下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

劇団TEAM-ODAC第37回本公演 【15周年記念公演】「浦安鉄筋家族~子ども大戦争~」@こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ

劇団TEAM-ODAC第37回本公演 【15周年記念公演】「浦安鉄筋家族~子ども大戦争~」@こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ

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 アメフラっシの愛来が出演したので見に行った舞台だが、内容について聞かれると困ってしまう。「お芝居面白かったよ」「愛来かわいかったよ」などと感想をネットに書き込んでいるファンが多いなかで、そういう人たちを敵に回しかねないので本当はスルーした方がいいのかもしれないのだが、将来女優もやることを想定して、キャリアを積ませたいのであればもうそろそろこういう舞台に立たせるのはやめた方がいいのではないか。AKB48や他の現役アイドルもキャストに名を連ねているし、以前にも出演した舞台の作演出(同じ作家の別の芝居では鈴木萌花も出演していた)であるという気安さもあるかもしれないが、演劇を長年見てきた人間の目からすれば残念ながら演劇作品としてどういう言えるほどの作品とは思えなかったし、やはり乃木坂48のメンバー(卒業後も含む)が出演している舞台とは作品のクオリティーが比較にならない。
 もちろん、この「浦安鉄筋家族~子ども大戦争~」は漫画・アニメを原作とした2・5次元演劇といって良いと思うので、キャラクターの寄せ方など原作のファンが見れば評価に値する部分もあるのかもしれないが、私は参考のために漫画原作の冒頭近くを少し読んでみた程度なのでその部分の評価はできず、そういう観点から作品を評することには不適な人間だったかもしれない。
 愛来自身は女性キャストでいうと今回の作品のヒロインの次にいい役をもらっていた。演技を頑張っていることもはっきり分かったし、本人の充実感はあったと思うけれど、ただ舞台に立ってその経験値を積むという段階は脱しつつある*1。事務所としてハロプロやAKB48グループの運営がそういうものに精通していないのは仕方がない部分はあるけれど、女優事務所であるスターダストプロモーションには本来はそういう情報もあるはず。今後は演劇作品としても高く評価されるような脚本、演出家の舞台に狙いを定めるべき時期に来ているのではないかと思う。「愛来かわいかった」という感想は間違いではないのだけれど。

日程:2021年7月10日(土)~18日(日)※全10ステージ
会場:東京都 こくみん共済 coop ホール(全労済ホール)/スペース・ゼロ

原作:浜岡賢次浦安鉄筋家族」(秋田書店週刊少年チャンピオン」連載)
脚本・演出:笠原哲平(TEAM-ODAC)

出演:いとう大樹(TEAM-ODAC)、清水麻璃亜AKB48)、中西智代梨AKB48)、橋本全一、塩崎太智(M!LK)、愛来(アメフラっシ)、井尻晏菜安田愛里ラストアイドル)、江崎葵(虹色の飛行少女)聞間彩、星希成奏、後藤郁、馬越琢己、小林竜之、優(CUBERS)、小西啓太(TEAM-ODAC)、松田岳、東ななえ(TEAM-ODAC)、千代反田美香(TEAM-ODAC)、飯塚理恵(TEAM-ODAC)、直樹フェスティバル(TEAM-ODAC)、中太花梨(TEAM-ODAC)、佐々木雄治(TEAM-ODAC)、竹中美月(TEAM-ODAC)、高松雪(TEAM-ODAC)、折見麻緒(TEAM-ODAC)、三浦祐香(TEAM-ODAC)、金城和己(TEAM-ODAC)、伊崎央登宮下雄也、鏡憲二(TEAM-ODAC)、高品雄基(TEAM-ODAC)、草野博紀
※松田岳と小西啓太、優と金城和己、安田愛里と折見麻緒はWキャスト。

※塩崎太智、江崎葵、伊崎央登の崎はたつさきが正式表記。

*1:私たちには舞台のオファーがないというようなことをゆずはなが言っていたから、運営が探して決めたというよりは演劇製作側から出演打診があり出演が決まったものではないかと思う。

KAAT キッズ・プログラム 2021「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」@KAAT大スタジオ

KAAT キッズ・プログラム 2021「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」@KAAT大スタジオ

日時
2021/7/12(月)~2021/7/19(月)
会場
大スタジオ
料金
おとな3,500円/こども(4歳~高校生)1,000円
一般発売
2021/5/29(土)
お問い合わせ
チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)
チケットかながわで購入する


