下北沢通信

中西理の下北沢通信

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五反田団「いやむしろわすれて草」(こまばアゴラ劇場)を観劇。

作・演出 前田司郎
照明:岩城保 宣伝美術:藤原未央子 イラスト:前田司郎
制作:端田新菜
出演:
兵藤公美[青年団]:高木一美
望月志津子   :高木二葉
端田新菜[青年団]:高木三樹
後藤飛鳥    :高木春菜
志賀廣太郎[青年団]:高木幸太郎
山本由佳[むっちりみえっぱり]:伊藤夕子
黒田大輔[THE SHAMPOO HAT] :伊藤大介
奥田洋平[青年団] :新山タカシ

 青果商を営んでいた高木家の4姉妹を描いた群像会話劇。最初の構想では「若草物語」が下敷きだったらしく、物語も現代版の「若草物語」といった趣き。道端シリーズの「ながく吐息」ほどのラディカルさはないけれども、実にうまく書かれた脚本で最後にせつなくて「ほろり」とさせるところなどこの人は本当にうまい、と思わせた。
 4人の姉妹をはじめ女優がいずれもいい味を出している。むっちりみえっぱりの山本由佳、フリーの後藤飛鳥ら元々好みの女優が出演しているということもあるのだが、兵藤公美、端田新菜ら青年団五反田団常連組も青年団では人数も多くて、なかなか為所の多い役柄を回ってくるチャンスがないのが、この舞台では適材適所の持ち味を発揮しており、このキャスティングの妙が五反田団の魅力のひとつであろう。
 舞台には中央にベッドがひとつ置いてあり、これは3女三樹のベッドであり、ここに最初から最後まで端田新菜演じる三樹が寝転んでいる。つまり、舞台はこのベッドを中心に1場劇的に進行していくのだが、ここにひとつの仕掛けがあって、この舞台では現代と設定されている入院している三樹の病室を基本にして、ほかの人物の出入りをきっかけにして、自由自在に4姉妹の子供時代に時は遡行して、時制が行ったりきたりしながら物語は進行していく。その手付きは若いのにもかかわらず平田の方法論を見事なまでに巧妙に使いこなしており、いつもはとぼけた持ち味に幻惑させられていたが、こんなにうまい芝居も書けるのだと感心させられた。
 ただ、逆に言えば「この若さでこんなにうまいものを書いていていいのだろうか」といういらだちのようなものはあって、そう言えば青年団平田オリザの「家宅か修羅か」という舞台を見た時にちょうど同じようなことを考えて、評価せざるをえないけれど、あまり積極的にほめたくはないというような複雑な気持ちを抱いたことを思い出した。ついでに触れておくと、この芝居で4姉妹の父親を演じた志賀廣太郎が「家宅か修羅か」でもやはり父親役を演じて好演していたのも思い出した。小劇場の劇団でありながら、こういうベテラン俳優もかかえているというのが青年団の強みだと思う。