED
10. 背番号
11. 青春賦(ギターアレンジ)
12. Nightmare Before Catharsis
13. リバイバル
14. キミノアト(ギターアレンジ)
15. ニッポン笑顔百景
16. ももクロの令和ニッポン万歳!◎
17. あんた飛ばしすぎ!!
18. 何時だって挑戦者
19. 走れ! -ZZ ver.-
20. 私を選んで!花輪くん / 佐々木彩夏&みぎわさん feat. 花輪くん◎
21. Guns N' Diamond
<アンコール>
22. 華麗なる復讐
23. GET Z GO!!!!
24. 勝手に君に
25. 吼えろ

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ももクロの『家にいろTV』 第2夜「ももクロ春の一大事2019 in 黒部市〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜」Day2

ももクロの『家にいろTV』 第2夜「ももクロ春の一大事2019 in 黒部市〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜」Day2


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ももクロの連休中のライブ無料配信『家にいろTV』 第2夜は第1夜のももいろクリスマス(ももクリ)から内容を一転して「ももクロ春の一大事2019 in 黒部市〜笑顔のチカラ つなげるオモイ〜」であった。総合エンターテインメントとしての完成度を追求するももクリに対して「春の一大事」(春一)は地方自治体と協力しての大型野外ライブとなっている。昨年今年と福島県Jヴィレッジで開催するはずだったものがコロナ禍のために2年連続で延期となってしまったため、春のライブとしてはこの黒部市でのライブが一番直近のライブとなる。地元が官民一体としてももクロとモノノフ(ももクロファン)を迎え入れる一方で、モノノフは現地に宿泊、観光することなどで現地にお金を落とし、どちらもウィンウィンの形を作るというのがこのライブの運営モデルなわけなのだが、なかでも黒部市は同氏周辺の旅館やホテルなどの宿泊施設や鉄道などの観光関連産業に従事する人たちが全面的に協力してくれたこともあり、このライブの中でも稀有な成功例となったといえるかもしれない。


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この日は「行く春来る春」から始まっているけれど、この歌と「リンクリンク」「青春賦」はいずれも映画「幕が上がる」の作中曲であり、特に「青春賦」などは劇中で卒業の歌として歌われ春のイメージが強いこともあり、「春の一大事」の主題曲のような位置づけになりつつあるかもしれない。音楽監督の宗本康平のピアノ演奏に合わせての現地の子供たちの合唱は風物詩のように春一の定番となりつつあり、現地で見ていてもぐっとくるところがあったのだが、ここではそこにももクロが加わって一緒に歌う楽曲が重要になってくる。黒部ではそこにさだまさしの提供曲である「仏桑花」を組み込んだがこれが結婚の前に産み育ててくれた両親への感謝の念を歌ったものだけに子供たちとの合唱は涙なくしては見られないようなエモーショナルなものとなっていた。ももクリが音楽性そのものやエンタメ性の追求の要素が強いのに対してこうした見るものの感情に直接働きかけるような要素が強いのも春一の特徴だ。
 アンコール後の「Guns N' Diamond」「キミノアト」へというつなぎも最近はほとんどないもので、特に「Guns N' Diamond」はいつ演奏されたのが最後なんだろうというレア曲になってしまっているが、改めて聞けばいい曲でもっと演奏されてしかるべきであろう。

セットリスト

01. 行く春来る春
02. 行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
03. 仮想ディストピア(カット)
04. DNA狂詩曲
05. 吼えろ
06. カントリーローズ -時の旅人-
07. おどるポンポコリン(カット)
08. 笑ー笑 ~シャオイーシャオ!~
09. サラバ、愛しき悲しみたちよ(カット)
10. 仏桑花
11. ツヨクツヨク
12..リンクリンク
13. Chai Maxx(カット)
14. ももいろパンチ
15. 天国のでたらめ
16. 青春賦
<アンコール>
17. イマジネーション(カット)
18. ももクロのニッポン万歳!
19. 走れ! -ZZver.-
20. Guns N' Diamond
21. キミノアト