下北沢通信

中西理の下北沢通信

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5月のお薦め芝居(2006年)



5月のお薦め芝居


5月のお薦め芝居

by中西理



 




 締め切りに遅れないために今月はやや前倒しで。ロリータ男爵など先月の記事と重なってしまったところがあるが、そこは加筆もしているので許してほしい。ポツドールチェルフィッチュシベリア少女鉄道五反田団弘前劇場をはじめとした感想を大阪日記の方で執筆したので興味のある人は覗いてみてほしい。




 4月のイチオシは田辺茂範による新作が楽しみなロリータ男爵「エプロンの証」★★★★である。

 劇団サイトにある粗筋を紹介すると「かつてあったメイドブーム。それはスタイルだけのものであり、いつしかメイドとはその本来の意味を失った。また、飛躍的な機械技術の発展から全ての産業は人の手からロボットへと移り変わり、ニートと言う言葉までも「働かずともよい階級」=人間そのものを指す言葉となった。これはブームと現象が過ぎ去ってから後の世界、最後の一人となった真のメイドと働く喜びを忘れてしまったニート様たちの物語」。
 ロボットが登場する近未来の物語で、メイドカフェ自体が主題ではないようだが、「ロリータ男爵という劇団名のせいで勘違いする人がいて困るんです」と以前、田辺がぼやいていたのようにこの劇団は劇団名からすると大変な「オタク劇団」のように見えても、いわゆる「萌え」的な要素とは一線を画していたいた部分があるのだが、ついに新作ではその一線を踏み越え禁断の世界に手をだしたのか(笑い)。
 ひょっとしたら勘違いかもしれないが、新作がこの主題になったのはひょっとしたら昨年初めて実現した大阪公演がきっかけとなったんじゃないかと考えているのだが、それは私の勝手な思い込みか。というのも、初の大阪公演の会場となった劇場があった場所が大阪・日本橋(東京の秋葉原に当たる)で、その際にメイドカフェが劇団内でブームになったとの噂が(笑い)。といっても、劇団名からすればこの主題は全然違和感がないのだけれど(笑い)。しかし、ずっと以前に田辺から劇団名から誤解してくる客があって、困るという愚痴を聞かされたような気がするが、なんとなく自ら墓穴を掘っているような。本当はこういう作品こそ、その大阪の劇場に持ってきてほしいものなのだが。ただ、今ちょっと考えていたのだが、あそこの劇団に果たしてメイド服が似合うような女優っていたっけ(笑い)。男優は?。いかん、嫌な想像をしてしまった。そうだ、斉藤麻耶(間違ってもマリじゃなくて)がいるじゃないか。公演紹介ページの表紙でもメード服着てるし、と期待していくとみごとに背負い投げ食らわせられるんだろうな、きっと。




 京都のアトリエ劇研では劇研演劇祭が開催され松田正隆のテキストによる演劇作品、ダンス作品が対決する。マレビトの会「パライゾノート」「船福本」 ★★★★は松田が砂連尾理+寺田みさこのダンス公演向けにテクストとして書き下ろした「パライゾノート」を今度は自らの演出で演劇作品として上演する。ダンス作品「パライゾノート」は寺田みさこのこれまでにないほど妖艶なキャラが見られたりしてなかなか面白い作品だったが、その以上にびっくりしたのは終演後、会場で購入して松田の過激な戯曲を読んだ時だ。「こんなものをどうやって上演するの」というほど難渋なテキスト。正直言って、私にはこれが演劇で上演されどうなるのかというイメージが脚本を読み終わった後もまったくわいてきませんでした(笑い)。
 はたして、演出家・松田正隆は劇作家・松田正隆が投げた魔球を見事に打ち返すことができるのか。




