下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

演劇

『シアターアーツ』「2022AICT会員アンケート」

『シアターアーツ』「2022AICT会員アンケート」 4月発行予定のAICT(国際演劇評論家協会)日本センター『シアターアーツ』(晩成書房)67号に掲載される「2022AICT会員アンケート」に参加。 ■優れていた作品(5本、順位あり) (1) ムニ『ことばにない 前編』…

2022年演劇ベストアクト (年間回顧) 生きていく辛さ描く作品増える コロナ禍3年目の閉塞感反映か

2022年演劇ベストアクト (年間回顧) 年末恒例の2022年演劇ベストアクト を掲載することにする。さて、皆さんの今年のベストアクトはどうでしたか。今回もコメントなどを書いてもらえると嬉しい。 コロナ感染による日常生活への影響が出始めてから3年が経過…

高校演劇サミット@こまばアゴラ劇場

高校演劇サミット@こまばアゴラ劇場 都立千早高校「フワフワに未熟」 都立駒場「明後日ドロー」

喜界島のサンゴ礁について 学際的研究の一環としての演劇上演 喜界島サンゴ礁研究所「ユラウ」@こまばアゴラ劇場

喜界島サンゴ礁研究所「ユラウ」@こまばアゴラ劇場 平田オリザはかつて石黒浩研究室(大阪大学)と一緒のロボット演劇についての共同プロジェクトを手掛けた事例があったが、「ユラウ」は鹿児島県の喜界島とそこでサンゴ礁研究により、地球規模での気候変動…

生きる辛さを描く演劇の秀作 コロナ禍での心情がチェホフとシンクロ 小田尚稔の演劇「よく生きろ!」@こまばアゴラ劇場

小田尚稔の演劇「よく生きろ!」@こまばアゴラ劇場 最近、特に今年に入ってからが顕著だが、生きていくことの辛さをモチーフにした演劇が若手演劇作家の作品で増えてきているように感じる。綾門優季作の青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための…

アングラ演劇から若手まで演劇世界をコラージュ 初観劇が解散公演に 中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場

中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場 中野坂上デーモンズ 第23回『 十三月の混沌 』@下北沢駅前劇場を観劇。作・演出の松森モへーは短編演劇作品「私は音楽になりたい」をしあわせ学級崩壊リーディング短編集#2に提供した。この作…

小野晃太朗新作公演「口火」@アトリエ春風舎

小野晃太朗新作公演「口火」@アトリエ春風舎 思弁的な対話の断片のコラージュのように感じた。部分部分には思索の糸口としては興味深いところもあるのだが、物語の構造が複雑に感じて脈絡がたどりにくいと感じてしまった。 それというのも劇中登場人物に劇…

ぱぷりか「どっか行け!クソたいぎい我が人生」(2回目)@こまばアゴラ劇場

ぱぷりか「どっか行け!クソたいぎい我が人生」(2回目)@こまばアゴラ劇場 表題の「どっか行け!クソたいぎい我が人生」というのはかなり表題らしくないおかしな表題だと思うが、ポイントは広島の方言である「たいぎい」であり、作品中で占部房子演じる母…

座談会「クィア演劇史は可能か 劇を書く、抵抗を読む(欲望)」

座談会「クィア演劇史は可能か 劇を書く、抵抗を読む(欲望)」 日本におけるクィア演劇の歴史を探る座談会という興味深い試み。これまで知らなかったことを知ることができて、有意義な企画だったとは思うが、一番驚いたのはセクシュアルマイノリティのアク…

小池博史ブリッジプロジェクト『幻の光』@シアターグリーン(BASE THEATER)

小池博史ブリッジプロジェクト『幻の光』@シアターグリーン(BASE THEATER) 箱形の舞台空間の背面、上下、側面のすべてに星空や銀河宇宙などの映像が映し出される映像演出がとても印象的な舞台であった。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を下敷きにした舞台とい…

「孤独のグルメ」の谷口ジローの漫画を フランス語圏のスイス人演出家が演出上演 日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演俳優部門『遥かな町へ』

