下北沢通信

中西理の下北沢通信

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小沢剛『同時に答えろYESとNO』展

 小沢剛『同時に答えろYESとNO』展(六本木森美術館)に行く。
 小沢剛のこれまでの足跡をまとめて回顧した展覧会。「なすび画廊」「地蔵建立」などのコンセプトを聞き、これまでも気になっていた作家ではあったのだが、これだけまとまった作品を一望したのは初めて。面白かったし、この人の作品づくりへのアポローチ、私は好きであると改めて思った。今年見た現代美術の展示のなかではベストといっていいのじゃないかと思う。
 特に有意義だったのはこれまで野菜で作った武器のようなものを構えている女の子の写真を撮った「ベジタブル・ウェポン」の連作をそれを作っているところの映像も込みで見られて、作品のコンセプトがそれで初めて腑に落ちたこと。これは行く先々でその土地やその女性のナショナリティーなどにちなんだ料理の材料を写真で撮ることになる女性に買ってきてもらい、小沢剛がそれを武器の形に加工してそれを手に持って銃をかまえた女性を姿を写真に撮り、その後、それを調理して料理を作り、そこに居合わせた皆で食卓をかこむ、そこまでの全体が「行為としての作品」だったわけだ。ここにはもちろん反戦のメッセージが含まれているわけだけれど、この最後の「皆で食卓を囲む」というところが大事なんだと思った。これはある意味、モノクローム・サーカスの出前公演「収穫祭*1」のコンセプトと相通じるところがあって、「収穫祭」の場合はそこまでの旅費と公演の後の食事を用意してもらえればどこにでもダンスを出前しますよということなんだけれど、この場合もダンスを出前するということはもちらんではあるのだが、「食事を用意してもらえば」というのが大事なのだと思った。

*1:「収穫祭」のレビュー『 概念芸術としての「収穫祭」』 http://www.pan-kyoto.com/data/review/44-04.html