公演情報
【当日券情報】
開演の30分前から、5階大スタジオ当日券売場にて販売いたします。
<上演時間:約70分(休憩なし)>
※ご購入者名及び連絡先をお伺いいたします。予めご了承ください。
※3歳以下のお子様はご入場いただけません。

☆ワークショップについて☆
※各公演・開演1時間前~1階アトリウムにてお面づくり体験を開催しております。
※各公演・開演前に客席にて簡単なダンスのレッスンがございます。
お時間に余裕を持ってご来場ください。

テクテク、 新しい世界に行ってみよう。
ウキウキ、そこには何があるんだろう。
ワクワク、そこでは誰と会えるんだろう。
ドキドキ、からだが勝手に踊り出す!

さぁ、KAATでいっしょにマナツノ ボウケンにでかけよう!

コンテンポラリーダンスの新たな表現に挑戦し続ける北村明子と、
現代美術家の大小島真木がタッグを組んだワクワクするダンス作品!

見て、感じて、おとなもこどもも楽しめる
KAATの夏休みの世界へみなさまをご案内します。

―――

今年のKAATキッズ・プログラムは「夏休み」をテーマに、振付家北村明子演出による新作ダンス公演をお届けします。

振付の北村明子は2018年に、KAAT DANCE SERIES『土の脈』を上演。インドの作曲家や、カンボジアインドネシアのダンサーなど文化の異なるアーティストとの作品創作を通じ、言語以前の人間の根底にある記憶を呼び起こすような表現に成功しました。感受性の豊かなこどもたちに北村明子の言語を超えた身体表現で訴えかけます。
また、舞台美術には、自然と生き物をモチーフに身体や生命について訴えかける作品を数多く手がけてきた若手の現代美術家・大小島真木を迎え、こどもたちの様々なイメージを沸き起こさせる舞台美術を作り上げます。

北村明子が構築する身体表現と世界観に、大小島真木の若手ならではのエネルギッシュな美術視点を加え、視覚と体感によってKAATの夏休みの世界へとこどもたちを誘います。

振付・演出:北村明子
美術:大小島真木

出演:柴一平 清家悠圭 岡村樹 黒須育海 井田亜彩実 永井直也

『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村』第122夜「GIRLS’FOLKTORY NEXT」@フジテレビNEXT

『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村』第122夜「GIRLS’FOLKTORY NEXT」@フジテレビNEXT

「神回」という言葉がアイドル番組などでよく使われるが私はあまり好きではない。そんな私にもスターダストプラネットの妹グループ3組(ばってん少女隊、いぎなり東北産、CROWN POP)をゲストに迎えての「GIRLS’FOLKTORY NEXT」は「神回」だったと思う。冒頭で恒例の坂崎幸之助によりももクロ曲「DNA狂詩曲 -ZZver.-」、玉井詩織によるTHE ALFEE曲「君はパラダイス」*1が披露された後、3組が呼び込まれ「七色のスターダスト」*2を合唱した。
 スターダストプラネットの曲としては「We are star」があるので最近はフォーク村以外ではあまり歌われることがないが、オリジナル(MV)の誰のパートを誰が歌っているのかを確かめようとしてMVを見たら、いまスタプラにいる子たちがすごく幼くて、もうスタプラでは見られない子たちもひさびさに見ることができて、思わず涙腺崩壊してしまった。ばってん少女隊、いぎなり東北産、CROWN POPはいずれも設立6年目のグループで、MVは2013年なので、誰一人そこにはいないわけだが、それでも歌は歌い継がれていくということを伝えたかったのだろう。

第122夜セットリスト
M01:DNA狂詩曲 -ZZver.- (村長/ももクロ)
M02:君はパラダイス (しおりん/THE ALFEE)
M03:七色のスターダスト (ばってん少女隊&いぎなり東北産&CROWN POP/3Bjunior)
M04:FREEな波に乗って (ばってん少女隊ばってん少女隊)
M05:ツヨクツヨク (ばってん少女隊ももクロ)
M06:なりたいガール (CROWN POP/CROWN POP)
M07:あの空に向かって (CROWN POP/ももクロ)
M08:3000days (いぎなり東北産/いぎなり東北産)
M09:ニッポン笑顔百景 -ZZver.- (いぎなり東北産/ももクロ)
M10:優しい悪魔 (加藤いづみキャンディーズ)
M11:好きになって、よかった (全員アカペラ/加藤いづみ)
M12:窓ガラス (しおりん&研ナオコ研ナオコ)
M13:あばよ (しおりん&研ナオコ&選抜メンバー/研ナオコ)
M14:生命(いのち) (研ナオコ松山千春)
M15:歌はどこへ行ったの (オールキャスト/公式曲)
M16:優しい風 (オールキャスト/公式曲)