 一方、砂連尾理+寺田みさこ「I was born」★★★★松田正隆の二人芝居「Jericho」「石なんか投げないで」をテキストとして構成されたデュオダンスの再演なのだが……「出演・寺田みさこ、Fジャパン」。仮チラシでキャストを見て唖然。思わずピナ・バウシュの公演会場ロビーで砂連尾理の顔を合わせた時に「怪我でもしたの」と聞いてしまったよ(笑い)。
 劇団衛星の所属とはいえ、最近はマレビトの会にもレギュラー格で出演していたからまんざら松田作品とかかわりがないこともないのだけれど、寺田みさことダンスでデュオ。まさに「美女と野獣」じゃないか(笑い)。実はFジャパンは同じアトリエ劇研演劇祭で北村成美ともデュオのダンス作品を踊ったことがあり、その時の感想は「この人ずんぐりむっくりした体型に似合わず意外と身体が動くんだ」ということだったので、考えてみればありえない組み合わせとはいえないのだけど、しかしなー(笑い)。「いったいどうなるんだ」感ではこの春一番の作品だと思う。




 アトリエ劇研演劇祭ではDIDIER THERON+Guests & Monochrome Circus「水の家」★★★★にも期待したい。フランスの振付家・ダンサーでこのところ連続して静岡のフェスティバルにも参加しているDIDIER THERON(ディディエ・テロン)が京都、松山、福岡のダンサーをオーディションで集めて、日本でレジデンス製作した新作とMonochrome Circus主宰の坂本公成がこのところ手掛けている机の上などのミニマルな空間で踊る短編連作の連続上演。
 Monochrome Circusは京都に拠点を置くコンテンポラリーダンスカンパニーだが、興味深いのはメンバーが中心になって世界的に著名な振付家・ダンサーを招く国際ダンスワークショップフェスティバル「京都の暑い夏」を毎年、春先のこの時期に開催し10年以上になるなど、通常の公演以外の活動を積極的に行い海外も含めた独自の人脈を構築していること。
 今回の公演もそうしたなかから生まれてきたもので、東京ではありえない彼らのユニークな活動形態はもっと注目されてもいいと思う。




 こちらもひさしぶりのはせひろいちの新作となるジャブジャブサーキット「亡者からの手紙」★★★★は幻想的な作風で知られる異色のミステリ作家、日影丈吉の世界に挑戦するというのも注目である。これまでもミステリ的要素の強い作品で傑作を上演した集団がどのようにこの作家に挑むのか。演劇ファンのみならず、ミステリファンにも必見の公演になりそうだ。

 




 一方、サカイヒロトの率いるWI'RE「√」★★★★はいままでの劇団からサカイのソロユニットに組織を変えてのはじめての公演。

 
 公演とは書いたけれど、今回のこの公演は役者がまったく出演せずに美術・音楽・照明など身体以外の要素だけで演劇がどこまで成立しうるかを問いかけるインスタレーション公演となる、とのことで、いったいどんなものになるのか興味を引かれるところである。その意欲的な試みには期待したいところなので、アイデア倒れにだけはならないでほしい(笑い)。




 ダンスではNOISM06「sense-datum」★★★★にも注目したい。これまで中劇場以上の大空間で作品を発表してきた金森譲が今回の作品では小劇場を会場に小空間ならではの作品を発表するというから、それがどんなものになるのか、お手並みを拝見したい(ちなみに大阪ではアートシアターdBで22日−24日の3日間、現時点=5月3日で22日のチケットはすでに完売。24日も完売が近いが、23日はまだ若干の余裕ありという)。





 演劇・ダンスについて書いてほしいという媒体(雑誌、ネットマガジンなど)があればぜひ引き受けたいと思っています(特にダンスについては媒体が少ないので機会があればぜひと思っています)。特にチェルフィッチュについてはどこかにまとまった形で書いておきたいと思っているのだけれど、どこか書かせてくれるという媒体はないだろうか。
 私あてに依頼メール(BXL02200@nifty.ne.jp)お願いします。サイトに書いたレビューなどを情報宣伝につかいたいという劇団、カンパニーがあればそれも大歓迎ですから、メール下さい。パンフの文章の依頼などもスケジュールが合えば引き受けています。

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中西