日本の演劇人を育てるプロジェクト 新進演劇人育成公演俳優部門『遥かな町へ』 『遥かな町へ』は谷口ジローの漫画原作をスイス人演出家、ドリアン・ロセルが脚色演出した舞台作品を日本人俳優の手でいわば逆輸入の形で上演した舞台作品だ。谷口ジローは日本…

福名理穂の岸田國士戯曲賞受賞後第1作 故郷広島を舞台に母娘の葛藤描く ぱぷりか「どっか行け!クソたいぎい我が人生」@こまばアゴラ劇場

ぱぷりか「どっか行け!クソたいぎい我が人生」@こまばアゴラ劇場 ぱぷりか「どっか行け!クソたいぎい我が人生」@こまばアゴラ劇場を観劇。前作『柔らかく搖れる』(2021年)で、第66回岸田國士戯曲賞を受賞した福名理穂の受賞後第1作である。前作同様に…

解かれないままで終わる謎の連鎖 独自性はあるがもどかしさも うさぎストライプ「かがやく都市」@小竹向原アトリエ春風舎

うさぎストライプ「かがやく都市」@小竹向原アトリエ春風舎 うさぎストライプ「かがやく都市」@小竹向原アトリエ春風舎を観劇。うさぎストライプは青年団系の若手劇団の中では作品ごとの作風の振れ幅が大きい方で、だから全くの新境地というには語弊がある…

演劇人コンクールの優秀演出家賞受賞 谷崎潤一郎の怪作上演 劇団なかゆび「お國と五平」@こまばアゴラ劇場

劇団なかゆび「お國と五平」@こまばアゴラ劇場 劇団なかゆび「お國と五平」@こまばアゴラ劇場を観劇。演劇人コンクールでの優秀演出家賞受賞作品である。演劇作品としては突っ込みどころ満載なのだが、いろんな意味で面白い公演であった。京都の若手劇団の…

ムニ「ことばにない」(3回目)@こまばアゴラ劇場

ムニ「ことばにない」(3回目)@こまばアゴラ劇場 宮崎玲奈作・演出によるムニ「ことばにない 前編」をこまばアゴラ劇場で観劇した。 作・演出:宮崎玲奈 レズビアンの女性を中心とした、4人の女性の物語。 20代後半を迎える朝美、かのこ、ゆず、美緒は元…

ムニ「ことばにない」(2回目)@こまばアゴラ劇場

ムニ「ことばにない」(2回目)@こまばアゴラ劇場 宮崎玲奈作・演出によるムニ「ことばにない 前編」をこまばアゴラ劇場で観劇した(2回目の観劇)。最初に見た時には同性愛の主題がやはり目についたが2度目の観劇では演劇と「声を聴く」というモチーフ…

レズビアンの女性を中心とした、4人の女性の物語。「エンジェルズ・イン・アメリカ」連想させる長編演劇 ムニ「ことばにない」@こまばアゴラ劇場

ムニ「ことばにない」@こまばアゴラ劇場 宮崎玲奈作・演出によるムニ「ことばにない 前編」をこまばアゴラ劇場で観劇した。上演時間4時間半(休憩時間を含む)というので観劇中に集中力が持つのかどうか若干危惧しながらの観劇だったが、左側の壁側の席で…

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(3回目)@アトリエ春風舎

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(3回目)@アトリエ春風舎 青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」を観劇。舞台上の小道具兼舞台美術としていろんな種類の照明をいろんな場所において、暗闇の中に演者を浮かび上…

世界劇団「ひとよひとよに呱々の声」@こまばアゴラ劇場

世界劇団「ひとよひとよに呱々の声」@こまばアゴラ劇場 「日本最古の物語である『竹取物語』をモチーフに現代社会を抉り出す」というこまばアゴラ劇場の紹介文を読んだ時点で、この手の作品となっていることを予想すべきだったんだろうなと思ったが、古典の…

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(2回目)@アトリエ春風舎

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(2回目)@アトリエ春風舎 青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」を観劇。舞台上の小道具兼舞台美術としていろんな種類の照明をいろんな場所において、暗闇の中に演者を浮かび上…

ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」@都立芝公園 集会広場(23号地)

ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」@都立芝公園 集会広場(23号地) ヌトミック「SUPERHUMAN 2022」(10月23日上演)を都立芝公園 集会広場(23号地)で観劇。野外に設営された舞台の背後には公園の灌木越しにライトアップされた東京タワーが聳え立ち、借景とな…

しあわせ学級崩壊リーディング短編集#2(2回目・3回目)@神楽音

しあわせ学級崩壊リーディング短編集#2(2回目・3回目)@神楽音 しあわせ学級崩壊はEDMの音楽に合わせてセリフを朗誦するというユニークなスタイルの劇団で、最近は毎年年間ベストアクトに選ぶなど注目してきたのだが、12月いっぱいで活動を休止、解散す…

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(1回目)@アトリエ春風舎

青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」(1回目)@アトリエ春風舎 青年団リンク キュイ「あなたたちを凍結させるための呪詛」を観劇。中野坂上デーモンズの松森モヘーの演出・出演によるひとり芝居である。戯曲を担当しているのは綾門優季…

シベリア少女鉄道「アイ・アム・ア・ストーリー」@シアターアルファ東京

シベリア少女鉄道「アイ・アム・ア・ストーリー」@シアターアルファ東京 離れ小島の診療所に元エリート外科医であった若い医者がやってきて、彼を中心に診療所に出入りするいろいろな人たちの人間模様が描かれる、となると近く映画も公開になる「Dr.コトー診…

ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場

ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場 ばぶれるりぐる「いびしない愛」@こまばアゴラ劇場を観劇。地域語(方言)を使った会話劇と言えば古くは松田正隆の長崎弁や弘前劇場(長谷川孝治)の津軽弁、最近では小松台東の宮崎弁などが想起されるが、こ…

盲目の曲亭馬琴とその口述筆記を務めた女性描く 演劇集団 円『ソハ、福ノ倚ルトコロ』@吉祥寺シアター

演劇集団 円『ソハ、福ノ倚ルトコロ』@吉祥寺シアター 「南総里見八犬伝」の作者である曲亭馬琴とその息子の嫁で馬琴が両目の視力を失った後に「八犬伝」の口述筆記を行いその完成に尽力した路(みち)の評伝劇である。 公式サイトにあるあらすじによると以…

恋と革命の青春群像 大正と60年代末と現代重ね合わせ 流山児★事務所「美しきものの伝説」@下北沢小劇場B1

流山児★事務所「美しきものの伝説」@下北沢小劇場B-1 こうした言い方では批評として大雑把すぎることはあえて分かったうえで評すると若さのエネルギーに満ちた素晴らしい舞台だった。「美しきものの伝説」は68年に初演された作品で大杉栄(クロポトキン)、…

江戸糸あやつり人形結城座「瞼の母」@ザムザ阿佐谷

江戸糸あやつり人形結城座「瞼の母」@ザムザ阿佐谷 渡世ものの世界を描いた長谷川伸の代表作をラサール石井の脚本(脚色)、流山児祥の演出で糸あやつり人形劇として上演した。これまで糸あやつり人形は天野天街の作演出の舞台*1を何度か見た記憶があった。…

五反田タイガー5th Anniversary 11th Stage「ペイティング・バーレスク ~天使がいた場所~」@新宿スペース・ゼロ(配信)

五反田タイガー5th Anniversary 11th Stage「ペイティング・バーレスク ~天使がいた場所~」@新宿スペース・ゼロ(配信) 2022年9月28日(水)~10月2日(日) 東京都 こくみん共済 coop ホール / スペース・ゼロ脚本・演出:笠原哲平 出演:鈴木萌花(AME…

劇団桃唄309 短編集 おはぎの会 #1『おもいびと いろいろ』@東中野/RAFT

劇団桃唄309 短編集 おはぎの会 #1『おもいびと いろいろ』@東中野/RAFT 劇団桃唄309の長谷基弘による短編演劇集が「おはぎの会」である。桃唄309はここ10年ほど短編演劇の上演に取り組んできたが、今回はそのうち謡曲など古典の世界が題材の、過去作と新…