50周年ガール
研ナオコさん
30周年ガール
加藤いづみさん
6周年ガールズ
ばってん少女隊
いぎなり東北産
CROWN POP
7月生誕祭

*1:「君はパラダイス」はカリブ海風に編曲。男性アイドル曲の歌唱があう玉井によく合っていて、そのままソロ曲に貰ってしまえばいいのじゃないかと思う。百田夏菜子ソロコンの開催が発表され、しおこうじ武道館公演も現実味を帯びてきているのではないか。

*2:七色のスターダスト
www.youtube.com

『FNS歌謡祭 夏』2021のタイムテーブル【出演者・披露曲一覧】

『FNS歌謡祭 夏』2021のタイムテーブル【出演者・披露曲一覧】

www.huffingtonpost.jp

午後6時30分~

ENHYPEN「Drunk-Dazed」

King & Prince「Love so sweet」

倖田來未×ハラミちゃん「キューティーハニー」「恋のつぼみ」「愛のうた」

DISH//「僕らが強く。」


星野源「SUN」

Little Glee Monster「君といれば」

緑黄色社会「Mela!」

午後7時頃~

Official髭男dism「Cry Baby」

Kis-My-Ft2「Everybody Go」「Luv Bias -another-」

King & Prince「Namae Oshiete」

Creepy Nuts×田中樹(SixTONES)「かつて天才だった俺たちへ」




郷ひろみ×JO1「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」

郷ひろみ×長屋晴子(緑黄色社会)「言えないよ」

清水美依紗「Starting Now ~新しい私へ」

SEVENTEEN「Ready to love」

東京事変「獣の理」

橋本愛木綿のハンカチーフ

森高千里渡良瀬橋

LiSA「サプライズ」

午後8時頃~

AI×北村匠海DISH//)「Story」

EXILEChoo Choo TRAIN」「HAVANA LOVE」「HERO」

Awesome City Club「勿忘」

川崎鷹也×EXILE NAOTO「魔法の絨毯」

倖田來未×三浦大知「何度でも」

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「TONIGHT」

TWICE「Perfect World」

徳永英明×DA PUMP「if...」「夢を信じて」

乃木坂46「ごめんねFingers crossed」

橋本愛「ギブス」

ファーストサマーウイカ×Takamiy「うっせぇわ」

三浦大知「Spacewalk」

milet「inside you」「Oridinary days」

森七菜「スマイル」

ゆず「NATSUMONOGATARI」

午後9時頃~

石崎ひゅーい×尾崎裕哉「15の夜」

上白石萌音「青空」「世界中の誰よりきっと

Snow Man「HELLO HELLO」

NEWS「BURN」

BTS「Butter」

平手友梨奈「かけがえのない世界」

ファーストサマーウイカ×粗品霜降り明星)「帰り花のオリオン」

藤井隆×DA PUMP「ナンダカンダ」

星野源「不思議」

ももクロちゃんと木梨とココリコ遠藤と結婚した狩野とホリケン「最高な毎日にするために自分からグイッと動き言葉に気をつけしかけは早め全て面白がり答えは追い追いやってくる」

