下北沢通信

中西理の下北沢通信

現代演劇やコンテンポラリーダンス、アイドル、ミステリなど様々な文化的事象を批評するサイト。ブログの読者募集中。上記についての原稿執筆引き受けます。転載依頼も大歓迎。simokita123@gmail.comに連絡お願いします。

 「Dance Circus28」(1日目)(アートシアターdB)を観劇。

N'oncoc「a step」作:小谷麻優子 出演:高柳敬靖、小谷麻優子
Ca・Ballet「ロンド ジャンプ ア テール」振付:佐藤健大郎 出演:三林かおる、野玉智奈美(Ca・Ballet)
Orange Public「心を感じて・・」作・演出:中川育子 出演:井上摩紀、牧田佳子 出演:水谷エンコ、中川育子
Piece of Modern「圏外」作・振付・出演:前沢亜衣子
出演:高橋圭司、乾直樹、前沢亜衣子 演奏:藤森暖生(ギター)、亀崎拓史(パーカッション)
福岡まな実「いかないで兄さん」作・出演:福岡まな実

 5組が12分ずつの作品を連続上演するアートシアターdB恒例のダンスショーケース企画。この日の期待は佐藤健大郎振付のCa・Ballet「ロンド ジャンプ ア テール」、福岡まな実「いかないで兄さん」だったのだけれど、Ca・Ballet「ロンド ジャンプ ア テール」は劇中劇風に振付が出来ていく過程を見せたような構成は面白かったのだけれど、12分では難しかったかもしれないのだけれど、前半のそれぞれのパが後半の作品的なダンスとして生かされていく趣向のダンス部分をもう少したっぷりと見せてほしかったのでそこがちょっともの足りない。
 福岡まな実「いかないで兄さん」はこれまでの彼女の静謐で端正な雰囲気のダンスとは違う激しかったり、コミカルにも見える足さばきを生かした振付で新境地を見せてくれた。これまでは千日前青空ダンス倶楽部のメンバーのなかでは優等生的な印象が強かったのだが、舞踏的な動きを基本にしているとはいえ、この作品ではそれに飽き足らないような足の動きも取り入れ、これまでに見せてなかった身体言語を垣間見せてくれた。「踊りに行くぜ!!」に選ばれたことなどで、ソロダンサーとしてこれまでなかった自信のようなものが見えてきた。
 これも後半の曲がかぶるところをもう少し長く見たかったので、もう少し上演時間を長くしての再演を希望したい。
 残りの作品についてはまだまだこれからの印象は否めない。コンテンポラリーダンスの枠組みを難しく考える必要はないが、現代を切り取る芸術表現であるという根幹の部分はもう少し、深く見つめてほしい。N'oncoc「a step」は男女の関係のあり方がいかにもバレエ的で、このままじゃバレエの動きから難しいパを抜いただけに見えてしまうし、Orange Public「心を感じて・・」はコンタクトインプロビゼーションのような作業からの振付のように見えたが、選曲、ムーブメントともに創作ダンスの域をでていない印象、このダンスで現代のかかえるどんな問題に切り込み、なにを表現したいのかが見えてこない。
 Piece of Modern「圏外」はコントからはじまりダンスになっていくのか、もしそうなら新機軸と思って期待したら、コントのまま終わってしまった。作品としてはいずれもまだまだなのだが、いずれも初めて見た集団で、例えばN'oncocならダンスの基礎技術がしっかりとしているところ、Piece of Modernなら女性のパフォーマーのちょっとおちゃめなキャラなど今後、武器となりそうな長所もあるので、今後も継続して作品づくりにはげんでほしい。