下北沢通信

中西理の下北沢通信

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五反田団「さようなら僕の小さな名声」@こまばアゴラ劇場

五反田団「さようなら僕の小さな名声」(こまばアゴラ劇場)を観劇。
 作・演出の前田司郎が自ら主演、劇作家・五反田団主宰の前田司郎を演じる。その意味で確かにこれは前田自身が称しているように「私演劇」には違いないが、内容はけっして日常劇ではない。これがこの芝居の肝である。
 芝居の前段では前田の日常生活(らしきもの)が描かれる。前田司郎が演じている主人公の「僕」は作中で「前田さん」「団長」などと呼ばれている劇作家・劇団主宰者であるため、前田はこれを「私演劇」と呼んでいたが、冒頭近くの記者による取材インタビューの部分など相当にデフォルメされていることを差し置けば、前田自身が過去に経験した実体験に根ざした場面であるかもしれないというのがうかがわれます。しかし、その現実にここで前田が語る次回作の概要「蛇が、大蛇がいて、そいつが世界を飲みこんじゃうですね。それで世界中が溶けて一つになっちゃうんですけど……(中略)つまり蛇は愛の象徴なんですね」がそのままこの「さようなら僕の小さな名声」の概要となっている、つまり自己言及的な構造を持つことがこの作品の特徴なわけですが、興味深いのはここで語られる主題が自分で自分を食べる蛇つまり、一種の「ウロボロスの蛇」のイメージを介して、「僕」のマターン行き(死の象徴)とそこからの帰還(再生の象徴)(続く) 
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