薬師丸ひろ子「元気を出して」

優里「ドライフラワー

午後10時頃~

Official髭男dism「Universe

東京事変「落日」

徳永英明×NEWS「壊れかけのRadio」

BEGIN×明石家さんま×Snow Man「笑顔のまんま」

V6「愛なんだ」「over」「MAGIC CARPET RIDE」

松本隆 作詞活動50周年トリビュート企画

池田エライザ×宮本笑里「Woman“Wの悲劇”より」

川崎鷹也×Awesome City Club君は天然色

Little Glee Monster「風をあつめて」

劇団チョコレートケーキ「一九一一年」@シアタートラム

劇団チョコレートケーキ「一九一一年」@シアタートラム

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劇団チョコレートケーキ「一九一一年」は1911年1月に起きた大逆事件を描いた群像劇である。10年前の2011年*1は事件から100年後ということもあり、それを意識して初演されたと思われるが、初演時は大阪在住であったために舞台を見ていないが、この年は3月11日に東日本大震災が起こり、当時発表された多くの力作が震災後の特異な空気感のもとで、当初期待していたような評判を観客に引き起こすなく不本意な形で上演されたことを記憶している*2
 大逆事件と言えば一般には無政府主義による天皇暗殺を計った幸徳秋水らが死刑になったことで知られているが、本作では事件と裁判を描きながらも幸徳秋水を舞台上には登場させなかった。無政府主義者らのリーダー格だった幸徳秋水が実際に爆裂弾による天皇暗殺計画の実行犯らの動きを実際に指導していたのかについては疑義があるとの説もあり、爆裂弾製造所持で逮捕され、大逆事件の大検挙のきっかけとなった宮下太吉らの計画に幸徳本人がどこまで関与していたのか、ましてや連座して逮捕された殆どの人たちに罪はなく、冤罪なのではないかの疑問を主人公である予審判事、田原巧(西尾友樹)が感じながら、無政府主事者検挙の象徴である幸徳の逮捕と最後には26人にまで逮捕者が膨らんでいくのに悩む姿が描かれている。
 面白いのは事件の根幹をなすと考えられる二人の人物、つまり明治天皇幸徳秋水がどちらも象徴的な形でしか舞台に登場しないことだ。代わりに頻繁に登場するのが被告で幸徳と行動を共にしていた管野須賀子(堀 奈津美)だ。従来は幸徳秋水の単なる追随者のように扱われることも多かった管野を古川健は人々の自由を守るためにはたとえ強行的な手段に訴えるとしても自らの死を賭してそれを成し遂げるべきだというはっきりした意思を持つ革命家として描き出した。
 そして、彼女が自らの命を賭して殺そうとした対象が明治帝。そういう意味では明治帝は管野とは対極的な立場にあるが、その姿を作品に現すことはなかった。ところがこの事件において明治帝は単なる時の権力者を超えた存在感を持つように描かれている。というのはその意図はこの作品のなかで明らかにされることはないが、刑執行においてその直前に死刑執行が予定されていた24人のうちの12人が明治天皇の特赦により、死刑執行を免れ、無期に減刑されるのだ。
 この事件においてもっとも不思議に感じたのはこの特赦がなぜ急きょなされたのかという謎である。それは歴史的事実においてそうであったということだけが示され、その動機、あるいは処刑された12人と刑が軽減された12人の線引きはどんなものだったのかという謎はこの舞台を最後まで見ても明かされることはない。
 古川健はこの作品の後、大正天皇を描いた「治天の君」という作品を上演し、その中には非常に重要な人物として明治天皇もはっきりと描かれるのだが、日本の演劇作品としては珍しい天皇の評伝劇を書かせるにいたったのはこの「一九一一年」での明治天皇の取り扱い方への心残りがあったからではないかと考えてしまった。

脚本/古川 健(劇団チョコレートケーキ)
演出/日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)

キャスト
_浅井伸治
_岡本 篤
_西尾友樹
__(以上、劇団チョコレートケーキ)

_青木柳葉魚(タテヨコ企画)
_菊池 豪(Peachboys)
_近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ)
_佐瀬弘幸(SASENCOMMUN)
_島田雅之(かはづ書屋/studio4093)
_林 竜三
_谷仲恵輔(JACROW)
_吉田テツタ

_堀 奈津美(DULL-COLORED POP)

「一九一一年一月、私は人を殺した。」
一月二十四日から二十五日にかけて、
十二人の男女が得体の知れない力によって処刑された。
日本近代史にどす黒い影を落とす陰謀がそこにあった。
何が十二人を縊り殺したのか?

