下北沢通信

中西理の下北沢通信

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大阪平成中村座11月公演@大阪城西の丸庭園

十一月大歌舞伎大阪平成中村座
平成22年11月2日(火)〜26日(金)
昼の部
串田和美 演出・美術
「隅田川続俤 法界坊(ほうかいぼう)」           

           聖天町法界坊  中村 勘三郎
           道具屋甚三郎  中村 橋之助
    永楽屋手代要助実は吉田松若  中村 勘太郎
          花園息女野分姫  中村 七之助
    仲居おかん実は七郎女房早枝  中村 歌女之丞
           山崎屋勘十郎  笹野 高史
             番頭正八  片岡 亀蔵
          永楽屋権左衛門  坂東 彌十郎
           永楽屋娘お組  中村 扇雀
【あらすじ】
乞食坊主の法界坊(勘三郎)は、女と金に目がなく、以前から思いを寄せるお組(扇雀)にしつこくつきまとう。そしてそのお組と恋仲である手代の要助(実は吉田家の若殿松若:勘太郎)が探し求める鯉魚(りぎょ)の一軸が、金になると知った法界坊は、これをせしめ大金を得ようとする。一方、松若の家臣である道具屋甚三郎(橋之助)や松若の許婚である野分姫(七之助)、お組の父である永楽屋権左衛門(彌十郎)が松若のために立ち働くが、法界坊と共に悪巧みを働く山崎屋勘十郎(笹野)や番頭の正八(亀蔵)たちがこれを阻み・・・。


夜の部
「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」
団七九郎兵衛 中村 勘三郎
一寸徳兵衛 中村 橋之助
徳兵衛女房お辰(2〜12日)
玉島磯之丞(14〜26日)役人左膳 中村 勘太郎
徳兵衛女房お辰(14〜26日)玉島磯之丞(2〜12日) 中村 七之助
傾城琴浦 坂東 新悟
三婦女房おつぎ 中村 歌女之丞
三河屋義平次 笹野 高史
大鳥佐賀右衛門 片岡 亀蔵
釣舟三婦 坂東 彌十郎
団七女房お梶 中村 扇雀

 2カ月連続の大阪城西の丸庭園での大阪平成中村座公演。今月は昼夜ともに「隅田川続俤 法界坊(ほうかいぼう)」「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」と平成中村座おなじみの演目による遠し狂言である。前回の扇町公園での大阪平成中村座公演も見ているのだが、同じ演目でもこれはまるで別物。海外公演などをへてまるで違う作品に仕上がってきていてびっくりしました。
 「法界坊」はもっとも平成中村座らしい作品で、特に前半の扇雀演じるお組を巡っての法界坊と山崎屋勘十郎(笹野高史)、永楽屋権左衛門(坂東彌十郎)らの恋のさや当ても巡るコメディ的な場面などは笑いをとりためだったら歌舞伎でここまで卑怯なまでのハチャメチャやっていいの?という自由奔放さで抱腹絶倒のオカシサ。初演の時から確かに普通の歌舞伎をはみだすような串田演出はないではなかったけれど、勘三郎にせよ、笹野高史にせよ、再演を重ねていくうちにそういう部分をどんどん膨らませていって、ついにここまで来たのかと呆れるほどにパワーアップしていました。
 これが後半になると一転歌舞伎ならではの重厚さを見せてくれて、さらには立ち回りに今回は最後には期待通りに大阪城の姿も借景として見事に取り入れて、スタンディングオベーションもよくあるような無理やりのものではなく、きわめて自然に起こる満足度の高い舞台であった。