下北沢通信

中西理の下北沢通信

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高嶺格演出「Melody Cup」@アイホール

演出:高嶺格
出演:Dearborn K. Mendhakac♥Pakorn Thummapruksa♥Ratchanok Ketboonruang♥Preeyachanok Ketsuwan♥Nattiporn Athakhan♥朝倉太郎♥伊藤彩里♥木村敦子児玉悟之♥トミー(chikin)♥ニイユミコ(花嵐)♥諸江翔大朗、ほか
舞台監督:尾崎聡、照明:葛西健一、音響:山崎伸吾、システム:小西小多郎、宣伝美術:木村敦子

美術作家としての高嶺格は好きであるし、評価すべき実績も上げているのは間違いないのだが、この人の舞台作品はどう評価したらいいのかということについて悩ましく思っている。それはこれまでもそうであったし、この作品を見てもそうである。しかし、これまでの高嶺の舞台作品は無理やりダンスのようなものを作ろうとしているように見えたのに対し、この「Melody Cup」はよくも悪くもこれまで以上に高嶺の美術作品との関連性を強く感じさせた作品で、舞台作品としてはこれを評価すべきかどうかということについてはいささかの留保は残るが、高嶺らしさを感じる作品であったことは確かだ。
 もし機会があったならば一度高嶺にダムタイプに参加していたことが、舞台作りにどのように関係しているのかについて聞いてみたいと思うが、この作品についてはそのテイストにおいて高嶺もパフォーマーとして参加していたダムタイプの代表作である「S/N」の匂いのようなものがここそこで感じられた。だが、決定的に異なることがあってそれはダムタイプの持つパフォーマンスのビジュアルプレゼンテーションの完成度の高さ、一部の隙もないような巧緻な造形というのはここにはいっさいないことだ。実はこの日の前日にやはりダムタイプの関係者が製作したパフォーマンス「true 本当のこと」を見ていて、そのパフォーマンスとしての作りこみの精緻さに感心させられたということがあり、どちらもダムタイプの匂いがするとはいえ、「true 本当のこと」と「Melody Cup」ではそのありようが180度も違い、正反対という気がしたのである。