1911年1月24日、25日。12名の社会主義者の死刑が執行された。いわゆる[大逆事件]。

2011年、「あえてこの手垢のついた[大逆事件]という素材に取り組み、新しい視点でもう一度この事件を掘り起こすような作品を上演したい。」という企画意図のもと王子小劇場にて上演。 彼等を葬り去った大日本帝国という大きな権力装置の内部の人間にスポットライトを当てた『一九一一年』はその年の佐藤佐吉賞2011で優秀脚本賞(古川健)、優秀主演女優賞(堀 奈津美)を受賞した。

劇団チョコレートケーキのターニングポイントとなった作品、10年ぶりの再演。

*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:シアタートラムで主要なモチーフがのりピー押尾学の事件というクロムモリブデン「裸の女を持つ男」を4月に見たが、内容があまりにも不謹慎だったため客席が凍り付いていたのを記憶している。もちろん、「一九一一年」はシリアスな歴史劇でありクロムと同列に論じることはできないが、この年に上演された渡辺源四郎商店「どんとゆけ」「あしたはどっちだ」(ザ・スズナリ)への反響の少なさを考えれば初演の「一九一一年」も少なからぬ影響を受けただろうことは想像できる。

CROWN POP「CROWN POP BOMB×2」@ヨコハマ ベイホール

CROWN POP「CROWN POP BOMB×2~クラポ楽曲大賞BEST10~」「CROWN POP BOMB×2~三田美吹生誕祭2021~」@ヨコハマ ベイホール

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<1部>「CROWN POP BOMB×2~クラポ楽曲大賞BEST10~」
開場12:30/開演13:00
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<2部>「CROWN POP BOMB×2~三田美吹生誕祭2021~」
開場17:00/開演17:30

この日のクラポライブは二部制で<1部>は「クラポ楽曲大賞BEST10~」と題してファンの人にどの楽曲を聴きたいかと投票してもらって、そのBEST10を10位から1位まで順番にセットリストとして歌っていくというものだった。

燐光群 <別役実メモリアル>「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」@下北沢ザ・スズナリ

燐光群別役実メモリアル>「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」@下北沢ザ・スズナリ

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坂手洋二演出の燐光群による別役実作品の連続上演である。別役実は日本を代表する劇作家で平田オリザケラリーノ・サンドロヴィッチら大きな影響を受けている劇作家は多い。だから、今回のコロナ禍さえなければ没後関連企画はもっと数多く開催されていたのではないかと思っている。
そういう中で劇作家協会の活動を通じて生前の別役実と交流があったとはいえ、その作風から言えばそれほど親近性があったとは言い難いと思われる坂手洋二が別役連続上演に取り組んだのは興味深い出来事ではあった。
4作品連続上演ではあるが、この日(7月10日土曜日)は昼公演にBプログラム、夜がAプログラムという順番だったため、作品で言うと『舞え舞えかたつむり』『この道はいつか来た道』『いかけしごむ』『眠っちゃいけない子守歌』の順となるが、結果的にはそれがけっこう見やすかったような気がする。
最初の『舞え舞えかたつむり』は今回の4本の中ではもっとも演出的アイデアに手がかかっている舞台と言っていいかもしれない。企画案には「別役実が作を手がけた二人芝居4作品を坂手洋二の演出で立ち上げる」などとも報じられており、もともと二人芝居だったはずだが、雛人形と刑事に扮した俳優がそれぞれコロス(群唱)のように割り台詞(リレー形式)でセリフを語る。現代能として複式夢幻能の様式を模したとの評もあったが、先日の岡田利規の現代能作品を見た後では、あまりピンとはこないものの、隠蔽された夫の死が妻と刑事との問答で次第に浮かび上がるという構造は能に類似しているといえなくもない。ただ、別役実の戯曲が最初から能を意識して書かれているとは思えず、やや牽強付会の感は否めないかもしれない。ただ、坂手自身にも事件を核に作品を立ち上げることが多いため、坂手にとっても出演する俳優にとっても4作品の中では一番燐光群的な空気感*1を感じ取れる作品となったかもしれない。
ただ、4作品を続けて見ると不条理劇などと一般に称せられている別役実の作品は不条理(理屈がない、ナンセンス)というよりは食い違う論理様式がコミュニケーションに齟齬をきたすというディスコミュニケーションの演劇だということが分かってくる。
そして、その齟齬は記憶(過去の出来事への認識)の改ざんから起こる。
坂手洋二演出で「この道はいつか来た道」などとあると、政権批判の政治的メッセージが含まれた作品かとついつい思ってしまうが、この作品は老齢になった男女の間のロマンスが綴られた別役実作品のなかでも屈指のラブストーリーとなっている。そして、その老齢になっても失われていない輝きを若き日に野田秀樹のヒロインを務めたこともある円城寺あやが見事に演じた。
一方、夜のAプログラムは噛み合わない対話を特徴とする別役実作品の特色がよりストレートに表された「眠っちゃいけない子守歌」「いかけしごむ」の2作品。「眠っちゃいけない子守歌」はある老人男性(さとうこうじ )のもとにコンパニオン(大西孝洋)がやってくる。認知症を患う老人と派遣されてきたその介護担当者との会話という風にも見えているが、この家にいる男の話していることは脈絡なく見えても、どこか男なりの理屈もあるようで、その噛み合わなさが面白い。
 一方、不条理劇ということで言えば「いかけしごむ」はもっともそのイメージに近い作品かもしれない。「いかけしごむ」を発明したためにブルガリア暗殺団に命を狙われていると主張する男に路地のベンチで出会った女はそれは男の妄想で、本当は妻に逃げられ残された乳児を殺害してしまった男が逃げてきたのがこの路地で男にそれを認めて警察に自首するようにと説得する。そして、いかけしごむの虚構性に対して女は「私はリアリズムだ」と名乗るという一種のメタシアター的な構造も与えられている。
 2013年4月に東京に引っ越したが、別役実作品についてはその以前の関西在住の時の方がより頻繁に観劇する機会があったような気がする。大きな理由としては大阪を拠点にした田口哲の「まちの芝居屋さん」や広田ゆうみによる京都のユニット〈小さなもうひとつの場所〉のように別役実戯曲のみを専門に上演するプロデュースユニットが複数あり、それが積極的に別役実戯曲を上演したことに加えて、別役実兵庫県立ピッコロ劇場*2の芸術監督に就任、定期的に新作を提供していたこともあるだろう。すでに記憶があいまいになってしまっているが今回上演された4作品は表題ははっきりと記憶しているので、関西の集団による上演を以前見たことがあったのではないかと思う。
 逆に東京では演劇集団664やかたつむりの会が活動を休止するのに伴い別役戯曲の上演機会は以前と比べ減っているのではないか。そういう状況のなかで燐光群別役実戯曲の連続上演企画を続けていることは意味のあることだと思う。特に最近見た上演は青年団周辺の若手作家によるものが多く、通常の会話劇のスタイルからはかけ離れた様式のものが多かった。それだけに燐光群の上演はオーソドックスのよさがあったと思うし、現代の観客に別役実という劇作家の作品を伝える意味でも今後もしばらくは続けてほしいと感じた。

2021年6月25日(金)~7月11日(日)
東京都 ザ・スズナリ

作:別役実
演出:坂手洋二
出演:間宮啓行、円城寺あや、さとうこうじ、鬼頭典子、中山マリ、鴨川てんし、川中健次郎、猪熊恒和、大西孝洋、杉山英之、荻野貴継、樋尾麻衣子、武山尚史、町田敬介、西村順子
 
A『いかけしごむ』 鬼頭典子 荻野貴継 猪熊恒和

男はイカで消しゴムを製造することを発明したという。そしてその発明に反対する秘密結社、ブルガリア暗殺団に命を狙われている。「リアリズム」を標榜する女は、その「事実」と向き合う。

 

A『眠っちゃいけない子守歌』 さとうこうじ 大西孝洋

一人暮らしの「眠れない」老人の住むアパートに、福祉の会から派遣されてきた「話し相手」。自分が誰なのか忘れているが、眠ってはいけないということだけはわかっている。はたして私たちはどのように会話をすればいいのか……。



B『この道はいつか来た道』 間宮啓行 円城寺あや

こんな所で出会ってしまいましたね、私たち。愛と結婚について、もう少し話してみませんか。だって私たちは、間違いなく憶えているんですよ、この歌を。そう、この道はいつか来た道……。
眠っちゃいけない子守歌
 

B『舞え舞えかたつむり』 鴨川てんし 石井ひとみ 川中健次郎 猪熊恒和 杉山英之 樋尾麻衣子 武山尚史 町田敬介 西村順子 他

〈犯罪症候群〉に向き合う別役実独自路線のルーツともいえる作品。ひな祭りという祝祭が、殺人という、予期せぬ色に彩られる。もはやここでは、「ふたり芝居」というものじたいが、不可能なのである。

*1:最近の燐光群作品というよりは「ブレスレス」とか少し前のスタイルを感じさせる。

*2:simokitazawa.hatenablog.com

新ロイヤル大衆舎×KAAT「王将」-三部作-@KAAT(配信)

新ロイヤル大衆舎×KAAT「王将」-三部作-@KAAT(配信)

演劇に関しては現代演劇における系譜とか小難しいことを考えてしまいがちになるが、理屈抜きに面白いお芝居というのはあり、これはそういう作品である。「福島三部作再演」、岡田利規×内橋和久による『未練の幽霊と怪物―「挫波」「敦賀」―』とKAAT神奈川芸術劇場は充実の舞台成果を披露してきたが、新ロイヤル大衆舎×KAAT「王将」-三部作-もそれに負けない舞台成果であったと思う。
私が個人的に坂田三吉という人物像が好きだということもあるが、第一部が1947年の初演。今から70年以上も前の作品ゆえ、古色蒼然と見えてもおかしくないところが、長塚圭史の構成台本+演出、主役・坂田三吉役の福田転球、ワキを固める大堀こういち、長塚圭史山内圭哉、ヒロイン役の常盤貴子江口のりこ森田涼花ら役者陣の魅力で現代の演劇ファンが楽しめるものとして見事に現代に蘇らせることに成功している。
 とはいえ、キャストの中ではやはり坂田三吉を演じきった福田転球が素晴らしい。ずっと以前から知っている俳優ではあるけれども、この役は一世一代の当たり役だと言っていいのではないかと思った。

作:北條秀司 
構成台本+演出:長塚圭史
音楽:山内圭哉

出演:福田転球 大堀こういち 長塚圭史 山内圭哉
   (以上新ロイヤル大衆舎)
   常盤貴子 江口のりこ 森田涼花 弘中麻紀
   櫻井章喜 高木稟 福本雄樹 荒谷清水 塚本幸男
   武谷公雄 森田真和 田中佑弥 忠津勇樹 原田志 

【あらすじ】
第一部
明治39年、大阪は天王寺。素人名人とまで呼ばれる将棋指しの坂田三吉は、家庭を顧みずに将棋に没頭し、借金に追われる日々を送っている。将棋大会で関根七段に惜敗してから8年、ついに関根に勝利するが、娘・玉江から「将棋に品がない」と叱責されてしまう。その言葉に思い直した三吉は、女房・小春と共に豊かになった生活を捨て、さらに将棋の道をつきつめてゆく…。

第二部
大正13年、後援者達に押し切られ、気乗りせぬまま関西名人を名乗ることになった三吉は、東京の将棋連盟から追放され、孤立を深めてゆく。そんな三吉の貧しく荒んだ生活を支えようと身を切る玉江と、その光景をじっと見つめる若き次女の君子。昭和11年初冬、東京側と和解した三吉は12年間の沈黙を破り、京都南禅寺で木村八段との天下分け目の東西対局を迎える…。

第三部
時代は戦争へと突き進む中、三吉の弟子・松島が事故で亡くなった上、同じく弟子の森川も戦争へ。5年後帰還した森川は、最高峰に君臨する木村名人と対局し辛勝するが、三吉は自分ではなく森川が勝ったことが気に入らない。3年後、天王寺の貧乏長屋で、君子と孫の将一とともに静かに暮らしている三吉の下に、いよいよ名人位決定戦に挑むと、逞しくなった森川が訪ねてくる。果たして三吉は嫉妬に悶えるのか…。
<上演時間:第一部 約1時間45分(休憩なし)/第二部 約1時間45分(休憩なし)/第三部 約2時間10分(休憩なし)>

笑の内閣「東京ご臨終〜インパール2020+1」 アフタートーク1 ゲスト 辻田真佐憲さん

笑の内閣「東京ご臨終〜インパール2020+1」 アフタートーク1 ゲスト 辻田真佐憲さん

日本が緊急事態宣言のもとで五輪を強行するらしいというニュースが流れた夜に笑の内閣「東京ご臨終〜インパール2020+1」ということで見てみたが、なかなか面白い内容であった。
shirasu.io

NAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』(脚本・演出:山崎彬)@六本木トリコロールシアター(配信)

NAPPOS PRODUCE『りぼん,うまれかわる』(脚本・演出:山崎彬)@六本木トリコロールシアター(配信)

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